26年卒学生の就活動向と企業側の採用スケジュールのポイントは?

草深生馬(RECCOO CHRO)2024年03月17日 09時00分

 2026年卒業の学生たちの就活が徐々に本格化する今、学生たちの就活動向に変化は見られるのでしょうか?また、それに対して企業側が準備すべき採用スケジュールとそのポイントとは?前回に引き続き、Google人事部で新卒採用を担当していた草深生馬氏(くさぶか・いくま/現RECCOO COO兼CHRO)が、1000名を超える2025年卒学生を対象に行ったアンケートデータなどを元に解説します。

  1. 地域別で見ると、志望業界を定める時期は関東の学生が若干早い
  2. 志望企業を定める時期は、関東の学生が大きくリード
  3. 地域別に見られる志望業界の違い
  4. 早期層を採用ターゲットにする企業は、さらに早い準備が必要

地域別で見ると、志望業界を定める時期は関東の学生が若干早い

 前回は、学生たちの就活スケジュールを見る上で重要な「志望業界を定める時期」、「志望企業を定める時期」に関して「大学群別」「文理別」の2つのカテゴリーについて考察しました。今回は、3つ目の「地域別」についてデータを参考にしながら見ていきましょう。

 就活動向の地域差に関しては、都市圏の学生たちが早く動き始め、地方はそれに比べてゆっくりしていると以前からよく言われていました。はたして今でもその傾向が続いているかどうかを調べた結果が、以下の通りです。

<地域別・志望業界を定める時期>の表では、「関東」「関西」「その他」の3つの地域に分けてアンケート調査を行いました。

地域別・志望業界を定める時期
地域別・志望業界を定める時期

 この表から判断すると、志望業界を定める時期に関して、「地域別」ではそれほど有意な差は見られず、関東の学生たちの方が、若干早いという程度です。

 地域差が少なくなった理由の一つにオンライン化の影響が考えられます。情報の拡充、伝達速度に地域差がなくなり、そもそも説明会、面接など選考自体もオンライン化されたことが大きいでしょう。

 また、今まで、地方の学生たちは、首都圏に比べると動きが遅いと言われ続けてきたため、大学・学校やリクルーターなどから、もう少し早く動き出すようにアドバイスをされたりして、早期の就活を意識する学生たちも増えていると考えられます。事実、大学が主催する就活セミナーなども、開催スケジュールがかなり早期化してきているといった傾向もあります。

 この表を見る限りでは、志望業界を絞る段階では、全国規模で学生たちの足並みが揃って来ている、と捉えていいでしょう。

志望企業を定める時期は、関東の学生が大きくリード

 その一方で、志望企業を絞る段階になると、関東圏の学生が大きくリードしていることが、<地域別・志望企業を定める時期>を見るとわかります。

地域別・志望企業を定める時期
地域別・志望企業を定める時期

 その理由について、就活生たちは、業界に関しては一生懸命インターンや説明会に参加して研究を重ねて絞っていきます。ところが、いざ企業を選ぶ段階になると、覚悟が必要となり、簡単に「ここに決めよう」とは行きません。

 まずは、企業に関する具体的な情報が必要になりますが、そうなるとそもそも企業数が集中している関東圏の方が、意思決定に必要な情報の流通量が多く、入手しやすいと思われます。また、学生数も多いため、友人たちと就活情報を活発に交換する過程で、競争意識も強くなり、焦りのようなものを感じやすいのではないでしょうか。

 それから、関東出身あるいは関東の大学に在籍している学生たちは、関東の企業に絞ることに対してハードルがありません。一方、地方にいる学生が関東の企業を選ぶとなると、ハードルが少し高くなります。関東に限らず、都市圏にある企業に就職する時には、すでにそこに住んでいる学生以上に、意思決定のために考慮しなければならないことがあります。それで、結果的に志望企業を定める時期が遅くなるのではないか、と想像しています。

 以上、「大学群別」「文理別」「地域別」の3つのカテゴリーに分けて就活動向を考察すると、大まかな傾向として、偏差値上位校、理系、都市圏の学生たちは、業界、企業とも定める時期が早いと言えます。これらの学生は、就活の早期層と捉えることができ、前回に提示した<一般的な26卒学生の就活スケジュール>より少し前倒しで、就活のスケジュールを進めていくことが予想されます。

地域別に見られる志望業界の違い

 補足になりますが、地域別に見られる志望業界の違いにも触れたいと思います。<地域別・第一志望業界(上位15業界)>の表を見てください。

地域別・第一志望業界(上位15業界)
地域別・第一志望業界(上位15業界)

 簡単にまとめると、「関東」は、金融、商社、外資コンサル業界が人気です。一方、「関西」は、インフラ、食品メーカー、食品の順番で人気が高く、「その他」は、化学・素材系メーカー、機械・電機系メーカー、食品メーカーの順になっています。このように志望業界に関しては、地域別にかなり差があることがわかります。

