サウジアラビアや韓国など、インターネット検閲を実施している国家はほかにもあるが、これらの国々では禁止サイトにアクセスしようとした国民に対し、サイトがブロックされている理由を伝えるメッセージが表示される。それに比べて中国の取り組みでは、意図的に透明性が担保されていない。政府がガイドラインを全く提供せず、国民に政策や法の執行について悩み考えさせることで、国民やサイトは安全策を取って厳格な自己検閲を行うようになるため、中国政府の仕事は少なくなる。
「人間はすべてのルールを把握しているときは、違反すれすれのことをするものだ。ルールが曖昧な場合は、不利な立場に置かれる。どこまでなら許されるか分からないからだ」(Lih氏)
では、中国政府はインターネットを検閲するために、何をしているのだろうか。
中国にはインターネットアクセスの「関門」がいくつか存在する。すべてのトラフィックがその関門に入り、そこから外の世界へ出て行く。Roberts氏は、「すべての国々は自国の事実上すべてのIPアドレスを何十社とあるISPで接続する。しかし、中国のネットワークは大国の中で最も中央集権的なもので、わずか4社のISPが中国のIPアドレスの90%以上をインターネットのそれ以外の部分に接続している」と話す。
万里のファイアウォールは、ゲートウェイ、ルータ、サーバのシステムで、中国はこれを利用して好ましくないコンテンツが国内のユーザーに届くのを防いでいる。当局は国内のインターネットに入ってくるトラフィックの流れをミラーリングし、ウェブページ内で政府がブロックすべき部分を特定する、とLihは述べる。
Lih氏によれば、トラフィックがドメインネームシステムのレベルでブロックされた場合、ユーザーの画面には「site not found(サイトが見つかりません)」というメッセージが表示されることがあるという。IPアドレスがブロックされた場合は「site unreachable(サイトに接続できません)」、URLがブロックされた場合や、ページにデリケートなコンテンツが含まれている場合は「connection reset error(接続リセットエラー)」というメッセージが表示される可能性があるという。
「万里のファイアウォールシステムは非常に高度で大規模なものだ。個々のウェブユーザーに合わせてサイトのブロックを調整できる。なぜなら、このシステムは中国国内インターネットの外側にあるサイトへのユーザーのサーフィン活動を、そのウェブページに含まれる内容に至るまで監視しているからだ」。Lih氏は自身のウェブサイト(PDFファイル)でこのように説明している。
「Google検索を実行すると、中国のユーザーに返されるそれぞれの検索エンジン結果ページ(SERP)は、デリケートなキーワードが含まれていないかどうか分析されている。ユーザーのGoogleへのインターネットトラフィックは数秒以内にブロックすることが可能だ。こうした監視活動は毎日、絶えず行われている。検索エンジンがGoogleか『Bing』か、それ以外のものかは関係ない」(Lih氏)
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