2007年に初代の「iPhone」が登場したとき、やがてそれが毎日欠かさず携帯されるデバイスの基盤になると予想できた人はほとんどいなかった。米国時間6月5日から、Appleの「Worldwide Developers Conference」(WWDC)が開催される。その日が近づいた今、同社がかつてと同じようなインパクトを再び作り出せるかどうかに、全世界の注目が集まっている。ほぼ10年ぶりとなる全く新しい製品として、ヘッドマウント型コンピューターの発表があるとみられているためだ。
iPhoneは、世界初のスマートフォンではなかったし、ステータスシンボルとして文化的な意義を持つようになった世界初のモバイルデバイスでもなかった。それでも、iPhoneが絶妙なタイミングで登場したことは確かであり、おそらく、あれほど完璧なタイミングでテクノロジー製品が発表されたことは、それ以来なかっただろう。そこまでの瞬間を再び作り出すというのは、Appleにとってさえ、至難の業だ。
テクノロジー業界は、2007年と比べると大きく進化しており、私たちとテクノロジーの関係も同様に変わってきている。iPhoneや「BlackBerry」といったデバイスは、私たちが情報にアクセスし、コミュニケーションを交わす方法を大きく変革した。それも、常時インターネット接続という考え方が比較的まだ新しかった時代にである。
だが、それ以降に登場してヒットした新しいガジェット(スマートウォッチ、ワイヤレスイヤホンなど)が当初便利に感じられたのは、それらが私たちをスマートフォンから自由にし、そこに届く山のような量の通知をうまく管理できるようにしたからだった。「Apple Watch」が、健康およびウェルネスのデバイスとして方向性を確立するのに何年間か必要だったように、Appleのヘッドセットが独自の存在意義を見いだすまでにも、同じくらいの時間がかかるのではないかと筆者は考えている。
スマートフォンであろうとヘッドセットであろうと、全く新しい製品の登場が16年前のときと同じように感じられることはないし、同じように感じられるべきでもないだろう。
iPhoneが登場したのは、個人向けテクノロジーが形成されつつある時期だった。インターネットが私たちの生活になくてはならないものになるにつれて、インターネットを常に手元で使えることも不可欠になった。
「iPod」やBlackBerry端末をはじめとするパーソナルデジタルアシスタント(PDA)が、移動中でもネットに接続し続ける手段を実現したのは、自宅外でも音楽鑑賞やメール送信、カレンダー管理などが必要だと人々が認識するようになった時期だった。2007年はじめにAssociated Pressが報じたGartnerのデータによると、BlackBerryや「Palm」といったブランドの携帯端末の出荷台数は2006年に18.4%の伸びを記録しており、メールなどの通信に関するモバイルアクセスの需要がまさに浮き彫りになっていた。
そんな折も折、2007年にiPhoneが登場し、あらゆることを変えたのである。故Steve Jobs氏が、携帯電話とiPodとインターネット通信端末を1つにしたデバイスだ、とiPhoneを紹介したことはよく知られている。iPhoneがあれほどまでのインパクトを持ったのは、その3つがすでに人々の生活必需品になっていたからであり、それは携帯電話、iPod、家庭用コンピューターがそれぞれ成功していたことからも明らかだった。
米国勢調査局のデータを取り上げた2001年のThe New York Timesの報道によると、2000年には、米国の世帯のうち51%がコンピューターを1台以上保有しており、40%以上がインターネットに接続していたという。2006年のInfoWorldの記事では、Cellular Telecommunications & Internet Associationのデータを引用しながら、2005年の1年間に携帯電話ユーザー数が新たに2570万人という記録的な増加を見せたと報じている。また、市場調査会社IDCの2002年のレポートによると、2000年代はじめにはMP3プレーヤーの売り上げが急成長していたという。
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