 このような結果になった理由について考えられるのは、工場のような大規模施設が必要な企業が「関東」よりは「関西」や「その他」に多く、物理的な距離が近い分、親近感も湧くのだろうと想像されます。つまり、自分の住んでいるところに大きな企業があると、街ぐるみでその企業や関連会社との関わりが強くなり、親や親戚がそこで働いている確率も高いので、幼少期から親しみがあるというケースが想定されます。

 また、金融、商社、日系コンサルは関東/関西で大きな差がなく、人気が高いことがわかります。外資コンサルは企業そのものが東京に集中しているので、上記のような結果になっているのだと推測できます。

 志望業界に関しては、このような地域差があるので、企業側は自社のターゲットとなる学生たちとの接点を作る際の参考にしていただければと思います。

早期層を採用ターゲットにする企業は、さらに早い準備が必要

 さて、「志望業界を定める時期」「志望企業を定める時期」などを考慮しながら、学生たちの就活動向、スケジュールなどを把握したところで、次は企業はそれに合わせてどのように準備をしていくべきかを見ていきましょう。

 前回紹介した<一般的な26卒学生の就活スケジュール>に則ると、以下のような企業の採用スケジュールが想定されます。

一般的な26卒学生の就活スケジュール
一般的な26卒学生の就活スケジュール

 まず、就活生が大学3年生、大学院修士課程の1年生になるタイミングの3、4月には採用戦略を策定し、5、6月から始まる夏インターンに備えていく、というのが26年卒学生の新卒採用スケジュールのスタートとなるでしょう。

 そして夏インターンの後には、本選考に向けた採用広報やツールの制作などを準備し始めければなりません。そして、秋冬インターンでは、夏インターンの成果を踏まえた追加の認知獲得や母集団形成施策を展開します。そして、学部生が4年に、院生修士2年になる直前の3月から、いよいよ本エントリーを開始し、本格的な採用選考の実施に移っていきます。

 ただこれはあくまで一般的な採用スケジュールです。前回から今回にかけて学生をカテゴリー別に解説しましたが、その中で、偏差値上位校、理系学生、都市圏学生などは特に早期から動き出す、いわゆる早期層であるとご紹介しました。そういった学生層を採用ターゲットにする場合は、さらに早く準備をする必要があり、具体的には以下のようなスケジュールのポイントがあります。

26卒学生早期層の就活スケジュール
26卒学生早期層の就活スケジュール

 赤枠で強調されている通りですが、全体戦略策定から、最初に就活生たちと接点を持つ時期、選考及び内々定者決定が早期に実施されるべき要所になります。

 一番のポイントは、夏インターンより前に早期接点を持つべきだという点です。

 というのも、先出の調査結果の通り、上位校や理系の学生などは、夏インターンが始まる前の学部3年の6月に、約2割が志望業界を決めています。つまり、その時点で志望業界に当てはまらない企業は、夏インターンで接点を持とうにも、すでに見向きもされないという状況になっているのです。

 そのような事態を避けるには、学生が学部2年生の2、3月あたりから初期的な接点を持ち、そこで業界や企業に興味を抱いてもらい、そこから夏インターンにつなげるという段取り必要になってきます。具体的には、OB・OG訪問、リクルーターのアサイン、説明会の開催などの積極的な広報などがあげられます。

 このように、全体的な早期化のなかでも、特に早期に動きだす学生層に対応するスケジュールを考える場合、企業は何から手をつければよいのでしょうか。時期としては今すぐにでも動き出すべきですが、何から始めればいいのわからないといった企業に向けて、次回は、企業目線での戦略の立て方についてご説明します。

草深 生馬(くさぶか・いくま)

株式会社RECCOO CHRO

1988年長野県生まれ。2011年に国際基督教大学教養学部を卒業し、IBM Japanへ新卒で入社。人事部にて部門担当人事(HRBP)と新卒採用を経験。超巨大企業ならではのシステマチックな制度設計や運用、人財管理、そして新卒採用のいろはを学んだのち、より深く「組織を作る採用」に関わるべく、IBMに比べてまだ小規模だったGoogle Japanへ2014年に転職。採用企画チームへ参画し、国内新卒採用プログラムの責任者、MBA採用プログラムのアジア太平洋地域責任者などを務めるかたわら、Googleの人事制度について社内研究プロジェクトを発起し、クライアントへの人事制度のアドバイザリーやコンサルテーションを実施。

2020年5月より、株式会社RECCOOのCHROに着任。「才能を適所に届ける採用」と「リーダーの育成」を通して日本を強くすることをミッションに掲げる。現在は、スタートアップ企業の組織立ち上げフェーズやや、事業目標の達成を目的とした「採用・組織戦略」について、アドバイザリーやコンサルテーションを提供している。

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