解説:「スマートTV」「タブレット」「3Dテレビ」がトレンドとなったCES

 1月6日から9日にかけて米国ラスベガスで開催された「2011 International CES」。その内容を総括すると「スマートTV」「タブレット」「3Dテレビ」の3つが大きなトレンドだったといえよう。

 スマートTVは、これまでは「インターネットTV」や「IPTV」と呼ばれていたが、今回のCESによって、それらは死語となり、今後はスマートTVという言葉が広く使われることになる予感を強く感じた。

 スマートTVの分野でリードしている印象を植え付けたのがサムスンだ。サムスンブースでは、スマートTVの文字が踊り、この分野で先行していることを強く訴求してみせた。LEDテレビをリードしたサムスンが、3Dテレビでは日本のメーカーに先行されたが、今度はスマートTVで先行し直すという。マーケティングメッセージの主導権争いという観点でも興味深い。

 一方、2010年に世界で初めてGoogle TVを発表したソニーは、CES会場でもGoogle TVを展示して、この分野に力を注いでいることを示した。米Sony Electronics社長のPhil Molyneux氏は、「2010年10月に発売したSony Internet TV Powered by Google TVの売れ行きは堅調。テレビとインターネットをシームレスに活用できること、毎日のようにアップデートし、常に最新の状態にできることが可能なテレビとして評価を得ている」と語る。

 さらに、「今回のCESでは、27機種にのぼるテレビの新製品を発表したが、そのうち22機種がインターネットに接続可能なテレビ。BRAVIAに対して、すでに40種類のアプリケーションやサービスを提供することができる。これまでにない、楽しいテレビを投入することができる」と続ける。Sonyでは、CEOのHoward Stringer氏が、「Television Redefined(テレビの再定義)」のメッセージを打ち出し、スマートTVの分野に強くコミットしていることを示した。

 スマートTVというデバイスは、単なるテレビやインターネットの情報を映すスクリーンにとどまらず、「スマートアプライアンス」と呼ばれるネット接続が可能な白物家電や、CESでの発表や会場展示が相次いだ「タブレット機」との連動によって、より価値を増す。

 スマートアプライアンスについては、サムスン、LG電子が展示に力を注いでいた。特に、米国市場でナンバーワン白物家電ブランドのポジションにあるLG電子は「THINQ」という家電制御のための新たな技術を発表し、米国市場でのプレゼンスをさらに高めることを狙った。

  • スマートTVは大きなトレンドに。サムスンブースでもスマートTVを前面に打ち出していた

  • プレスカンファレンスでのSony CEO、Howard Stringer氏。「Television Redefined(テレビの再定義)」というメッセージ強調した

「テレビ連動」という新たな価値を示したタブレット

 一方、タブレットに関しては、PCメーカー各社にとっては必須の製品となり、家電メーカーにとっても欠かすことができないツールに位置づけられていたようだ。

 パナソニックは、「ビエラ・タブレット」を発表し、テレビとの連動によるタブレットの新たな利用法を提案したほか、シャープではメディアタブレット「GALAPAGOS」を米国でも投入すると発表。日本では公開していなかったGALAPAGOSとディスプレイシステムとの連動利用のデモストレーションなどを見せた。

 これまで、タブレット機の位置づけとしては「ポストネットブック」「電子書籍ビューワ」というスタンスで語られるケースが多かったが、今回のCESを機に「テレビとの連動」による付加価値が、本格的に注目を集めることになるだろう。

 ところで、このタブレットの分野でプレゼンスを高めていたのがグーグルの「Android」だった。各社がこぞって展示したタブレットは、そのほとんどがOSにAndroidを採用したものであり、ここでのWindowsの存在感は極めて薄かった。

 MicrosoftはCES開催前日に行ったSteven Sinofsky氏によるプレスカンファレンス、Steve Ballmer氏による基調講演を通じて、次期Windowsにおいて、ARMおよびSoCへの対応を発表した。これは裏を返せば、次期Windowsの投入が見込まれる2年後まで、タブレットへの本格対応を先送りしたとの見方もできる。「2年待てば、Windowsによるタブレット対応が本格化する」というマイクロソフトのメッセージが、PCメーカー各社の心をどこまで動かしたかは、わからない。

  • パナソニックが発表した「ビエラ・タブレット」

  • シャープは「GALAPAGOS」を利用した、ディスプレイ画像の操作をデモ

「裸眼3Dテレビ」が抱える課題

 3Dテレビに関しては、日本、韓国の主要電機各社が相次いで製品を展示。中国メーカーまでこの分野への参入を果たし、今年以降、競争が激化することを示すものとなった。さらに、「裸眼3Dテレビ」の展示も相次いでいたのが印象的だ。だが、裸眼3Dテレビはすでに出荷を開始している東芝を除いて、各社とも技術展示の域を出ていない。

 ソニーは「あくまでも販売の主流は眼鏡付きの3Dテレビ」とする。また、展示を見送ったパナソニックも、「画質や長時間の視聴環境、価格という点を考えれば、今後2年間は眼鏡付きの3Dテレビでやっていくことになる」(パナソニック社長の大坪文雄氏)という。

  • 東芝が展示した65型裸眼3Dテレビ

 そんな中、唯一気を吐く東芝が展示した65型および56型の裸眼3Dテレビは、昨年のCEATECで展示された56型のものから改良が加えられており、技術的に進化していることを示した。その一方で普及に向けては、今後の技術進化や、コストダウンといった点での改善が課題であることも示していた。

 印象として、2011 International CESは、ここ数年に渡って下降気味だった同イベントの復権を感じさせるものとなった。来場者数も、当初は前年並みの12万人と予測されていたが、実際の来場者は14万人を記録。さらに、報道関係者も増加している。一部のプレスカンファレンスは会見場に全員が入場できないほどの盛況だったほか、報道関係者向けに用意された無線LANが終日つながりにくい状態となっていたことでも、イベント自体への注目度の高さが伺えた。

 2011 International CESで公開された新たな技術が、今後、どれだけ産業の成長に貢献することになるか楽しみだ。

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