米国時間3月9日夜、オースティンコンベンションセンタの一番大きい多目的ホールは、Facebookの創業者Mark Zuckerberg氏によるSouth by Southwest Interactive Festival(SXSWi)の基調講演まで30分以上も前だというのに、熱心な聴衆で満杯だった。同社の最高経営責任者(CEO)で、つい先日Forbes誌で世界一若い億万長者に選ばれたばかりのZuckerberg氏と、聞き手のBusinessWeek誌のSarah Lacy記者による、インタビュー形式の講演は、会場に入りきれなかった人々のために用意された2つの予備ホールにも中継された。
Zuckerberg氏はハイテク業界ではかなり重要な人物の1人だ。Facebookについてのビッグニュースを聞きたいと思っていた人は、この日の講演に失望したかもしれない。誰も知らなかった話といえば、フランス語版Facebookができるということぐらいしかなかった。しかし、それも当然で、Facebookは口が堅いことで悪名高いのだ。にもかかわらず、聴衆は極秘情報が漏れるのを期待しており、やがてしびれを切らしたのか、ちょっと意地悪なヤジが飛ぶ一幕もあった。
Lacy記者はまず、「プラットフォームの開始以来、Facebookについて書かれてきたことは、大半が会社に関することだ」と話を切り出し、Zuckerberg氏が、これまでSXSWiの基調講演に立った顔ぶれの中で最も著名な人物だと紹介した。Lacy記者はさらに、「あなたが成功している本当の理由は、サイトそのものにある」と言い、Zuckerberg氏に対して、企業の評価額とまだ24歳にもなっていないという事実のほかに、どんなことに注目してほしいかと尋ねた。
「これまで大いに注目を集めてきた事柄とは別に、企業としてのわれわれが取り組んできて、注目してほしい部分がある。Facebookでわれわれが試みているのは、人々が接続し交流することを手助けすることだ」と、Zuckerberg氏は答えた。同氏は、Facebookのスペイン語版が登場してからコロンビアでの利用が増え、今ではゲリラ勢力と戦う活動家組織の連絡拠点になっていることを紹介した。
人々がそんな使い方をすると想像したか、と質問されて、Zuckerberg氏は「ノー」と答えた。一斉にたかれたカメラのフラッシュに包まれた同氏は、まるで歌手のJustin Timberlake氏のようだった。
基調講演の前半は、世界を変えることについての話題が話の中心だった。Zuckerberg氏は、「数カ月前に、まったく信じがたい話を聞いた」と言い、Facebookが中東にもたらした影響について語った。Zuckerberg氏が耳にした話は、レバノンの若者たちが、Facebookを利用してお互いにつながり、イスラム原理主義が文化に浸透した地域にいながらも、孤立した共同体の枠を超えて視野を広げているというものだ。「彼らは世界の現状に対する理解と共感を深めた。そのことがまさに、彼らの物事に対する見方を変えたのだ」
続いてLacy氏は、Facebookが、世界を何らかの方法で変える具体的な戦略を持ち、率先して取り組んでいるのかと質問した。
「うーん」とZuckerberg氏は口ごもってから、「われわれが使命として行っていることは非常に重要だと思うが……」と述べた。Zuckerberg氏の受け答えが専門家に指導されたものではないことは明らかだった。Zuckerberg氏の声が次第に小さくなると、Lacy氏は、初めてインタビューしたときZuckerberg氏が話下手なことに驚いたと、やんわり侮辱するような話を始め、彼女が1度に2語以上で話すよう求めると、Zuckerberg氏が「That's really hard(それは実に難しい)」と3語で答えたというエピソードを披露した。これを皮切りに、Lacy氏は「別の機会にZuckerberg氏のインタビューを行った際の恥ずかしいエピソード」をいくつか並べた。
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