ではその配列のやり直しは、どのような手法でおこなわれたのでしょう。その典型的な例が「トランプカード」ブロックです。もう一度図2を振り返ると、Google提案の「その他の絵文字記号」ブロックから1文字だけを抜き出して、新規に「トランプカード」ブロックを設け、そこに配置しています。
そこで実際の文字表を見てみましょうか。まず図3が元のGoogle提案。このたくさんの絵文字の中に埋もれていた「ジョーカー」(赤枠内)を、アイルランドとドイツは図4のように配置したわけです。
つまり、たった1文字の「ジョーカー」を手がかりにして、全部のトランプカードがそろうように58文字を新しく追加しているのです。なんと大胆な! ここで前述アイルランド・ドイツ提案「その他の技術用記号」ブロックに戻ると、じつはここでも「トランプカード」ほど規模は大きくありませんが、同じ手法で再編・追加されていることが分かります(図5)。
たとえば右上隅の目覚し時計(23F0)を例にとると、Google提案にあった元の「目覚し時計」を手がかりに、「ストップウォッチ」(23F1)と「タイマー」(23F2)を追加しています。これ以外もほとんどが同じ手法で、たとえば「音の波が3のスピーカー」(23F9)を手がかりに、「音の波が1のスピーカー」(23F8)、単なる「スピーカー」(23F7)、「無音を表すスピーカー」(23F5)の4文字を追加しています。
しかしアイルランドとドイツは、どうしてこのような荒療治をおこなったんでしょうね? なにもマーク・デイビスへの面当てだけでなく、そこには考えがあるはずです。前の方で彼等はGoogle提案について<ISO/IEC 10646の考え方にかなった符号化文字となるためには、まだ埋めるべきギャップがある>と批判をしていたことを思い出してください。おそらく、こうした再整理こそが彼等にとって<ギャップ>を埋めることなのです。それでもこれだけでは、なぜ再整理が必要だったのか分かりませんね。その謎を解くカギが、前回お話しした国旗の絵文字にあります。
そこでは、国旗を表す絵文字で選ばれている10カ国の組み合わせの基準は、日本の文化に強く依存した恣意的なものにすぎないことを説明しました。そしてそれを排除し、汎用性を高めるために国別コードを四角で囲むデザインに変更されたのでした。
じつはほとんど同じことが、前述の「ジョーカー」にも言えます。Google提案では、これはサイコロや花札、ボーリングなどと一緒に「ゲームシンボル」というサブブロックに入っています(図6)。つまりGoogleはこれらを「ゲームを象徴するもの」であると解釈し、ひとまとめに整理したわけです。
しかしこの組み合わせはどう考えても恣意的なものでしかありません。そもそも、この8つのシンボルで表されるゲームが日本の代表的ゲームだと言われても、それを納得する日本人がどれだけいるでしょう。とは言え、Googleがこれらを「ゲームシンボル」としたからといって、彼等を責めるわけにもいきません。これらの絵文字を作ったのは、彼等ではないからです。
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