ゴールデンウィークの最中、Yahoo!をMicrosoftが買収、あるいはネット部門で提携するというニュースが世界中を駆け巡った(「マイクロソフトがヤフーの買収に乗り出しか--米紙報道」)。最新OSのWindows Vista、そして最新版Officeなどの出荷もあって業績は好調なソフトウェア最大手のMicrosoftであっても、その本質的な「強み」について、圧倒的な「脅威」とまでされた過去の風潮は薄れ、一部ネットの先端的な論者の中では「考えなくていい」「忘れていい」とさえ語られている存在だという。ゆえに、やはりネットの中ではスーパースターであったポータルプレーヤーのYahoo!とともにGoogle包囲網を形成し、かつての栄光の奪還を狙う――というストーリーは、本質的な意味での無理は感じるものの、選択としては「ある」と思う向きも多かったのではないか。
かつてPCの世界の覇者であったMicrosoft、そしてネット草創期の雄であるYahoo!が1つになる、というニュース。ふと思えば、お話として「GoogleとAmazonが1つになると…」という“Googlezon構想”は「なったら、すごい(でも、多分、いや絶対「ない」)」というように、すでに語られていた。が、“MShoo!”などといった想像はなされなかったのだ(あるいは想像されても、多くの人の話題に上がることはなかった)。深読みすれば、このニュースの筋書きはむしろ「ありうる」と脳裏では多くの人が思っていた話なのかもしれない…。
いずれにしても、どこかで静かに大きな変化が進行している、とこのニュースを聞き、改めて感じる人は多いのではないか。そう、世界は変貌しつつあるのだ。
MicrosoftのYahoo!買収という話題の背景には、パソコンOSあるいはパソコンそのもの、およびポータルという彼らの事業領域における優位性を確立するルールの消滅、そして事業領域を区分する境界線の喪失という本質的な変化がある。例えば、Googleは検索という機能の提供者ではあったもののポータルプレーヤーとしての地位は望まなかった。Appleのリバイバルも、Windowsに真正面から対抗した結果ではなく、機能よりもビジュアルをキーとしたiMac、あるいは音楽ライフスタイルの革命であるiPod/iTunes Storeによって結果的に先行者の地位を揺るがし、結果的に領域の定義そのものを塗り替えている。
「自動車業界の中でトヨタ自動車がグローバルナンバーワンになるためには、General Motorsよりも出荷台数を増やさなければいけない」といったものと同様の議論は、ネットやITの領域では成立しないのだ。ネットやIT領域での競争は、常にジャンルやカテゴリの新たな線引きを伴っている。「土俵を変える」あるいは「土俵を創り出す」ことに長けたプレーヤーだけが、居場所を自ら作り出し、その領地の中で優位に立ことができるのである。これは、これまでの物理的な製造施設こそが「心臓」であった産業とは全く異なる性格を持つことを改めて指す事実だろう。
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