最後は特にiPhoneが牽引しているシフトだ。モバイル化によってソフトウェア、アプリ、クラウドが常にポケットの中で持ち運ばれる環境が出来上がってきた。これによってiOS 6に搭載されたPassbookに代表されるように、デジタルデバイスがデジタルやネットの中だけで情報や価値をやりとりするパラダイムから、我々の実生活であるリアルな空間と連携するパラダイムへの変化を可能にしている。いわゆるO2O(Online to Offline)と呼ばれるトレンドもこれに当たる。
筆者は最近までにStarbucksのプリペイドカードとEventribeの2つのサービスでPassbookを利用している。StarbucksカードはアプリとStarbucksのウェブサイトで残高が確認でき、Passbookにも最新の金額がつねに反映されている。レジでiPhoneを読み取ってもらうと決済が終わり、アプリを見るとポイントまで貯まっている状態だ。もしプリペイドの残高が足りなくなれば、アプリからクレジットカード決済で追加することができる。
またEventribeでは、申し込んだイベントなどのチケットの確認メールにリンクが付いており、これをクリックすればPassbookにイベントの入場券のバーコードが入る仕掛けだ。入り口で身分証を提示させられる点はあまりスマートではないかもしれないが、プリントアウトしたり、メールを検索してバーコードを探したりする手間なく、とてもシンプルと言える。
しかもEventribeのPassbookチケットには会場の情報が入っており、会場に近づくとプッシュ通知が届くので、スワイプして表示させるだけでよい。Passbookのアプリの中からイベントのチケットを探す必要すらない点も快適であった。
チケットが「ここです!」「これを使って!」と教えてくれる。これを裏返せば、デバイスを持って移動する人がどんな環境の中にいるのかを理解するための「地図」が重要であることが分かるだろう。Appleが地図を自社製に切り替えたのも、Appleの体験を生活空間へと拡げていくための施策と言える。
ただ、Googleと異なり、Appleは全てを自分たちだけでやろうとしているわけではないようだ。例えばAppleの地図では米国最大のローカル情報を持つYelpの情報を呼び出しており、Foursquareとの連携も噂されている。またStarbucksやEventribe等の分かりやすい利用シーンを提供できるアプリをフィーチャーし、ユーザーに紹介することも怠らない点も、注目すべきだろう。
さて、来年のAppleの新製品は何だろう。
例年通りであれば、本稿の冒頭に挙げた製品リストが2013年版として刷新されることになるだろう。米国ではクルマもマイナーチェンジ、フルモデルチェンジを含む年次更新が当たり前となっており、「2013 Prius」のような表記がなされているが、Appleも既にMacBook Pro(Retina, 2012 MID)という製品の識別をしており、これに習うカタチだ。製品名がカウントアップしているのは現状iPhoneだけと言える。
筆者も使っているiPad miniの進化は最も分かりやすい形で行われるだろう。筆者の唯一の不満点であるディスプレイがRetina化されることを望んでいる他、これに合わせてA6もしくはA6Xチップの搭載も期待される。モバイルデバイスで興味深いのは、現在メインプロセッサ以上にディスプレイとバッテリが製品パーツのネックになっている点だ。それを考えると、Appleのスケジュールと言うよりは部品の調達具合に着目した方がよさそうだ。
またMacBook Pro 13インチRetinaディスプレイモデルは、CPUやストレージの点で中途半端な印象を受ける。フラッシュストレージ512Gバイトの搭載とクアッドコアの搭載などに期待したいところだ。
プロセッサなどの高速化によるマイナーチェンジはパソコン時代には有効だったが、モバイルデバイスではそこまで大きな「華」と言うわけではない。AppleはiPhone 5でA6、第4世代iPadでA6Xチップをそれぞれ採用し、高速化と省電力製の両立を果たしている。これらのチップの世代が上がることは重要だが、「それ以外の何か」への期待も高まる。
そこで、クラウドやOS、アプリなどがより高度にデバイスと連携すること、新しいデザインや使い勝手、そして本稿のシフトの3点目で挙げたリアルとの連携の納得感とユニークなどの統一感が非常に重要になるだろう。これまでのAppleでは得意な点であるはずだし、組織改編の効果を短期・中期で期待していくこともできるのではないだろうか。
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