日本リスキリングコンソーシアムは10月31日、経済同友会と戦略的パートナーシップを締結したと発表。日本のリスキリングにおける諸課題の解決を目指し、革新的なリスキリング推進策の創出を図るとともに、2024年内には年間20万人のリスキリング支援を目指す。
発表会では、グーグル 代表の奥山真司氏ならびにグーグル バイスプレジデント アジア太平洋・日本地区 マーケティングの岩村水樹氏が日本リスキリングコンソーシアムについてやこれまでの実績、パートナーシップにおける今後について説明。このコンソーシアムはグーグルが主幹事として、国や地方自治体、企業など200以上の参画団体で構成している。2022年6月に発足、参加団体による1200以上のリスキリングプログラムや就労支援サービスを展開し、登録者数は8万5000人以上(2023年10月末時点)としている。
このパートナーシップを通じて、まず先進的なリスキリングに取り組む企業の実践的なトレーニングについて、一般公開を推進。個人の学び直しやキャリアアップに役立てるのはもとより、人材や組織、カルチャーの変革を目指す経営者も受講できる。
また、女性や地方に向けたデジタルリスキリング支援や情報提供についても推進。日本リスキリングコンソーシアムでは、これまでも協力団体とともに「女性支援プログラム」や「Work From Anywhere」に関する講座を提供している。今回のパートナーシップを通じて、女性や地方のデジタルリスキリング支援を重点テーマに、政府の動きと連動して、女性や地方で暮らす人々がいきいきと働くことのできる環境の充実を目指す。
岩村氏によれば、コンソーシアム登録者の属性として、年代は25~44歳が6割以上、エリアは首都圏在住が半数強、就職支援の希望者が約6割としており、いわゆる働き盛り世代でキャリアアップを考えている、東京近郊で働く人が受講者層の中心としている。
また、発足時からリスキリングパートナー、ジョブマッチングパートナーも、ともに増加。プログラムについても、直近で関心が大きく高まっているAIやサイバーセキュリティに関する内容のものを拡充しているという。初級から上級までの多様なプログラムを提供するほか、個人単位だけでなく、企業や団体単位でも参加できる。企業における社員のリスキリングの一括した支援、スタートアップパートナー枠を設置してスタートアップへの就職希望者とのマッチング支援なども実施している。こうした活動の成果として、受講者の6割以上がキャリアに関するアクションを起こしたという、行動変容につながっていると説明する。
現状として、まず人気プログラムについて「データ分析」「マーケティング」「AI」などで、社会の変化を後押しするスキルへの需要の高さがうかがえること。かがえるという。一方、課題としてエリア別で東京圏に偏っており、登録者の女性割合が3割台にとどまっていること、トレーニング実行後に成果を得られた割合も、男性が約7割に対して、女性は約5割にとどまっていると、男女差があることを指摘する。また、人材や労働市場における流動性にも課題があり、日本は他国に比べて好条件での転職が難しいことも加えた。
こうした状況を背景に、年間20万人のリスキリング支援を目指すという目標を掲げるうえで、これまで得られた知見にもとづきつつ、プログラムを発展させていくことが必要不可欠だとして、経済同友会とのパートナーシップは、そのための大きな一歩としている。
経済同友会 代表幹事の新浪剛史氏は、成長と共助が両立した「共助資本主義」の実現を目指しており、日本の成長においては、全世代の人材の活性化が重要であると説く。企業における活力の源泉は人であるとしつつも、バブル崩壊以降、人的資本の投資を大幅に減らしてきた状況が、イノベーション力を落とした今につながってしまっていることを指摘。企業として収益を得ながら再投資を行い、好循環につなげていくことの重要性を語った。
リスキリングの課題については、個人の経済的負担が大きいうえ、昇進や賃金アップなど、個人のメリットが享受できない状況があるとし、日本リスキリングコンソーシアムとのパートナーシップを通じて、企業と個人の成長をさらに加速していくとともに、企業の人材マネジメントを変革し、キャリアデザインやリスキリングを通じた個人の学びや挑戦を後押しし、継続的な賃金上昇につなげていく仕組み作りをしていきたいとした。
自民党デジタル社会推進本部 幹事長で衆議院議員の牧島かれん氏も登壇。日本における労働現場で人手不足が進み、一人一人にもう1度学び直してもらう必要があるという、切実な状況を指摘。また人生100年時代と呼ばれる高齢社会というなかで、ポジティブな面もありつつ、高校や大学までの約20年で学んだ知識だけで、その先50年を生きていくのには無理があると見解を示し、グローバル人材も少ないという状況でもあると付け加える。日本はアナログ世界一としてこれまでやってきたが、そこから脱却し、デジタル先進国を目指し続ける、そして頂点を目指すという国の意思を、共有し、伝えたいと語った。
また内閣総理大臣の岸田文雄氏から寄せられたビデオメッセージも上映。人の底力を高めるリスキリングは、経済成長の鍵であるとし、高まっているリスキリングのうねりをさらに大きなものとするため、三位一体となって能力向上支援を含めた労働市場改革へと集中的に取り組むと語っていた。
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