領域を変えることで新たな競争優位を作り出すというルールを導入することで、先行するSCEIのPS3の影響力を低減させ、軌道修正を困難にする戦略をとった任天堂は、最近ではWiiの供給不足など製造業者としての甘さを露呈しつつある。が、新たな「ゲーム」事業領域を定義することで、優位を確立したことは事実だ。
一方SCEIは、PS3開発のリーダーシップを執ってきた久夛良木氏の退任という手段をとって、事業挽回の雄たけびを上げる試みにでた。それはPS3を「ゲームを超えるもの」として生み出した人物をゲーム事業から切り離すことを意味する。しかし、すでに任天堂が書き換えた「ゲーム」事業の領域でSCEIが任天堂に追いつくことは困難である可能性が高い。もう一度、その定義の変更を行うことが唯一のナンバーワン奪回の手段なのだから。
確かに久夛良木氏をゲーム事業から外すのは大きなメッセージとなるが、そのインパクトが及ぶのはこれまでの「ゲーム」事業領域のルールが機能する範疇に限られたことになるのではないか。可能性として、久夛良木氏がソニー本体のシニアテクニカルアドバイザーとして、PSプラットフォームとは異なる「ゲームを超えたもの」をSCEI以外のソニーグループの中で創り出し、結果、WiiやDSを凌駕するさらに新しい「ゲーム(すでに、ゲームという言葉を当てるのは適切ではない可能性が高いが)」事業領域の定義を行う可能性はないのか。
ハードメーカーでありながら「eyeVio」のようなネットサービスを推進するソニーのことだ。久夛良木氏という逸材を、PS3の不調というだけで冷遇することはないのではないだろうか。
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