Deloitteによると、スマートフォンは世界で最も人気のある家電製品であり、2022年に利用されているスマートフォンは約45億台に上るという。その一方で、スマートフォンメーカーは毎年、既存製品の新モデルをリリースし続けており、消費者も次から次へと新しい機種を購入している。
したがって、これらすべてのスマートフォンが地球の環境に及ぼしている影響について考えるのは、自然なことだ。あなたのポケットに入っているデバイスは、地球全体の温室効果ガス排出量にどの程度影響を及ぼしているのだろうか。そのデバイスは、あなたが所有する前と後で、環境にどの程度のダメージを与える可能性があるのだろうか。
Deloitteのテクノロジー・メディア・通信(TMT)部門は、同部門がまとめた包括的なレポート「TMT Predictions 2022」の中で、これら約45億台のスマートフォンによって、1億4600万トンの二酸化炭素(CO2)または二酸化炭素換算(CO2e)が排出されると予測している。しかも、スマートフォンの内部部品には有毒金属が使用されている場合もあり、安全に廃棄するのが難しい。
しかし、1台のスマートフォンの環境フットプリントを追跡するのは、容易ではない。スマートフォンの製造には多種多様な要素が関わっているので、自分の持っている機種がどれだけ「環境に優しい」のかを判断するのは難しい。
ただし、明白なことが1つある。それは、新しいスマートフォンの製造は、スマートフォンを実際に使用することよりもはるかに大きな影響を環境に及ぼすということだ。したがって、自身が環境にもたらす影響について懸念している消費者が講じることのできる最善策は、新しい機種の購入を可能な限り控えることだ。
TMTでグローバルリサーチ責任者を務めるPaul Lee氏は、「製造過程には、エネルギーを大量に消費する工程がたくさんある」と話す。「そのため、スマートフォンが梱包(こんぽう)されて消費者の手元に届くころには、そのデバイスのライフサイクルにおける総排出量の大部分はすでに排出されている」
Deloitteによると、2022年にスマートフォンから排出された温室効果ガスの大部分(83%)は、2022年に製造された14億台によるものだという。これには、スマートフォンの製造と出荷、初年度の使用に起因する排出が含まれる。
新品のスマートフォンを1年間使用したときに排出される温室効果ガスの量は平均85kgだが、実際の使用による排出量がスマートフォンの総排出量に占める割合はわずか5%だ。排出量のほとんどは、原材料の採掘とそのほかの製造過程に起因している。
「消費者が手にするのは、非常に滑らかで光沢のある製品だが、その前の工程では、原材料を抽出する作業がかなりある」(Lee氏)
電子機器に必要な原材料の中は、現在紛争中の国や地域で産出されるものもあるため、その抽出に関連する課題やリスクが増大している。これには、「大量に必要なわけではないが、欠かすことのできない部品」が含まれる、とLee氏は語った。「それが摩擦を生み出している」
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス