誰もが予想していたことが現実になった。報道陣やアナリスト、業界関係者、ファンの間では、Appleが携帯電話を作るのではないか、との憶測が流れていた。2007年1月の寒い朝、サンフランシスコで開催された「Macworld Expo」のステージにSteve Jobs氏が登場する1年近く前からである。
「来てくれてありがとう」。トレードマークであるLevi'sのジーンズと黒いタートルネックを着たJobs氏は、そう言った。「今日は一緒に歴史を作ることになる」。Jobs氏は謙虚なタイプではなかったが、この発言は真実になった。
何カ月も前からうわさになっていたにもかかわらず、当時Appleの最高経営責任者(CEO)だったJobs氏がついに「iPhone」を発表した際は、世界が驚いた。携帯電話市場への参入は、同社にとって重大なリスクを伴う動きだった。
「私は2年半前からこの日を楽しみにしてきた」。4000人の観衆に向けてJobs氏が語る。「時折、あらゆることを変えてしまう革新的な製品が登場することがある。(中略)キャリアの中で、そうした製品に1つでも関わることができれば、非常に幸運だ。Appleはとても大きな幸運に恵まれている。そうした製品をいくつか世界に提供してきたからだ」
「われわれは1984年、『Macintosh』を発表した。MacintoshはAppleだけでなく、コンピューター業界全体を変えた」
「2001年には、初代『iPod』を発表した。iPodは、音楽の聴き方だけでなく、音楽業界全体を変えた。われわれは今日、これに匹敵する3つの革命的な製品を発表する」
「1つ目は、タッチ操作をサポートするワイドスクリーンのiPodだ」。Jobs氏が、歓声を上げる観衆に向かって続ける。当時Apple担当記者としてBloomberg Newsで働いていた筆者は、会場にある数少ないコンセントの近くにの席に座っており、Jobs氏の発言を83文字にまとめて、すべて大文字の見出しで、大急ぎで送信した。
「2つ目は革命的な携帯電話で、3つ目は画期的なインターネット通信デバイスだ。つまり、タッチ操作をサポートするワイドスクリーンのiPod、革命的な携帯電話、そして、画期的なインターネット通信デバイスという3つの要素がある」
「iPodと携帯電話、インターネット通信デバイス。iPodとPhone(携帯電話)。お分かり頂けるだろうか」。Jobs氏は歓声を上げる観衆に尋ねる。
「これらは別々のデバイスではない。1つのデバイスだ。そして、われわれはそれをiPhoneと呼ぶことにした」
「Appleは今日、携帯電話を作り変える。(中略)われわれが作りたいのは、これまでのどんなモバイルデバイスよりもはるかにスマートで、非常に使いやすい、飛躍的な進化を遂げた製品だ。」
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