サンフランシスコ発--米Apple Computerは16日(米国時間)、大きな注目を集めている音楽ジュークボックスソフトウェア「iTunes」と、オンライン楽曲販売サービス「iTunes Music Store」のWindowsバージョンを発表し、Macintosh以外のプラットフォームへの進出を果たした。
同社が今年4月に開始したMacintosh版サービスと同様、Windows版のiTunesは無料で、膨大な音楽カタログへワンクリックでアクセスし、楽曲をダウンロード出来るようになっており、ほとんどの楽曲は1曲99セントで販売される。同社は、今年末までにWindows版をリリースすると約束しており、16日のイベントで発表されるものと広く予想されていた。
新Windows版iTunesジュークボックスはWindows 2000およびXPに対応しており、Macと同じルックアンドフィールになっている。サポートされているフォーマットは、Appleのコピー防止機能つきAdvanced Audio CodingフォーマットとMP3で、MicrosoftのWindows Mediaオーディオフォーマットはサポートされていない。
「これはiTunesや音楽ストアの縮小版みたいなものではない。機能も内容も、すべてが揃っている」とAppleの最高経営責任者(CEO)Steve Jobsは、イベント会場となったサンフランシスコのMoscone West Convention Centerで語った。Jobsは、お得意の大げさな言い回しで、「Windows版 iTunesは、今までにつくられたなかでおそらく最高のWindowsアプリケーションだ」と宣言した。
Jobsは、市場を独占するWindowsプラットフォーム用ソフトの開発が、Appleの方向性を逸脱していることを認め、「hell froze over」(あり得ない事が起こった)という言葉を添えた画像を示して、今回の発表をスタートさせた。同社はその後、iTunesが動いているWindowsパソコンの写真の下にこの文句が付されたポスターを配布した。
Appleは予想通り、このイベントでiPod用の新しいアクセサリも発表した。発表されたのはマイクロフォンと、ユーザーがデジタル写真をiPodに保存するためのリムーバブルフラッシュメモリ用カードリーダーだが、但し写真の表示はできない。パソコン用アクセサリメーカーの米Belkinが両製品を製造し、Appleのオンラインストアを通じて販売する。
iTunesサービスの発表は、Appleが従来から手がけているコンピュータ製品以外での同社の将来、そしてデジタル音楽ビジネス全体の将来を占うものとして、非常に大きな注目を集めている。同社は米Microsoftやソニーと同様、自社の製品を家庭用デジタルエンターテインメントシステムの中心になるものと位置づけている。パソコン市場シェア90%以上を占めるWindowsプラットフォーム---これに対し、Appleのシェアは5%未満だ--への進出は、この野望のさらなる拡大を意味している。
Appleが4月にiTunes Music Storeを開始すると、デジタル音楽業界では多数の新興企業が倒産し、また制限の多いライセンス条項が廃れていった。
Appleは、Jobsの交渉力と、米Pixar Animation StudiosのCEOとしてのハリウッドでの名声のおかげで、それ以前の企業よりもはるかに自由な活動が可能となった。その結果、iTunesは、史上初のコンシューマーフレンドリーなデジタル音楽ストアとして持てはやされた。同社は、サービス開始後半年も経たないうちに、販売数が1300万曲に達したと発表。この数字は、他のオンライン楽曲ストアが同様の期間で販売した楽曲数よりはるかに多く、しかもMacintoshユーザーという比較的小規模な市場だけで実現したものだった。
音楽スターらも支持
サンフランシスコで開催された同社のサービス開始イベントには、音楽スターらの支持も寄せられた。U2のBonoや、ラップアーティストのDr. Dre、Rolling StonesのMick Jaggerらは皆、iChatテレビ会議ソフトウェアを使って、ライブ放送で支持を表明した。シンガーのSarah McLachlanは、イベント会場に登場していくつか歌を歌ったほか、自分のiPod利用法も披露した。
こうした大掛かりなマーケティングキャンペーンは、今後も必要だろう。複数の競合会社が、Appleと同じくらい制限の緩やかな契約を、各レコード会社と結ぼうとしている。Appleのデジタル楽曲ストアのWindowsバージョンは、Macintoshの世界ではなかったような相当激しい競争に見舞われることになりそうだ。
米Musicmatchと米BuyMusicはすでに、同様の音楽ダウンロードサービスを提供している。また新生Napsterも今月中にサービスを開始する見込みだ。ソニーや米RealNetworks、米Dell Computer、米Amazon.comなどの企業もみな、独自の音楽ストアを展開すると見られている。
実際に、Appleとライバル企業の間では、すでに舌戦が始まっている。
Apple以外のWindows向けサービスの大半は、Microsoft製のデジタル著作権保護ソフトがついた、Windows Media Audio(WMA)フォーマットで音楽を配信している。つまり、BuyMusic.comやMusicmatch、Napsterなどのライバル企業から購入した楽曲は、MicrosoftのWMAをサポートしている音楽再生プレーヤ--約40種類の携帯機器がWMAをサポートしている--のほか、主なMP3ソフトウェアのほとんどで再生できる。
一方、Appleから購入した楽曲は、Apple独自のコンテンツ保護技術「 FairPlay 」で保護されているため、iPodでしか再生できない。iPodは、今年7、8月に販売されたMP3プレーヤー全てのうち、31%を占めている。Appleのサービスで購入した楽曲は、古くからあるAppleのAVフォーマット、Quictimeをサポートしている全てのソフトウェアで再生できる。
Microsoftや他のハードウェアメーカーは、Appleのこうした戦略が、コンシューマーの選択肢を制限していると主張している。しかし、Apple以外のサービスが利用できる機器を選べば、Microsoft独自のオーディオソフトとデジタル権利管理(DRM)ソフトを、事実上の業界標準とすることにつながりかねない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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