「AIが役に立たないという意味ではない。ただ、AIは万能ではなく、世界を変える唯一の聖杯的な解決策になるわけでもないということだ。われわれは実際にニューロフィードバックが好きで、真にスマートなUI、真にスマートなデザインを好む。そのおかげで、1つの側面が最適化される。テクノロジーを使ってコンピューターがうまく人に教えるようになることが、今後われわれが経験する、もう1つのクールな進化となる」、とRussomanno氏は話す。
ここで筆者が思い出すのは、スマートウォッチ技術のたどってきた経緯だ。光学的な心拍センサーが新しいデータフローを切り開き、そこから時を経てスマートウォッチの新しいヘルス機能が生まれた。Fitbitは、同社のスマートウォッチ「Sense」にいくつも新しいセンサーを搭載し、それにはEDAストレスセンサーも含まれていた。OpenBCIのGaleaや同様の試みは、われわれが見聞きするもの、われわれの手が触れるものとのインターフェースとなる未来のウェアラブルセンサーへの新しい門戸を開くのだろうか。
Russomanno氏はそうなると確信している。AppleのVision Proも含め、高性能になったスタンドアロンのVRおよびARヘッドセットの登場が、新しい入力の形と周辺機器につながる道だと同氏は考えている。
Russomanno氏は、デモの何カ月後かに行ったビデオチャットで、これから登場する最新のARおよびMRデバイスに言及しながら、こう説明した。「このようなヘッドセットが世に出て、双方向のアプリケーションが開発されるようになるまで、確かなことは分からない。ARヘッドセットのクールな点は、局所的な環境に関して知りたいと思うどんなことについてでも、外部センサーをすべて備えていることだ。そうなると、われわれがするのは、内部の世界のこととなる。このような2種類のデータセットを合わせたとき、どんなことが可能になるのか、まだ分からない」
同氏はニューロフィードバックをAIと対比して語ったが、筆者は双方をうまくかみ合わせることを考えている。AIは、その魔法を発揮するためにデータセットを必要とする。これからのセンサー技術システムもその点は同じだ。ニューロ技術が進化すれば、それとともにAIが進化する可能性も同時に発展するのである。
OpenBCIのGaleaは、実際にはVRおよびARヘッドセットだが、Varjoのハードウェアとのインターフェースはその全体的なシステムの一部でしかない。センサーアレイは、単独でも使用できる。将来のウェアラブルが、最終的には身に着けた別のウェアラブルと相互作用するという世界を考えると、さらに期待がふくらむ。日常的な対話操作が、今以上に発達したセンサーによって強化されるかもしれない、そんな世界だ。そうなるのはだいぶ先のことだろうが、そのような未来の兆しが、OpenBCIがGaleaに搭載したセンサーの一部に既に現れているように思われる。
今のところは、VR/AR技術とウェアラブルの視覚技術が持つ価値を人々に納得させるだけでも手いっぱいだ。だが、最終的に空間コンピューティングや現実世界とのインターフェースとなる形を改良していくことも、VR/ARが今よりはるかに有意義なものへと、そして、場合によっては不安を感じさせるものへと、どう進化しうるかという答えの一部になるのかもしれない。パーソナルテクノロジーはもう既に、人間の感覚や脳との深い関係を築きつつあるように感じられる。だが、筆者が目にしたものを考えると、われわれはまだ出発点にすら立っていないとも思わされる。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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