年々、採用スケジュールの早期化が進んでいると言われるなか、いよいよこの春から夏にかけて、2026年卒業の学生たちの就活が動き始めます。26年卒学生たちの就活スケジュールに新しい変化は見られるのでしょうか?
Google人事部で新卒採用を担当していた草深生馬氏(くさぶか・いくま/現RECCOO CHRO)が、1000名を超える2025年卒学生を対象に行ったアンケートデータなどを元に、26年卒学生の就活スケジュールや動向を考察します。
今回は、26年の春に卒業する学生、つまり今年の4月に大学3年生になる学生たちを「大学群別」「文理別」「地域別」などのカテゴリーに分けて、それぞれの就職活動のスケジュールや動向について解説します。
就職活動の早期化について、いろいろなところで取り上げられていますが、まずは、25年卒学生を対象に行ったアンケートデータなどを参考にして、26年卒学生の就活スケジュールを想定してみました。<一般的な26卒学生の就活スケジュール>の表を見てください。
学生たちは、学部の3年生(院生の場合は修士課程1年生)になった頃から就活を意識し始めます。まずは、自己分析を行い、業界や職種の研究、さらに企業の研究をしながら、夏のインターンに臨みます。
その後、秋冬のインターンに参加しながら、志望先を見定めます。そして3年生(修士1年生)の3月、つまり4年生(修士2年生)になる直前に、いよいよ本エントリーを開始し本格的な選考へと進んでいきます。
もちろん、中には学部3年生の12月頃、つまり、年が明ける前に、本エントリーからオファーを獲得する学生もいますし、早期に選考を実施する企業も増えてきています。ただ、日本国内の大手企業を始めとして、多くの企業にとっては、上記のようなスケジュールが過去数年は続いており、26卒においても大きな変化はない模様です。
ただ、お伝えするポイントがあるとすれば、「インターンは就活生全員が参加する時代になった」ということでしょうか。
25年卒学生に対するアンケート調査では、夏インターン、秋冬インターンに関して、9割を超える学生が「すでに参加している」、あるいは「参加予定」と回答しています。どのような学生を採用のターゲットにしているのであれ、企業にとって、夏・秋・冬いずれかのインターンの実施は必須と言えるでしょう。インターンが採用活動において重要な位置付けになっていることは間違いなく、なかでも特に夏インターンにおいて、学生との接触機会を確実に設ける活動は外せません。
次に、就活動向を「大学群別」「文理別」「地域別」の3つのカテゴリーに分けて、就活スケジュールの中で、学生たちが志望業界や志望企業を定める時期について見ていきましょう。
以下に挙げるデータは、弊社が提携するキャリア支援NPO法人「エンカレッジ」を利用する25年卒学生1,027名に対し、昨年の10月に実施したアンケートの調査結果です。
まずご紹介するのは「大学群別」のカテゴリーですが、これは偏差値帯によって学群を「旧帝大・早慶上智」「有名国立・MARCH」「その他」の3つに分けて比較しています。近年では所属する大学によって学生を区別する「学歴フィルター」への批判が高まっていますが、今回はあくまで所属大学と就活開始時期の相関関係を指摘するという観点で、便宜上偏差値別の分類をしてさせていただきます。
<大学分別・志望業界を定める時期>の表を見てみると、志望業界については、偏差値上位校の学生ほど志望業界を定める時期が早いという特徴的な傾向があります。
「旧帝大・早慶上智」の学生たちは、3年生の6月までに2割近くが、そして夏インターンが終わる9月までには6割近くが志望業界を定めていることがわかります。夏インターンを終える頃には、過半数の学生がどの業界に就職するのかを決めているということです。
志望業界に続いて志望企業についてはどうでしょうか。<大学郡別・志望企業を定める時期>の表からわかるように、こちらも同様の傾向が見られます。
「旧帝大・早慶上智」の学生を他の学生群と比べると、夏インターン後の9月から11月の時期に、志望企業まで決めている学生の割合が高いことがわかります。
このように、学生たちの就活スケジュールを学群別に見た場合、偏差値上位校の学生ほど、業界・企業ともに早い時期に絞っていく傾向があります。
次に「文理別」カテゴリーですが、この調査では、理系を院生と学部生に分け、文系は一括りにして、「理系院生」「理系学部生」「文系」の3つで比較しています。<文理別・志望業界を定める時期>の表を見てください。
志望業界に関しては、「理系院生」「理系学部生」ともに「文系」に比べると絞り込みの時期を早く定める傾向があります。「文系」学生は、9月から11月にかけて急に伸びてきて、「理系学部生」に並ぶ時期もありますが、最初から最後まで「理系院生」のリードは変わりません。
理由として考えられるのは、おそらく、「理系」の学生の方が自分の専攻領域と職業を直結して考えるという傾向です。その結果、特に業界という大きな括りであれば、早く絞ることができるのでしょう。
続いて志望企業ですが、<文理別・志望企業を定める時期>の表を見ると、「理系院生」が突出して早い様子がわかります。
ただ、志望業界の調査ほどには、理系と文系の間に大きな開きがなく、「理系学部生」と「文系」を比較すると、11月以降は「文系」が逆転しているほどです。
志望企業を定める時期は、業界を定める時期に比べると理系と文系の間にそれほど強烈な差は出ず、唯一「理系院生」に関しては、企業の選定時期が突出して早いという結果になりました。
次回は、もう一つのカテゴリー「地域別」について解説します。
草深 生馬(くさぶか・いくま)
株式会社RECCOO CHRO
1988年長野県生まれ。2011年に国際基督教大学教養学部を卒業し、IBM Japanへ新卒で入社。人事部にて部門担当人事(HRBP)と新卒採用を経験。超巨大企業ならではのシステマチックな制度設計や運用、人財管理、そして新卒採用のいろはを学んだのち、より深く「組織を作る採用」に関わるべく、IBMに比べてまだ小規模だったGoogle Japanへ2014年に転職。採用企画チームへ参画し、国内新卒採用プログラムの責任者、MBA採用プログラムのアジア太平洋地域責任者などを務めるかたわら、Googleの人事制度について社内研究プロジェクトを発起し、クライアントへの人事制度のアドバイザリーやコンサルテーションを実施。
2020年5月より、株式会社RECCOOのCHROに着任。「才能を適所に届ける採用」と「リーダーの育成」を通して日本を強くすることをミッションに掲げる。現在は、スタートアップ企業の組織立ち上げフェーズやや、事業目標の達成を目的とした「採用・組織戦略」について、アドバイザリーやコンサルテーションを提供している。
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