Roberts氏によれば、中国国民は同国政府の支配体制を転覆させるような情報を声高に求めているという米国側の認識に反して、中国のインターネットユーザーは米国のウェブユーザーと同様に、一般的な情報や娯楽により大きな関心を抱く傾向があるという。
Roberts氏は自らが「かわいい猫理論」と呼ぶ理論を引用し、中国のインターネットユーザーは政治に関する痛烈な非難を読むことよりも、猫がトイレの水を流す動画の方に興味があると述べた。「結局のところ、インターネットの社会的利用の方が、政治的で論争を呼ぶようなニュースコンテンツよりも大きな影響力を持っている」(Roberts氏)
「万里のファイアウォール(中国が秘密裏に行っているネットワークフィルタリングの呼称)でブロックまたは制限されているコンテンツにアクセスしたいと思っている、あるいはアクセスする必要のある人は、驚くほど少ない」。南カリフォルニア大学Annenberg School of Communication and Journalismの客員教授で、「The Wikipedia Revolution」の著者でもあるAndrew Lih氏はこのように述べる。
「そういう情報を求めている人も確かにいるが、人権侵害や台湾独立など、ほとんどのユーザーが日常生活で遭遇することのないような問題について、中国の人々が調査したいと考えているわけではない。おそらく、中国のユーザーが検索している情報の98%はブロックされないだろう」(Lih氏)
1990年代に米国のインターネットを支配していたポータルサイトが中国ではいまだに絶大な人気を誇っていることも、このことを裏付けている。Portals Sina.comやSohu.comは、多くの中国人インターネットユーザーのホームページとなっており、確実に政府に気に入られるであろうコンテンツをまとめて提供している。
中国のウェブサーファーは、「いきなりGoogleにアクセスして、行き当たりばったりに検索する米国のユーザーとは特徴が異なる」とLih氏は言う。
また複数の専門家が、中国人は表現の自由を制限しようとする政府に対して、米国人が主張しているほど大きな怒りを感じていないと述べている。Chinese Academy of Social Sciencesが2007年に実施した調査(PDFファイル)によると、85%もの中国人は政府がインターネットを規制すべきだと考えているという。なお、この調査では検閲への具体的な言及はなかった。
Lih氏によれば、中国の一般的なユーザーは検閲を気にしていないか、あるいはGoogle検索に依存していなかったかもしれないが、同国の専門職に従事している人々や学者など、「洗練された」ユーザーはその限りではなかったという。人数はそれほど多くないかもしれないが、これらの人々は重要な集団である、とLih氏は話す。
自らがブロックした外国サイトの代替サイト(例えば、中国版のYouTubeであるYouKu)を許可し、奨励しているという点においては、中国政府当局者は賢明である、とRoberts氏は述べた。しかし、Twitterの真の代替サイトは存在しないようだ。同サイトはイランなどの反体制派の人々にも好まれている。
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