OpenBCIのセンサーアレイは、複数の可能性を同時に追求できるだろう。特定の目標1つでは終わらない。このシステムのセンサーは、研究を実現するほかに、コンピューターとの対話操作に関する門戸も開きそうだ。先頃、OpenBCIは脊髄性筋萎縮症患者でハッカーであるChristian Beyerlein氏と協力した。同氏はOpenBCIのセンサーアレイを使って、顔の筋肉の電気的信号でドローンを制御したのである。そのプレゼンテーションは「TED Talks」で紹介されており、ブレインコンピューターインターフェースがアクセシビリティーの新しい扉を、そして仮想世界と現実世界でテクノロジーを制御する方法に関する新しい可能性を切り開くことを示すものだった。
筆者が体験したデモには、「Cat Runner」というEMGベースのコントロールゲームもあった。顔の筋肉のわずかな動きでアニメ化されたキャラクターを行ったり来たりさせると、それがGaleaのヘッドセットにあるEMGセンサーによって認識される。Metaがニューラル入力リストバンド技術のテストと実演に使っていたのと同じゲームで、筆者はこれを2022年の秋に、MetaのReality Labs Reasearch本部があるレッドモンドで目撃した。ただし、Metaが目指しているのは手首で動きを感知することだが、OpenBCIのRussomanno氏は頭部で使うことに、より大きな可能性を見いだしている。頭部なら、カメラを利用したハンドトラッキングの既存の取り組みにセンサーが干渉しないからだ。
EMGの技術は、筋肉が全く動いていないように思われるほど微細な電気的信号を感知する目的で使われている。だが、センサー、アルゴリズム、人間による入力という非常に複雑な3つの関係をうまく処理するには、時間がかかるだろう。OpenBCIの何種類ものセンサーで提供されるデータの量は膨大であり、それが研究の今後の方向性を示す可能性がある。つまり、新しいインターフェースだ。VRとARの使用が脳や注意力に及ぼす影響に関するフィードバックも得られるかもしれない。これまでにも、VRヘッドセット上のセンサーを使って認知プロセスを研究する試みは既にある。例えばHPの「Omnicept」がそうで、これには心拍センサーも搭載されている。あるいは、アイトラッキングに対応するヘッドセットのほとんども同じだ。
EEGセンサーに関する別のデモでは、瞑想的な「共感覚の部屋」が作られ、筆者のさまざまな脳波の状態が環境光の色として表現された。筆者の脳波によって、目に見える色は変わるようだった。なんらかの方法で神経を集中させたら色を変えられるかどうか試してみた。うまくいったかもしれない。フィードバックは、OpenBCIのセンサーの多くにとって重要な要素であり、最終的には、それを用いてどのように自身の神経インパルスでさまざまなものを制御する方法を訓練し、改良できるのかを見つける鍵となる。
Beyerlein氏は、ドローンを制御するとき、EMGを使って自身の脳と身体機能を拡張していることになる。Russomanno氏はそれを、ニューロフィードバックが私たちのコンピューターとの対話操作を変える兆候であり、人工知能(AI)がもたらす変化と同じ程度と捉えている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス