Eads氏によると、米国にはNFC対応のPOS端末が合計で75万台以上あり、そのほとんどがファストフード店やWal-Mart Stores、Walgreensなどに設置されているという。同氏は、この75万台という数字は、全米にあるPOS端末の総数の1%にも満たないとしている。また、米国外に目を向けると、日本や韓国の方がNFC対応端末の普及が進んでいる。
Eads氏は次のように述べている。「現時点で足りないとわたしが考えるものは、Appleとの関連では、決済メカニズムだ。携帯電話内のチップから、小売店が支払いを受けるまでのインフラストラクチャは、Googleのプラットフォームやその他のデバイスでは、明確になっているとはいえない。そのため、Appleの話は非常に興味深い。Appleには明らかに決済の手段があり、われわれはそれを使うことをすでに習得しているからだ」
その「明らかな手段」とは、AppleのIDシステムのことだ。このシステムには現在、2億人を超えるユーザーが利用登録をしており、すべてのユーザーのアカウントにクレジットカードやその他の決済手段が関連付けられている。Appleの最高経営責任者(CEO)Steve Jobs氏は、3月の「iPad 2」の発表イベントで、その2億人という数字をもって、Appleは世界最大級のオンライン決済プロバイダーといえると主張した。さらに重要なのは、このIDシステムが「iTunes」だけでなく、「iBooks」アプリケーションで電子書籍を購入する際にも、「App Store」でアプリケーションを購入する際にも利用できることだ。
「Appleが携帯電話にNFCを追加すれば、携帯電話の決済機能を小売店での代金精算にも利用できるようになり、携帯電話からPOSデバイスへの最後の一歩を乗り越えることができる。Appleに足りないのはそこだけだ」(Eads氏)
では、そのためには何が必要になるのか。Appleは単に既存のPOSハードウェアメーカーと提携するのだろうか。それとも、小売店に設置するボックスを自前で用意するのだろうか。Ablowitz氏によれば、Appleが後者を選ぶ可能性は低いという。
「小売業界はコンシューマーと同じスピードでは動かない。コンシューマーに携帯電話を新しい機種に乗り換えてもらうことや、『WALKMAN』から『iPod』に乗り換えてもらうことはできるが、小売店にビジネス慣習を変えさせるには、投資利益が得られることが必要だ。格好いいというだけでは小売店は動かない」(Ablowitz氏)
Appleが一から自前で用意するよりも他社との提携を選ぶということの根拠は、同社がすでに自社製品で決済にアプローチした手法を見てもわかる、とAblowitz氏は指摘する。
「Appleはこれまで自社でコンシューマー向け決済アプリケーションを用意しようとはしておらず、現在iTunesで決済サービスを提供しているさまざまな企業と提携してきた。よって、Appleが他社との提携に消極的であると考えるのは誤りだ。Appleは自前で構築すべきときと、他社と提携すべきときをわきまえている」(Ablowitz氏)
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