2003年のはじめには、ほとんど無に等しい存在でしかなかったオンラインでの有料音楽配信サービスは、1年をかけて飛躍的な変化を遂げた。ここでは海外の記事を中心に、今年1年の動きを追うことにする。
3月の始めに、米Appleが自社のiPodおよびiTunes音楽プレーヤーソフトを絡めた有料音楽配信サービスを準備中とのニュースが報じられた。この時点でもすでに Pressplay(Universal MusicとSony Musicのジョイントベンチャー。後に米Roxioが買収)や MusicNet(Warner Music Group、BMG Music、EMI Recorded Music、AOL Time Warner、RealNetworksが参加したJV)、Listen.comなどの音楽配信サービスが存在していたが、経営的にはいずれも苦戦を余儀なくされていた。ユーザーに対する利便性が欠ける点や、あるいは運営母体である各大手レコードレーベルが(違法コピーの氾濫を恐れて)どこか及び腰だった点など、いつくかの要因が組み合わさっての「苦戦」だったわけだが、こうした状況で4月末にサービスを開始したiTunes Music Store(以後「iTunes」)に対しても、当初は懐疑的な見方が出されていた。だが、サービス開始から1週間で早くも100万曲のダウンロードを記録したiTunesは、その後も好調に推移し、とくに10月半ばにWindows版アプリケーションがリリースされてからは爆発的に利用者が増え、12月上旬までに累計2500万曲がダウンロードされるという成功を収めた。
このiTunesの成功を目にし、市場が存在することを確信したさまざまな企業が、相次いで参入の準備を開始した。
まず6月はじめにオンライン小売大手の米Amazon.comが参入の意向を示したのを皮切りに、7月中旬には米Buy.comが、また9月末にはPC最大手の米Dellが米MusicMatchと組んでの音楽配信計画を発表。これに、Roxioのもとで「再生」したPtoPの米Napsterや、さらには間もなくサービス開始が噂される世界最大の小売チェーン米Wal-Martの参入などの動きも加わり、まさに百家争鳴の様相を示し始めている。
これに加えて、現在すでに計画を発表しているなかには、「やって当然」と思われるソニーのようなところから、米Coca-Colaのような意外性の大きなところまで実にさまざま。そうしてまた、ある意味で真打ちともいえる米Microsoftも、「サードパーティの取り組みを支援する」との当初の姿勢を変更し、後には自ら直接サービスに乗り出すと発表したことで、競争の行方はますます混沌としてきた感がある。
会員向けの契約サービスRhapsodyを有する米RealNetworkは12月半ばにMicrosoftを独禁法違反の疑いで提訴した。この訴訟が、オンラインでの音楽配信サービス全般の展開にどういう影響を及ぼすかは、まだ未知数であるものの、同市場の混沌にいっそう拍車を掛ける可能性は高い。
いずれにしても、現在のAppleの独り勝ち状態が長く続くみこみは薄く、いっそう激化する競争をくぐり抜けてどこか特定の勝者が現れるのか、あるいは共倒れに終わるのか。長引く衰退を経て淘汰の進む音楽業界の動向や、オンライン配信の基盤となるDRMを巡る戦いと合わせて、来年もこの世界の動きから目が離せない。
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