世界的にスマートフォンの利用が拡大し、タブレットも急速に普及しつつある。こうしたPCではない“Non PC”デバイスが広がる中、ビジネス向けのアプリケーションやコンテンツ作成の現場はどのように変化していくのだろうか。
米Adobe Systemsのクリエイティブ&メディアソリューションズビジネスユニットのシニアバイスプレジデント&ジェネラルマネージャであるDavid Wadhwani氏に、Non PC時代における同社の戦略について聞いた。内容は、現在のトレンドに対する見方やFlashとHTML5について、新サービスについての考えなど多岐にわたった。
ソフトウェアの進化やマーケットを考えたとき、主に5つの牽引要素があると思っています。1つはマルチデバイス化。ウェブブラウジングやアプリケーションの利用など、スマートフォンユーザーは現在1日あたり79分スマートフォンを利用しているといいます。そして、1カ月あたり平均で10のアプリケーションをダウンロードしているという結果が出ています。タブレットはまだ登場してから時間がそれほど経っていませんが、確実にコンピューティングの世界では主流になっていくだろうと、みんな理解していると思います。
2つめはユーザーのエクスペリエンスとインタラクティビティです。これまで以上に人びとは、よりリッチに、よりインタラクティブに、よりソーシャルな形でコンテンツとやり取りをしたいと考えるようになっています。つまりそうしたコンテンツを作って欲しいという期待値がいま高まっています。
3つめはコンテンツの配信チャネルについて。過去15年を振り返ってみると「コンテンツのウェブ化」がメインでした。そして過去3年は特にこの部分の普及が激しかったと思います。ビジネス上、コンテンツを配信するという意味でもウェブブラウザは非常に重要な役割を担っています。しかし、同時に重要なビジネスモデルとしてアプリケーションストアが台頭してきています。
4つめはブロードバンドの台頭です。もともとブロードバンドは家で活用するものでしたが、次世代のブロードバンドということで3Gや4Gなどが携帯端末で提供されるようになりました。日本では、フィーチャーフォンを中心にこうした状況は何年も続いていたと思います。しかし、スマートフォンが出て、コンピューティングパワーも上がってきたことによって、このトレンドは世界的なものとなりました。
5つめは、これまでの4つのトレンドを踏まえて、コンテンツのパブリッシャーはいままでとは違うような新しい収益化モデルを探すようになっているということです。特に、ゲーム業界ではっきり現れてきていると思います。Zyngaやグリーなど、それぞれの企業がゲームを無料もしくは低価格で提供して、ゲームの中での少額課金により収益を発生させようとしています。ほかの業界も、同じことをできないかと検討しているようです。その中には電子書籍や出版なども入っています。
まずは、私たちが強い位置づけにあるコンテンツ作成ツールがあります。PhotoshopやPremiere、Illustrator、InDesignなど、デザイナーたちが自身のコンテンツを表現する際に核となる作成ツールとして使っていただけるアプリケーションがあります。そうしたデザイナーから最近よく耳にするのが、デスクトップツールは引き続きコンテンツ作成の核の部分では使っていきますが、同時にタブレットなどをうまく作成のプロセスやワークフローの中に組み込んでいきたいということです。そうすることで、オフィスの中でもコーヒーショップでも、コンテンツを修正したり、人に見せたりできるというわけです。
ここで重要になるのが、デバイスにコンテンツをのせる際、ユーザーにますます使ってもらいたいということを考えて、コンテンツをより魅力的でソーシャルに、そしてエンゲージメント性の高い形で提供したいというニーズが高まっていることです。これは、FlashやHTML5の技術が活用される分野となります。私たちはHTML5に対する投資を大きく増やしました。オープンソースのコミュニティにも積極的に貢献しています。多くの開発者が使っているオープンソースフレームワークのjQueryに対しても積極化しています。さらに、W3Cに関しては組み版などにおいて貢献し、オープンソースのHTMLレンダリングエンジン群のWebKitのプロジェクトにもコードの貢献をしています。
そして、新しい製品であるAdobe Edgeを最近発表しました。Adobe Edgeを使うと、ウェブデザイナーらがリッチでインタラクティブなHTML5のコンテンツを作成できます。
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