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ニュースの中のアップル、10のポイント--2012年のApple一気読みまとめ - (page 2)

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5位:体験のダウンサイジング:MacからiPadへ、iPadからiPad miniへ

 2012年の製品に関する振り返りの記事で、Appleが提供する体験はMacから9.7インチのiPadにシフトしているという指摘をしている。安い価格、高精細なディスプレイ、自宅の回線よりも速いLTE、そしてiWork、iLifeアプリの充実は、ウェブやメールといった一般的なネット活用からライトなクリエイション、そしてアプリによるより専門的な活用に至るまで、パソコン以上の体験を提供するようになったからだ。

 MacからiPadへダウンサイジングをしているが、これまでiPadが担ってきた情報端末あるいはデジタル文房具のような位置づけをiPad miniに任せるという点でも、ダウンサイジングが起きている。一方でiPhone 5はディスプレイをやや拡大させた点も興味深い。

 ただ、タブレットのサイズ縮小と、スマートフォンのサイズ拡大は決してAppleが主導しているわけではない点も見逃せない。GoogleとSamsungがそれぞれ、7インチのNexus 7と、4.8インチのGalaxy S IIIでヒットを飛ばし、先の株価の指摘のようにAppleのシェアを侵食している点に対する「後手」の対応という見方もできる。

4位:脱中国生産の動きと、中国市場の取り組み強化

 Appleの2012年のニュースの中で、大きな潮目の変化になりそうなのが米国内組み立てのiMacの存在だ。これまでAppleは製品の大部分を中国で組み立ててきた。あなたのアップル製品の裏にもおなじみのフレーズである「Designed in California, Assembled in China」と刻印されていることからもおわかりだろう。しかしChinaの代わりにUSAが刻まれることは、大きな意味がある。

 日本も反日暴動などの被害に遭っているため他人事ではないが、中国内での労働者の動きや地域の不安定はリスクの要因になる。そしてこれまでメリットであった賃金が上昇しつつあるとなると、ますます魅力的な方法ではなくなってくる。米国での生産は、完成品の輸送日数の大幅な短縮による製品供給の安定化や、米国内での雇用創出に貢献といったメリットがある一方で労働力確保が懸案だ。

 生産面で変化の兆しがある一方で、Appleは中国市場への取り組みを強化している。iOSやOS Xで、これまでFacebook、Twitter、Googleといった米国系のウェブサービスを中心に対応を進めてきたが、新たに中国向けにBaidu検索、マイクロブログSina Weibo、Youkuなどへのビデオ共有、QQ Mailへの対応を果たした。iPhone 5も、中国最大のキャリアChina Mobile抜きで3日200万台の販売を達成するなど、ポテンシャルの高い市場だ。

 生産国から消費国へのシフトが起きるかどうか、注目したい。

3位:iPhoneのゆっくりとした進化の歩みとライバルの脅威

 iPhone 5は好調だ。米国市場で初めて3カ月間のシェアで50%を越えるなど、結果が出始めている。しかしiPhone 5登場前の噂や、メディアで予測されたが実現しなかった機能はたくさんあった。その一方で、Appleが用意している予想に反したサプライズはなかった。

 創造力豊かなジャーナリストやユーザーが勝るようになった点はゆゆしき問題であるが、一方でAppleはiPhoneに限らず、どの製品においても、ユーザーやメディアが思うほど事を急いでいない、現実主義の側面も見えるようになってきている。

 例えば搭載が予測されるNFCは見送られ、代わりにNFCよりも前時代的なバーコードを活用したPassbookがiOS 6の機能として搭載された。その理由は、Appleのお膝元であるカリフォルニア州で生活していると一目瞭然だった。

 バーコードリーダーはほとんどのチェーンのお店で利用されているが、NFCリーダーなんて一切普及していないからだ。つまり今iPhoneにNFCを搭載しても、ユーザー体験にメリットを与えられない、時期尚早だ、というのが非搭載の理由だろう。

 しかしダウンサイジングの項で指摘したとおり、スマートフォンやタブレットの市場について、これまでのようにAppleが完全にコントロールしているわけではない点は、Appleも自覚しなければならない。ゆえに、施策によっては「後手」に回ったり、そういう印象を与えてしまうことになる。

