ソーシャルネットワーキングサイトFacebookの新しい広告機能「Beacon」には、詐欺的だとかプライバシーの侵害だとかあらゆる非難の声があがっていたが、ついに、Facebookの最高経営責任者(CEO)Mark Zuckerberg氏が正式に非を認め、新たな修正を明らかにした。
米国時間12月5日朝、23才のZuckerberg氏は同社のブログへの投稿において、Beaconをめぐる不手際について謝罪した。Beaconとは、サードパーティサイトでのユーザーのアクテビティ情報を共有し、友人の「News Feed」に表示する機能だ。
「この機能の構築にあたって多くの間違いを犯したが、これを実施する時点でさらに大きく扱いをあやまった」と同氏は記している。「この機能をリリースするにあたって、われわれはまったくのへまを犯したのであり、私はこれを謝罪する」と、Zuckerberg氏は記している。
Facebookは11月末にも、Beacon機能の修正を発表したのだが、十分な実質を伴うものではないと批判する声も出ていた。今回、いうなれば和平提案といった形で、Zuckerberg氏はユーザーがBeacon機能を完全に停止できる選択肢を加えることを明らかにした。
Zuckerberg氏のブログは続く。「正しいバランス感覚に欠けていた。当初は、非常に軽量なものにして、ユーザーがなんら手を触れなくても機能できるようにしようと考えた。オプトイン方式ではなくオプトアウト方式を採用した当初のやり方は、共有を拒否し忘れた場合でも、Beacon機能はそのまま働いてしまい、情報が友人間で共有されてしまうことが問題だった」
Zuckerberg氏はまた、その後の広報活動の失敗についても謝罪した。「Beaconの機能を変更して、共有したいものに対して明示的に承認しなければ機能が働かないようにするよう、ユーザーから意見が寄せられていたのに、いたずらに時間を経過させてしまった。迅速に対処せず、正しい解決法を決めるのに長い時間をかけすぎてしまった。今回のわれわれの対応は誇れるものではなく、もっと適切なやりかたができたはずだった」と、Zuckerberg氏は記した。
これは、2006年9月に同氏が示した姿勢とよく似ている。当時、新たに導入したNews Feed機能は、ユーザーの間に激しい不満と論争を引き起こし、プライバシー侵害ではないかとして「National Don't Log Into Facebook Day(全米一斉にFacebookにログインしない日)」を実施しようという運動まで起きた。このとき、Zuckerberg氏は今回と似た文章をブログに投稿し、プライバシー管理の改善を発表した。皮肉なことに、News Feedは現在、ソーシャルネットワークにはなくてはならない機能と考えられていて、ソーシャルネットワークのトップであるMySpaceもこのほど、同じ機能を自らのサイトに追加した。
とはいえ、Beaconをめぐる状況は本質的に異なっていた。第一に、Facebookに対する非難は、怒れるユーザーの一団からというよりも、著名な活動家団体から出ていた。その中には、米連邦取引委員会(FTC)の注意をFacebookの広告プログラム向けさせようとしたデジタル民主主義センター(CDD)と米国公共利益調査グループ(PIRG)や、Beaconは高く評価されているプロジェクトを変質させるものだとして変更を迫ったMoveOn.orgなどがある。
こういった団体のいくつかは、Zuckerberg氏の謝罪に対して意見を織り交ぜた声明を発表している。MoveOn.orgの広報担当Adam Green氏は電子メールに次のように記している。「大きな疑問としてあるのは、はたして企業広告主はインターネットの規則を明示するだろうか、あるいは、これら新参のソーシャルネットワークはプライバシーといったわれわれの基本権利を保護するのだろうかという点だ。Facebookの方針変更は正しい方向へ踏み出す大きな一歩だ。われわれは、これが業界全体の流れとなり、企業広告主の望むものではなく、まずインターネットユーザーの基本権利を守る方向に進んでいってくれることを願っている」
CDDのエグゼクティブディレクターであるJeff Chester氏は、ここまで楽観的ではない。「11月末のオプトイン方式変更に続き、FacebookユーザーがBeacon機能を停止できるようにするという今日の発表は、正しい方向への第一歩だ。しかし、Zuckerberg氏はFacebookユーザーに対して真に誠実ではない。Beaconは、Facebookが実施している膨大なデータ収集とターゲッティング広告システムの一側面を示したにすぎないのだ」と、Chester氏は声明に記している。
さらに、Beaconをめぐる失敗は、これまでにFacebookが起こしたプライバシーがらみの混乱よりも複雑だ。これには広告主も絡んでくるからだ。この数日で、Overstock.comやTravelocity.comといったBeaconの参加企業数社が一時的または完全にプログラムから手を引いたことが確認されている。つまり、Facebookはユーザー層や著名な活動団体をなだめなければならなかったばかりか、主要な提携企業の顔も立てなければならなかったのだ。Facebookが実質的に利益を伸ばしてこられたのは、こういった提携企業のおかげなのだから。
Overstock.comの事業関連部門シニアバイスプレジデントのJonathan E. Johnson氏はCNET News.comとの取材に応え、Overstock.comとしては、Beaconからの撤退を決めた同社の決定を取り消すかどうかを考慮するには、時期尚早だと考えていると述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」