冒頭でも述べましたように、最近になり日本でもアドネットワーク事業への参入を発表する企業が増えています。おそらく、発信される情報量の増加やインターネットサービスの普及により、ユーザーのライフスタイルやニーズの複雑化、多様化が起こり、ターゲット設定やアプローチ手法の不確実性が生まれてきたからではないかと考えられます(米国でこれらの広告モデルが生まれた背景と同様です)。
さて、前述の米国事例にもあるように、アドネットワークの成長には十分なUU数の確保、高いリーチの獲得が欠かせません。しかしながら、現在の日本においては、それらを満たすことは大変難しいと予測されます。要因としては、下記の2点が考えられます。
米国と日本のUU数TOP5を比較してみると、米国においては、上位4サイトは1位、2位のGoogle、Yahoo!が頭1つ飛び出しているもののほぼ横並びの状態にあります。
しかし、日本においては、Yahoo! JAPANが2位に2倍弱の差をつけて圧倒的なUU数を確保していることが見て取れます。さらに、上位50サイトで比較してみると、その1人勝ち状態は明らかです。米国では、ある程度複数のサイトに利用者が分散していますが、日本では、Yahoo!Japanに依然集中しているという状況があるのです。
順位 | 米国TOP5 | UU | Reach |
---|---|---|---|
1 | Google Sites | 141,613 | 74% |
2 | Yahoo! Sites | 140,080 | 74% |
3 | Microsoft Sites | 119,677 | 64% |
4 | AOL LLC | 110,841 | 58% |
5 | Fox Interactive Media | 85,998 | 46% |
順位 | 日本TOP5 | UU | Reach |
---|---|---|---|
1 | Yahoo! Japan | 42,753 | 88% |
2 | 楽天 | 22,109 | 45% |
3 | fc2ブログ | 20,896 | 43% |
4 | 18,947 | 39% | |
5 | wikipedia | 18,922 | 39% |
下の図は上記の表をグラフ化したもの。
媒体社発のアドネットワーク参入が相次いでいる今こそ、今までメディアの代表窓口として存在したメディアレップが、大型アドネットワークの構築を進めるべきだと思います。
現在では、力をつけた媒体社が単独でアドネットワーク構築に動くということが見受けられますが、その部分をメディアレップが旗振りし、1つの大型アドネットワーク構築を行ってもいいのではないでしょうか。サイバー・コミュニケーションズ(cci)、デジタル・アドバタイジング・ コンソーシアム(DAC)といったメディアレップ各社は、それぞれ、ADJUST、impActネットワークというアドネットワークを保有していますが、テクノロジーに耐えうるUU数は確保できていないように思われます。
また、ただ単純に媒体を束ねるだけでは、Yahoo! JAPANとの差別化は図れないと考えられるため、ターゲティング技術の開発や広告メニュー体系の多様化などで付加価値をつけていく必要性があるでしょう。
今後、日本でアドネットワークが成長、成功するには、2つの要素が必要になると思います。
1つ目は、大型アドネットワークの構築や、UU数は少なくとも、ある特定の分野のサイトを集めたバーティカルアドネットワーク(専門アドネットワーク)の構築です。また2つ目は、日本特有のターゲティング技術の発展と多様な配信方式、配信フォーマットを組み合わせられる広告メニュー体系の構築です。
これらが整ってきたならば、日本においてもアドネットワークが成功する可能性は大いにあるのではないかと考えます。
学習院大学経済学部卒業。卒業後、経営コンサルティングファーム、大手インターネット媒体社を経て、2005年10月にオプトへ入社。入社後、大手金融会社の営業を担当、2007年7月に社内にてSEM研究所を設立。現在は、メディア営業2・3部の部長として、主にモバイル、SEM関連商材の営業を担当。デジタルハリウッド大学院在籍、日本ダイレクトマーケティング学会会員。主な論文は「クッキーデータを活用した次世代ダイレクトマーケティング」。Blog「admaniaの備忘録」を連載中。
外資系光学機器メーカーを退職後、渡米。カリフォルニア州立大学サクラメント校を卒業後、2005年1月(株)オプト入社。マーケティング部配属となり、ネット広告全般のプランニングや調査など経験。現在、経営戦略部に所属し、海外の市場動向を探る。
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