「25年卒の学生から就活が変わる」と言われていますが、特にインターンシップの定義変更が大きく関わっているようです。
インターンシップはどのように変わり、それによって、学生たちの就活動向はどのような影響を受けているのでしょうか? Google人事部で新卒採用を担当していた草深生馬氏(くさぶか・いくま/現RECCOO CHRO)が、1000名超の25年卒学生を対象に行ったアンケートデータなどを元に解説します。
25年卒学生の「就活サマー期」と呼ばれる今年の夏期からインターンシップのあり方が大きく変わりました。今までのインターンシップは、あくまで学生が会社について情報を得たり、就業体験をしたりするための機会であって、就職活動の一環ではない、と定義されていました。そのため企業側は、そこで取得した学生の情報を採用活動に活かすことができなかったのです。
ところが、昨年、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の合意による「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(3省合意)が改正されました。その結果、インターンシップの定義が変更となり、「インターンシップ等の学生のキャリア形成支援に係る取組」として、4タイプに類型化されることになりました。
簡単に説明すると、就業体験を必須とせず、個社・業界の情報提供等や教育が目的である、<タイプ1:オープン・カンパニー>と<タイプ2:キャリア教育>は、インターンシップの名称を使わなくなります。次に、就業体験が必須で、 自身の能力の見極めや評価材料の取得が目的の<タイプ3 :汎用的能力・専門活用型インターンシップ>と<タイプ4:高度専門型インターンシップ(試行)>は、インターンシップの名称を用い、企業は取得した学生情報を採用や選考に活用することが認められたのです。
この改正は、今年25年卒学生が参加するインターンシップから適用されています。つまり、彼らは、今年のサマー期から採用に直結することが公認されたインターシップに参加できるようになったのです。
それによって学生には、インターンシップがより具体的に就職活動に関連するものになりました。企業側も、採用・選考に直接繋げる機会としてインターンシップを展開できるようになります。したがって、以前はその開催にあまり積極的ではなかった大手企業をはじめ、多くの企業がインターンシップ市場に参入してくることが予想されます。
以下、今年の夏期インターンシップについて、25年卒学生1078名に行ったアンケート調査を元に、彼らの就活動向の特徴をまとめてみました。
インターンシップには、参加するための事前選考があるものとないものがありますが、アンケート結果からは、事前選考があるインターンシップの人気が高いことがわかります。
<夏インターンに参加する予定の社数を教えてください>の表を見ると、25年卒学生の事前選考ありの夏インターンへの平均参加社数が、24年卒学生と比べて平均2.2社も増加しています。事前選考なしの方はむしろ減っていることも考慮すれば、この2.2という数字は、かなり大きな差だと捉えられます。
次に<夏インターンへの参加理由を教えてください>のグラフを見てみましょう。参加理由として、「本選考の予行練習をしたい」と回答した学生が60.9%に上っています。
実質的に採用直結型インターンシップが解禁されたので、会社の情報収集をしながら、本選考の面接の予行練習を目的として、事前選考ありの夏のインターンシップに積極的に参加するのでしょう。就活のための経験を逆算的に積んでいくために、夏インターンを上手に利用する学生たちの意図が伺われます。一方、企業側も「事前選考あり」と謳うことで、学生の興味を引き、本選考の準備をしたい学生向けのコンテンツを用意することができます。
また、学生へのインタビューを通して「事前選考があること=難度の高いインターンシップ」と捉えていることもわかりました。したがって、まずチャレンジすることに意味があり、合格すればもちろん実績に。たとえ落ちたとしても、面接の様子や、どんな質疑がなされるのかといったノウハウが身につく、と前向きに捉えているようです。
ただ、なかには、インターンシップの選考に落ちたという情報が企業側に残ることを恐れて、本命企業の事前選考ありのインターンシップには、あえて応募しないという声も聞かれました。
いずれにしても、インターンシップに参加しないとオファーが受けられないという企業はほとんどありませんし、参加したからといってオファーを約束されるわけでもありません。ただ、学生側は、事前選考ありのインターンシップには、本選考につながる「特別ルート」を期待しているようです。
<夏インターン後のフォローとしてどのような内容を望みますか?>のグラフにそれが表れており、「内定につながる特別選考への参加」と答えた学生は85%近くに上ります。
インターンシップが採用に直結することが公式に認められた現在、参加後に内定につながる特別なチャンスやフォローアップを期待するのは当然かもしれません。
夏のインターンシップが変化すれば、その後に続く秋冬のインターンシップのあり方、捉え方も今までとは変わってくるでしょう。
次回は、今年の秋冬のインターンシップについて考察します。
草深 生馬(くさぶか・いくま)
株式会社RECCOO CHRO
1988年長野県生まれ。2011年に国際基督教大学教養学部を卒業し、IBM Japanへ新卒で入社。人事部にて部門担当人事(HRBP)と新卒採用を経験。超巨大企業ならではのシステマチックな制度設計や運用、人財管理、そして新卒採用のいろはを学んだのち、より深く「組織を作る採用」に関わるべく、IBMに比べてまだ小規模だったGoogle Japanへ2014年に転職。採用企画チームへ参画し、国内新卒採用プログラムの責任者、MBA採用プログラムのアジア太平洋地域責任者などを務めるかたわら、Googleの人事制度について社内研究プロジェクトを発起し、クライアントへの人事制度のアドバイザリーやコンサルテーションを実施。
2020年5月より、株式会社RECCOOのCHROに着任。「才能を適所に届ける採用」と「リーダーの育成」を通して日本を強くすることをミッションに掲げる。現在は、スタートアップ企業の組織立ち上げフェーズやや、事業目標の達成を目的とした「採用・組織戦略」について、アドバイザリーやコンサルテーションを提供している。
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