もちろん、戦略の立案は厄介な作業だ。Appleは管理を好む。それが最も顕著に表れているのがApp Storeである。iPhone、「iPod touch」、iPadのユーザーが、同社が許可したアプリケーションをダウンロード/購入できるのはApp Storeだけだ。
App Storeは、Appleの小売店や、App Storeのもととなった「iTunes」と同様に、商取引のあり方についての同社のグランドビジョンを示している。そこには、仮想の陳列棚とともに、Appleが監督するセクションがある。しかしその心髄であり、まだ開拓時代の西部地方といった雰囲気があるのは、トップチャートセクションだ。ここには、その時ごとに、注目の無料アプリケーションと有料アプリケーションがそれぞれ300本並んでいる。このリストのどれかに一度載れば、良いアプリケーションはどんどん順位を上げていくことができる。大勢の新規ユーザーがトップチャートを見ているからだ。こういった効果のために、トップチャートリストは、上位を狙う企業にとっての大きなビジネスターゲットにもなっている。
4月下旬、いくつかのサードパーティーのトラッキングサービスが、Appleがランキングアルゴリズムを変更したため一部のアプリケーションの順位に影響が出たことに気づいた。Appleは変更が行われたことについて説明していない(認めてすらいない)が、特定のアプリケーションの順位変動からみて、カテゴリの重み付けが変更されたようだ。特定のカテゴリの上位にあるアプリケーションは、ほかのカテゴリの上位のアプリケーションと比べて、総合ランキングで高い順位を与えられている。
開発者とパブリッシャー向けの分析およびアドエクスチェンジネットワークMobclixの共同創設者Krishna Subramanian氏は、ランキングとモバイル広告市場の動向を注視しており、今回の変更を、Googleによる検索アルゴリズムの再調整と対比させた。
「アプリケーションランキングの最適化がいくらか行われるだろう。ランキングの新しい算出基準としては、セッション回数、1日のアクティブユーザー数、ユーザーがどこから訪問したか、ダウンロード数、インストールされているデバイスの種類などが考えられる」。Subramanian氏は先ごろの米CNETとの電話インタビューでこのように述べた。
この変更の背後にある論拠には、Tapjoyが関係していると言われている。Tapjoyは、Appleが同社のプログラムを使ったアプリケーションを却下していると主張したことで、ここ数週間論議の中心となっている広告ネットワークだ。TapjoyとFlurryは独立した2つの企業だが、開発者を対象に、無料アプリケーションのインストールに特典を付けることで、有利なスタートを切ることができるサービスを提供している。開発者やパブリッシャーは、料金を支払って、このシステムでアプリケーションを宣伝できる。
特にTapjoyは、開発者がゲームの中に組み込んでゲーム内のアクションから売り上げを得られるリワードネットワークを提供している。このネットワークが一部を形成する広告プラットフォームでは、ネットワークに含まれるアプリケーションによって特定のゲームをユーザーに宣伝できる。Flurryも「AppCircle」という同様のサービスを提供している。AppCircleは、どのようなユーザーが顧客のアプリケーションを楽しんだり、使ったりする可能性が高いかを割り出し、ネットワーク内でそれに一致するアプリケーションを宣伝することができる。Tapjoyの主張によると、そうしたプログラムは参加した顧客に、1日あたり10万件以上の新規ダウンロードをもたらすことができるという。
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