Flashとしては、引き続き大きな差別要因を提供できる3つの分野に注力しています。エグゼクティブダッシュボードのような法人で使われる忠実度の高いアプリケーションや、ソーシャルなFacebookのアプリケーションなど、データ主導型のアプリケーションというのはFlashが活用できる1つの分野です。
ビデオやオーディオなどのアプリケーションが2つめで、メディアアプリケーションと呼ばれる分野です。そして3つめがゲームの分野で、カジュアルゲームやソーシャルゲーム、ハイエンドのゲームがあります。
iPadやiPhoneでFlashが動かないというのはもうはっきりしていることですが、Adobe AirだったらiPhoneでもiPadでも動きます。つまり、PCのブラウザではFlashが使えますし、モバイルデバイスではアプリケーションストアを介してデバイス向けにAirを活用できるので、この3つの分野に対してFlashを使うとどんな利用モデルであったとしてもコンテンツを作成、展開できるようになっているのです。ただし、Flashに関しては哲学を変えていかなければならないと思っています。
もともとFlashでフォーカスしてきたのは、開発者が何かを作ったら、それはFlashが稼働する環境の中ではすべてが動かせるという考え方でした。これは、ブラウザにおけるFlashでは保持されています。でも、モバイルアプリケーションのAirでは同じことはできません。今後、1~2カ月にネイティブコードがAirのアプリケーションで統合されるようになります。アクセスしなければならない特定のデバイスの機能がある場合などに、Airを使えばすべてにアクセスしていただけます。そうすると、クロスプラットフォームのコードとしてどれだけ使うのか、ネイティブコードとしてどれだけ使うのかというのは開発者のほうでコントロールすることができます。
いままでは、プログラムの実行時に必要となる実行環境やライブラリなどのランタイムをフォーカスしてきましたが、これをアプリケーションフォーカスに変えていかなければならないのです。Flashツールを使ってAirのアプリケーションを作れば、どんなアプリケーションストアにでもアップロードできるスタンドアローン型のアプリケーションにしなければいけません。そうすれば、まるでネイティブアプリケーションのような振る舞いをします。クロスプラットフォームのメリットが手にできて、従来型の制約からは解き放たれるのです。これはAdobeとして大きな哲学上の移行になります。
HTML5に関しては、6カ月前まではオブザーバーのような形で見守るという立場にいました。フォーマットと、プラットフォームができあがるのを見ていると、作成ツールのことを考えずに進化してしまったら大変だということに気がつきました。Googleを含めたパートナーといろいろ話しを進め、ツールとフォーマットを統合することの強みというのが明らかに浮上してきました。そこで、Googleと積極的にオープンソースのHTML5の活動にAdobeは加わるようになったのです。アドビのツールとつなげていく、そして新世代のHTML5のコンテンツが作成できるようにすることを考えています。
ただ単にコンテンツを作成するというだけではなくて、分断化が進むさまざまなデバイスに対してコンテンツを配信していくことにも注力しています。配信といったときに主に「動画」と「デジタルパブリッシング」を見ています。
ここでのキーポイントは、デジタルパブリッシングのコンテンツを作成したならば、まずAdobeのサーバにアップロードし、実際にiPadに配信するとなった場合はプロビジョニング自体はアドビのサーバ側で行うということです。顧客側で配信のインフラを用意する必要は一切ありません。コンテンツを消費するという観点から考えるとタブレットやスマートフォンというのはまだ出たばかりの新しいものです。コンテンツを作成したらすべての側面においてオムニチュアの技術を統合していて、コンテンツがどう利用されたかを分析できます。そして、その分析結果に応じてコンテンツを調整できるのです。つまり、コンテンツの作成から配信、最適化までが可能なわけです。
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