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ジョブズの薫陶を受けたザッカーバーグ--ハッカー・エートスの系譜 - (page 2)

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ゲイツとの共通点(らしきもの)

 ところで、前述のSteve Jobsの伝記には、Macオリジナル開発チームの一員として知られるAndy Hertzheld(現Google。近年ではGoogle+のサークルを使ったUIを設計・実装したとちょっと話題になった)の、Steve JobsおよびBill Gatesの人物評が出てくる。

 このなかでちょっと面白いのは「互いに自分のほうが頭が切れる」と考えていて、Jobsは「Gatesにはセンス(taste and style)が欠けている」としてGatesがわずかに劣っているとみていた一方、Gatesのほうは「Jobsはプログラムが書けないから」という理由でJobsを見下していたと思われる節がある、という箇所だ(註8)。

Credit:Joi
Dカンファレンスでそろい踏みのスティーブ・ジョブズとビル・ゲイツ。この写真の撮影者は伊藤穣一氏だ(Credit:Joi/Flickr

 冒頭に記したZuckerbergの「今年の目標は、プログラミングを日課に」という話を目にして思い浮かんだのは、このGatesのJobsに対する自負のようなものであった。

 ZuckerbergとGatesの2人には多くの類似点があると感じられる。ハーバード大学にいったんは通いながら「卒業まで待ってる場合じゃない」と中途退学してしまったこと、恵まれた家庭に育ったことや、おそろしく負けず嫌いといったところまで、である。それでも、そうしたわかりやすい部分以上に、この「自分の手で何かをつくりだす」ことに対する自負があるというのは、先の記事で触れた「Hacker Way」に深く関連する重要な部分と感じられる。

 もちろんJobsにしても、Steve Wozniakと組んでAT&Tの長距離電話回線をハックする「Blue box」をつくったことはよく知られているが、それでも基本的には「周りの人間にビジョンを示す人」「リーダーとしてチームを率いていく人」といったイメージが強く、逆に「夜通し何かをつくり続けて……」という汗臭いイメージもする「モノづくり」の人という印象は薄い……。Googleを立ち上げた2人、それに若い頃のSean Parker、あるいはJack Dorsey(Twitter共同創業者、モバイル決済のSquare創業者 兼 CEO)など、最近ではすっかりオシャレとされる連中でさえも、一度は自らコードを書いた経験があることを考え合わせると、むしろJobsのような人のほうが異例といえるかもしれない。

スティーブ・ウォズニアックのザッカーバーグ評

 さて。そんなJobsの若い頃もよく知り、また自らが現在関わるFusion-ioの縁からZukerbergも知る立ち場のSteve Wozniakは、Zuckerbergについて「同じエンジニアといっても、実験好きの科学者タイプである自分に比べれば、はるかに頭の切れるビジネスマン」「自分とJobsとを掛け合わせたような人物」と評している。

Steve Wozniak Says He Would Buy Facebook Stock - Bloomberg TV

 Appleの有名なMacintoshのテレビコマーシャルが流れたのが1984年1月。その時にはまだこの世に生まれてさえいなかった人物が、いまシリコンバレーでもっとも注目を集めるトレンドセッターになっている。あるいは、1995年にNetscapeがIPOを成功させ、インターネットの存在が社会に浸透するきっかけとなったが、その際によく語られていた(あるいはもはや忘れられているかもしれない)逸話——Sun Microsystemsの立ち上げメンバーで、Berkeley UNIXの開発者として知られるBill Joyが、仲の良いJohn Doerrに向かって「そのうち、20歳の子供がソフトウェアを書き、それで世界を変えることになる」と語ったという予言——実際には、Netscapeブラウザを書いたMarc Andreessenがこの予言の正しさを証明した形となったのだが、あれから20年近い年月が経ち、本当に19歳の少年が自分でコードを書いてはじめたサービスが世界を変えつつある(註9)。

 しかも、Andreessenの薫陶を受けながら、かつてはSunのキャンパスであったところに自分たちの会社を構え、しかも「Hacker Square」「Hacker Way」といった名前の広場や道までつくっている……そう聞くと、やはり年月の経過、その間の世の中の変化の大きさに一種の「感慨深さ」さえ感じてしまう。

 それはさておき。

 2006年にZuckerbergがプログラミングを断ったのは、当時22歳の青年が大人の世界で揉まれて、「立派な起業家・経営者」にならなくてはと痛感したためだったという。2006年というのは、当時急激にユーザー数が増加していたFacebookに対し、Yahoo!やViacomといった大手企業による買収の噂が流れ、実際Yahoo!とは10億ドルで売却寸前まで交渉が進んでいたという話もあった頃だ。

 この時の苦労から、経営者としての判断や会社のガバナンスについて、Zuckerbergが多くのことを学んだというのは、今回目を通した複数の記事のなかで指摘されている。また現在、Yahoo!で続いている経営をめぐる一連の騒動——しかも前CEOの学歴詐称疑惑による退任を受けて新たなCEOに就任したのが、かつてFox InteractiveでMySpaceを買収したRoss Levinsohnという最近の報道を目にして、隔世の感と同時になにか皮肉な因縁めいたものさえ感じてしまう次第である。

 FacebookとZuckerbergに話を戻すと、ほかに「反面教師」的な意味もふくめてのGoogleという存在や、"Acqu-hire"という言葉が知られ始めた買収についても触れないといけないが、そろそろ体力が尽きてきた。そうしたほかの話は次回に改めて、とさせていただきたい。

(敬称略)

註8:ジョブズはプログラムを書けないから…

"Each one thought he was smarter than the other one, but Steve generally treated Bill as someone who was slightly inferior, especially in matters of taste and style," said Andy Hertzheld. "Bill looked down on Steve because he couldn't actually program."

"Steve Jobs" by Walter Isaacson(p. 172)


註9:19歳の少年のコードが世界を変えつつある

John Doerr;.. "Bill (Joy) looked me in the eye and said, 'John, someday you're going to back a 20-year-old kid who writes some software that will change the world,' and I said, 'Right.' We thought it would be some kind of consumer game software. Well, in fact, the kid was 23, his name was Andreessen, and the product was a Web browser." Doerr persuaded his partners to vote unanimously for the deal.

Inside the Silicon Valley Money Machine KLEINER PERKINS FUNDED AOL, AMAZON, SUN, AND NETSCAPE. HERE'S HOW TECH'S MOST POWERFUL FINANCIERS WORK, PLUS THE SECRETS THEY DON'T WANT YOU TO KNOW.

余談になるが、フーディ(フード付きパーカー)というのは、たとえば朝方まで作業を続けて、そのままソファに倒れ込むなり、デスクの下に潜り込むなりして眠るといった際に、枕いらずでたいへん便利な服装でもある。

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