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ネットのデマに踊らされないためには?

2011年4月12日 10時28分
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 総務省は4月6日、電気通信事業者関係団体に対し、東日本大震災に関するインターネット上の流言飛語、法令や公序良俗に反する情報について、自主的な削除などの措置を取るように要請しました。


 東日本大震災後、地震に関する不確かな情報、国民の不安をあおる流言飛語がインターネットを通じて流布している状況であるとして、政府のワーキングチームが、「被災地等における安全・安心の確保対策」を決定したことを受けたものです。


 また、この一方で、震災とは直接関係はないものの「iPad 2の発売日は4月25日」や「政府がどさくさに紛れてネット規制強化」といった流言が相次いでまことしやかに伝播されました。


 総務省の要請はネット業界にどのような影響を与えることになるでしょうか。また、パネリストの皆さんはネット上のデマに対してどのように接していますか。デマに踊らされないために必要なことは何でしょうか。


  • 楠正憲
    楠正憲さん (ブロガー・国際大学GLOCOM 客員研究員)
    今回の総務省による事業者への要請は「表現の自由にも配慮しつつ、「インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」や約款に基づき、適切な対応をおとりいただく」ことを依頼しているもので、従来のガイドラインや各社サービスの約款を超えた言論統制を企図したものではなく、必ずしも事業者に対して何かしら新たな義務を課す訳ではないので「直ちに表現の自由への侵害はない」と考えられます。

    東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への適切な対応に関する電気通信事業者関係団体に対する要請 (2011年4月6日)
    (リンク »)

    一方で政府として「インターネット上の地震等に関連する情報であって法令や公序良俗に反すると判断するものを自主的に削除する」ことを事業者に要請することは、従前のプロバイダー責任制限法の枠組みからは大きく踏み出したことも事実です。

    プロバイダー責任制限法の建付けでは、事業者はあくまで削除要請を適切に処理した場合に削除したことの民事責任を制限しているだけで、書き込みの監視や通報に基づかない情報の削除を求めてはいません。本来であれば違法情報の削除について速やかに法制化する旨、青少年インターネット利用環境整備法の附則で明記されたにも関わらず、この数年は棚さらしにされてきました。
    「インターネット上の流言飛語」を対象とする場合、特定サーバー管理者は書き込まれた内容に対して違法または公序良俗に反しているかだけではなく、流言飛語が事実に反するか否かの検証を要求されますが、政府が流言飛語であると否定した内容が実際にデマであるか否かは後にならないと分かりません。

    例えば震災から数日「福島第一はメルトダウンする」と書けば流言飛語扱いされましたが、実際には震災当日から政府内でも専門家の間でもメルトダウンの危機が認識されていたことが後から報道でも明らかになりました。

    「法令や公序良俗に反する」情報と「インターネット上の流言飛語」を混同した今回の要請は、特定サーバー管理者による自主的かつ過度の言論弾圧を誘発し、無理に推し進めても法的拘束力を持たない要請には従わないであろう海外ソーシャルメディアへの逃避を招き、結果としては規制の空洞化と情報格差の拡大を招くのではないでしょうか。

    ソーシャルメディア上で編集されていない多様な情報が飛び交い、個々の情報の確度を判断するために高度な専門知識を要求される今日「デマに踊らされない」ことは非常に難しいのが現実です。政府も当事者や新聞も、ブログやツイッターと同じように間違うこともあります。正しい情報や分析も流言飛語や公序良俗に反する表現も玉石混淆のまま、利害や力関係の編集を受けずに垂れ流されることが、ネットの真骨頂であり陥穽でもあります。玉石混淆の情報を受け止めつつ迅速に活用する上では、

    - まず情報源を確認すること
    - 背景を把握し批判的に相対化すること
    - 異なる意見も含めて多面的に収集すること
    - その情報について言及したメタ情報にも目を通すこと
    - 感情的に決めつけず正否の判断を信頼性に応じて留保すること
    - 自分の知識が限られており判断を間違う場合がある現実を受け入れること
    などの情報リテラシーが有益と考えられます。また、自分が情報を発信する場合には、
    - 情報発信に際し自分の立場や情報源を明示すること
    - 自分に対する異見や反論を尊重し周囲と共有すること
    - 過ちに気づいたら恥ずかしがらず速やかに訂正すること

    といった姿勢が有益と考えられます。つまり事実誤認を指摘してもらえる関係を周囲と構築し、裸の王様にならないことこそ、錯綜した書き込みの中から筋道を把握し、結果として事実誤認や流言飛語の伝播を抑止する上では有効ではないでしょうか。

    もちろん常に正確な情報を迅速に入手できることが望ましいのですが、政府やマスメディアでさえ限られた情報と専門知識で刻一刻と移り変わる状況を走りながら受け止めている中では、確実な情報ばかり求めていても時宜を得た情報を得られません。

    情報の非対称性と自分の限定合理性とを認識しつつ、政府や当事者から発信される一次情報、マスメディアからの報道と、ソーシャルメディア上の書き込みとをクロスチェックするのが確実です。不確かな情報を一律に流言飛語と退ける政府の姿勢は、むしろ危険な情報統制に繋がりかねないのではないでしょうか。
    2011-04-12 17:15:23
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