この和解にはまだ裁判所の承認が必要であり、また極めて広範囲に及び、いくぶん驚くべき内容でもある和解条項に関して多くの関係者が裁判所に懸念を表明する可能性もある。といっても、孤児作品への一般のアクセスに関する懸念は、裁判所にとっては懸念事項ではないかもしれない。ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所のDenny Chin判事は、訴訟を提起したクラスにとって公正な和解を承認する責任を負っているのであり、より切実でより広範囲にわたる公共の利益といくつかの消費者団体が呼ぶものにかなう和解については、承認する責任を負っているわけではない。
カリフォルニア大学バークレー校の教授でありBerkeley Center for Law and Technologyの共同ディレクターも務めるPamela Samuelson氏は、この和解には「極めて巧妙なものがある。Googleは、ほかの誰も手に入れることのできないものを手に入れようとしている」と言う。
ではこのことは、孤児作品への今後の一般アクセスにとってどのような意味を持つのだろうか。
それらの書籍へのアクセスに影響を及ぼすようなシナリオが、いくつか展開される可能性がある。独占禁止法当局が和解に介入する可能性があるし、連邦議会がほかの大規模なデジタル化プロジェクトを認める法案を通過させる可能性もある。
ほかの企業が、デジタル化プロジェクトに着手してから和解に合意するというGoogleの戦略をまねしようとするかもしれない。あるいは、裁判官が和解案を却下し、Googleは同社の公正使用の訴訟を推し進めることもあり得る。
Consumer Watchdogは、孤児作品の状況と、この和解における別の条項の両方によって、デジタル化活動に関心を持つほかの企業にとっての障壁が作り出されることを根拠として、司法省に働きかけている。同団体では、和解が承認された場合に、司法省から裁判所に対し、Googleに孤児作品のサブライセンス許諾を義務付けるよう要請することができるのではないかと考えている。
Consumer WatchdogのCourt氏は、介入する可能性が最も高いのは司法省ではないかと考えながらも、「議会が介入しようと考えたら、確実に競争の場が公平になるだろう」と述べている。
2008年孤児作品法は、同法のそれまでのバージョンと同様に、利用者がすべての対象作品につき権利保持者を探し出すことを義務付けていたため、Googleのプロジェクトのような大規模なデジタル化プロジェクトには事実上適用することができなかっただろう。
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