しかし、NFCのチャンスがあるのは単純な手数料のはるか向こう側だ。購入プロセスに付加できるクーポンやロイヤリティープログラムなどに関して小売店と提携を結ぶビジネスがある。Appleは、それらを既存のシステムと連携できるように改良するのではなく、一からやり直して、それを最初から組み込むことができる可能性を秘めている。
Mobile Strategy Partnersと同様に電子決済業界向けのコンサルティングを手がけるDouble Diamond GroupのプレジデントTodd Ablowitz氏は米CNETに対し、「Grouponはチケットの2%を得ているのではなく、支払われた金額の50%を得ている。皆がそうしたプロモーションによる売り上げを追い求めており、今後はそこが焦点になるだろう」と述べている。
Ablowitz氏が言う「皆」にはGoogleも含まれている。同社は先ごろ、「Android」OSにNFCのサポートを追加したが、小売店や開発者向けの決済ツールはまだ提供していない。Googleは2010年末、Grouponを買収する寸前までいったが、それ以降は「Google Offers」プラットフォームによる共同購入サービスに再び注力している。また、FacebookやAmazon、さらにはfoursquare、Gowalla、Looptといった新興企業も小売店と契約を締結し、携帯電話ユーザーにクーポンやディスカウントをアピールしている。
しかし、ディスカウントやキャンペーンによって、物事の順序が逆になってしまう可能性もある。このテクノロジに関して重要なのは、NFCチップが携帯電話に搭載され、NFC対応のPOS端末が市場で普及することだ。基盤となるシステムを用意して、方程式のこれら両辺がさまざまな場所で、そして携帯電話同士で確実に機能することが重要なのは言うまでもない。
では、なぜNFCの普及が遅れているのかというと、その理由の1つは「卵が先か鶏が先か」という問題だ。つまり、NFCチップを携帯電話に搭載するのは素晴らしいことだが、それに対応したスキャナがなければ、誰も携帯電話に搭載したいとは思わない。同様に、NFCデバイスがほとんどないのなら、小売店がNFC対応システムを導入してPOSハードウェアをアップグレードする意味はない。
筆者の同僚のElinor Mills記者が、2月にNFCとモバイル決済に関する記事で指摘したように、Global System for Mobile Communications(GSM)業界を代表する業界団体GSMAは、ハンドセットメーカーに対し、2008年からNFCチップを携帯電話に搭載するよう働きかけを始めており、2009年後半までにNFCチップの搭載を標準的な慣行にすることを目標にしていた。携帯電話ハードウェアで見てきたように、NFCはようやく、専門的な市場や職業向けでなく、携帯電話の標準的な機能になろうとしている。
それまでの間、さまざまな企業が登場し、その空白を埋めようとしてきた。ある企業はNFCチップを内蔵するSIMカードやMicroSDカードを提供し、別の企業はチップを埋め込んだステッカーを用意して本体の裏側に貼れるようにした。
Eads氏は、現時点で実際のハードウェアにコスト面での問題はないと説明する。POSのようなシステムの場合、NFCハードウェアの導入で新たに発生するコストは約5ドルだ。読み取り機が200ドル以上することを考えれば微々たる金額と言える。Eads氏は、「そのコストは小売店が負担している。今の価格を維持して、端末の迅速な普及を促進することは可能だ」としている。そうだとしても、既に機能しているPOSマシンを有する企業にアップグレードさせるのは難しいかもしれない。
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