2位:地図問題

日本国内でも存在しない「パチンコガンダム駅」など数多くの不具合が話題となった
日本国内でも存在しない「パチンコガンダム駅」など数多くの不具合が話題となった

 Appleの「後手」といえば、地図だろう。AppleはiOS 6を搭載するiPhone 5を発表する際、これまで利用してきたGoogle Mapsを取りやめ、独自の地図アプリの導入に踏み切った。結果的には地図の完成度が原因で、ユーザーに対して大きな不便や負担を与える結果となってしまった。2012年のApple最大の汚点だったと言える。

 Appleは新しい地図データを作成してGoogle Mapsから置き換えようと試みた。しかしふたを開けてみると、航空写真がゆがんでいたり、間違った地名が表記されていたり、最大の売りだったFlyoverの都市が少なすぎたり、近年の完璧主義であるAppleらしからぬお粗末な状況を招いてしまった。

 新しい地図アプリが嫌でiOS 5からアップグレードしないというユーザーもたくさんおり、年内に間に合ったGoogle Mapsアプリは登場して数日間で1000万ダウンロードを達成、iOS 6へのアップグレード率も30%増えるといった数字が出たほどだった。

 一方で、ナビゲーション中に画面ロックをしても、交差点近くで画面が点灯するといった、OSの機能ならではの便利な点もあるし、米国内で連携しているYelpのスポット情報の充実はGoogleとは違った活用が可能だ。人間の行動を支援する上で、位置情報とそのデータベースたる地図は重要であり、これをGoogleに任せっきりにしている状態から変えた点は、将来意味があるはずだ。

 しかし担当役員もエディー・キュー氏に変わったことだし、早くGoogleに追いつけるように取り組んで頂きたいものだ。

1位:世界中で同時進行するSamsungとの裁判


国内でもAppleがSamsungの日本法人などに1億円の損害賠償を求めていた訴訟の中間判決が東京地方裁判所で下された。結果は棄却

 2012年のAppleニュースのトピック、第1位はAppleとSamsungの知的財産に関する裁判だ。米国、日本を含む世界中の法廷で争われているこの裁判は、米国でのSamsungに対する10億ドル以上の賠償金を課す評決が大きく報じられたが、依然一進一退の攻防が続いており、一気読みの中でも毎週、関連する動きをピックアップしてきた。

 主な争点は、SamsungがAppleが保有するスマートフォンやタブレットに関するデザインや機能の知的財産権を侵害しているというものだ。一方Samsungは、AppleがSamsungが保有する通信や通話に関する特許を侵害していると反訴している。Appleの相手はSamsungだけでなく、Google/Android陣営のMotorolaとの間でも争われている。

 2007年に初めてiPhoneが登場し、2010年に初めてiPadが登場し、それ以降のスマートフォン、タブレットの標準的なスタイルや使い勝手を定義したことは、一般の消費者の感覚から見ても大きくずれていない認識かもしれない。HTCのように、Appleとクロスライセンスの契約を結び、こうした知的財産を尊重する企業もある。

 一方で、カリフォルニア州でAppleとSamsungの裁判を担当している判事ルーシー・コー氏は、AppleによるSamsung製品の販売差し止め請求を棄却する際に「一部の知的財産が侵害されているからと言って、全てを否定する理由にはならない」とコメントしている。消費者の目線からすれば、これもまた真と言えるだろう。

 冷静に見てみると、この一連の裁判で最も得をしているのは、裁判の勝ち負けにかかわらずSamsungだろう。iPhoneとAndroidではなく、iPhoneとGalaxy Sという対立の構図に持ち込むことに成功しており、消費者も「Appleの対抗馬としてのSamsung」との認識を拡げているからだ。

 また米国以外の地域では、違った動きも見られた。例えば英国では、Galaxy Tabが「iPadほどクールでない」という理由で模倣ではないとの判決が出た。しかもAppleはウェブサイトと新聞広告で、この判決を受けてSamsungの名誉回復をせよ、という少し変わった命令も出ており、謝罪文の半分を自社の宣伝に使ったAppleに「書き直し」の命令まで出ている。

 また欧州では12月21日、Samsungが請求したApple製品販売差し止めについて、製品に不可欠な必須技術特許の利用を不正に阻害しているという、独占禁止法訴訟の初期のステップにあたる異議告知書がSamsungに送られている。今後、売上金の最大10%の制裁金が課される可能性も有り、動向に注目する必要がありそうだ。

 以上、10のトピックで2012年のAppleを振り返ってきた。毎週ピックアップしてきたトピックも他にたくさんあり、取り上げられなかった注目のテーマもあった。2013年も、1週間の動きを振り返りながら、さまざまな切り口でAppleの「定点観察」を続けていければと思う。

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