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ネットインフラただ乗り論争の本質 - (page 3)

新保豊(日本総合研究所)2006年04月19日 11時30分
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GyaOがバックボーンへ実害をもたらすとすれば

 仮に、GyaOのようなサービスにより、バックボーンへの実害が発生するほどになったらどうするか。いまや「ブログ」で映像をやり取りするサイトも急増している。また、インターネット上で音声データファイルを公開する方法の一つである「ポッドキャスティング」に、最近ではビデオをクリッピングする動きも出てきた。

 こうしたコンテンツや前述の放送型映像サービスが、私たちの生活や仕事のうえで当たり前に、そして不可欠なものとなってくると、あっという間にバックボーン帯域を圧迫することは容易に想像がつく。

 サービスプレーヤーが、利益を得るために、自らが所有していない、ある特定の設備やネットワークなどの資源を使用するならば、当然その資源使用料をその所有者に支払うべきだ。これまでもその使用料(相互接続料など)を支払っているのだから、追加的な支払いは不要だとする考えもある。

市場メカニズムを機能させるべき

 しかし、本当にバックボーン網のトラフィックが逼迫し、通信会社がバックボーンなどを拡充せねばならず追加的なCapex(設備投資)を発生させる、あるいは追加的なOpex(運用費用)が必要であれば、サービスプレーヤーと通信会社間のバーゲニングを行えばよい。つまり、需要側と供給側において市場メカニズムを機能させればよい。その間で値上げもありうるだろう。

 ここでサービスプレーヤーまたはプロバイダ(ISP)のなかには、値上げ圧力に耐えられない者も出てよう。そうなると、市場からの退出もありうる。つまり、ISP市場の再編もありうる。ただし、この再編の大半はもう済んでいるとの見方もある。なんとなれば、現在の中小プロバイダの多くは、とっくの昔にISP機能は大手ISPへアウトソーシングしており、実態は顧客管理機能のみというのが実態のようであるからだ。言い換えると、プロバイダの再編は大手間のみで今後起こりうる。

プロバイダの再編のみならず、通信市場の再編も?

 わが国では、すでに大手プロバイダは寡占市場を形成していると思われるが、この寡占化がさらに進むだろう。寡占下の大手であっても、プロバイダ機能だけの利ざやは小さい。また、その機能だけでは顧客(消費者ユーザー)の流出を止めることはできない。

 となると、新たなトラフィックの急増により、通信会社とISP、さらにはその上のサービスプレーヤーといった垂直統合的な再編が起こりうるだろう。経済学的には、関係レイヤ間をまたがる統合的組織のほうが、各機能主体間で発生する総取引コストよりも小さくできる状況がありうるからだ。そして、プロバイダ機能のほか、プラスアルファ(付加価値)の機能・価値なしには、利益を確保することも、顧客を維持することも難しくなること必至であろう。

追加的な価値があれば消費者への価格圧力は当然

 米国では、こうした通信会社とISPの動きを通じ、エンドユーザーである消費者への価格圧力が高まっていくことへの懸念が、特に政治家や消費団体の間にある。政治家には消費者が票田に見えるだろうから、無理からぬことでもある。

 しかしながら、これまでよりも高速で高質かつ多様なサービスを、つまり追加的な価値を消費者が享受しているのであれば、相当の対価を支払うのが市場原理というものだ。その市場のメカニズムを無視しているとすれば、そちらのほうが大きな問題となる。

GyaOは犯人ではない

 GyaOやその他類似サービスがバックボーントラフィックを逼迫させている事実は、現在のところあまりなさそうだ。また、日米のインターネット利用料の差は単純な単位速度当たりの価格では判断できない。近い将来、確かにバックボーンを逼迫させるような状況はあるだろう。

 しかし、逼迫しているかどうかは、需給のミスマッチにより起こるものだ。言い換えると、本当にサービスレベルの需要が喚起され、消費者が対価を支払いたいようなサービスとなれば、供給側は追加的な設備も打てよう。この局面でバックボーンのキャパシティが逼迫するのは、設備などの整備の遅れがあった場合の一時的な期間のみとなる。市場メカニズムが機能していれば、何ら問題はない。

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