業界再編で十分か--日本家電産業の未来 - (page 2)

規模を追求する再編の意味は

 よく新聞報道などでは、「生き残りをかけた規模の追求」などといった表現をよく見かける。しかし、規模を得ようとするならば、国内市場を仲良く分け合ってきた程度の事業者同士が合従連衡するだけでは、全く不十分だ。例えば、「ノキア=携帯電 話」といった製品の選択と集中を行い、かつ同製品の全世界市場で圧倒的なシェアを目指すというであれば、説得力もあろう。選択と集中、そしてシェアの確保を同時に満足するのではなければ、規模の追及は不十分ということになるのだ。

 しかし、ノキアほどでなくとも、特定領域での圧倒的なシェア確立とは、そう簡単な話ではない。例えば、「世界三強」を狙うとした東芝の半導体の市場では、年間6000億円近くを研究開発と設備強化に投入しているMPUの雄インテルを頂点に、複合企業の 一部門が他社と合従連衡した結果、コアとなる領域に絞り込んでスピンアウトをしたインフィニオン(シーメンスから)やフリースケール(モトローラから)、NXP(フィリップスから、あるいはキマンダ(さらにインフィニオンから))など、あるい は国家的支援を受けたサムソンなど、はるか前方を走るプレーヤーが多い。それらに対して、直接に対抗するためには更にどれほどの資金投入が必要なのか…想像を絶する。

 報道では、ソニーはCELLを中心とした半導体設備を東芝に売却、その上で設備運用を行う共同出資会社を作り、主要な取引先として影響力を保持する、としている。共同出資会社というプランは、過去の日立製作所と日本電気のDRAM部門統合による「エル ピーダメモリ」、同じく日立製作所のDRAMを除く半導体部門と三菱電機の同事業部門の分離統合会社「ルネサス テクノロジ」などの成功があり、前述のインフィニオンなど、半導体のように資産における設備比率の大きい、かつ基本はコモディティでありな がらも個別製品間では競争優位が存在する産業では、比較的成功しやすいアプローチであるといわれている。

 これらは、総合電機から特定の製品領域を分離するという点、また、対象となる製品領域が垂直統合的な製品(パソコンやフラットディスプレイテレビなど)ではなく、自社に加えて他社にも出荷することでより大きな市場機会を狙える部品であるという点 で、セットメーカー(最終製品メーカー)とは異なる性格を持っている。それゆえに、分離・独立が成立しやすい。が、逆に言えば、残るセットメーカーでは異なる戦略が必要不可避なので、日本ビクター・ケンウッドとシャープ・パイオニアの再編話は、ソニー・東芝のお話とは異なる性格を持っており、一概に同じ議論として片付けられないといっていいだろう。

セットメーカーの生き残る道は

 半導体やディスプレイユニットだけではなく、具体的な消費者向けの製品を提供していくセットメーカーとしての生き残りという選択では、確実な方策がまだ見つかっていない。少なくとも、それは総合家電としての、過去あった姿のままではないに違いない。

 総合家電事業者同士が合併し市場シェアを加算するという単純な選択では回答にはならない。プロセス、あるいはプロダクトのイノベーションを合併によって生み出せるかが、存続の分かれ目になっていくに違いない。果たして、総合家電メーカー同士による合従連衡で、イノベーションは生じうるのか。

 かりに一歩引いて、その規模の追求である程度のメリットがあるとしよう。しかし国内市場を対象に経営を行ってきたもの同士の市場であれば、市場規模はサブスケール(成立には不十分な大きさ)でしかなく、かつ製造部門などで重複する資産の多さを 鑑みると、決して効率のよいものではないはずだ。それを見越してか、シャープとパイオニアの経営陣は「経営統合は想定していない」とするが、であれば果たしてその資本業務提携の意味合いはどれほどのものとなるのだろうか。

 シャープの片山社長が、提携以上の話にはならないのかという質問に対して「われわれの業界はそんなに(買収の話を詰めるほど)時間的余裕のない競争環境の中にある」というような旨の答えをしていたが、であれば、国内外でより効率的な買収や調達もあったのではないか。あるいは、そもそも単純な足し算引き算程度のお話であれば、絶対的な競争優位の確立は不可能ではないか。

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