その後、厳重に管理された環境で、原材料の精製と部品の組み立てが行われる。例えば、半導体製造工場の運用コストのうち、最大30%は一定の温度と湿度を維持するのに必要なエネルギーに起因している。半導体工場は、主要なエネルギー源のすぐ近くに建設する必要があり、また、大きな水源の近くにあることが多い。製造過程で大量の水を使用するからだ。
この時点までに、スマートフォンの部品は、原材料の調達を担当する事業者や、スマートフォンのさまざまな部品を製造する多数のメーカーなど、多くの手をすでに通過している。消費者はもちろん、スマートフォンメーカーにとっても、各デバイスのこの時点までの二酸化炭素排出量と環境への影響を追跡するのは、困難な場合がある。
DeloitteのTMTでインサイトマネージャーを務めるBen Stanton氏は米ZDNETに対し、「スマートフォンのブランドにとって、そのデバイスの製造過程で発生する排出量を実際に把握するのは、極めて難しいことだ」と語った。「メーカーはサプライチェーン全体を完全には把握していない可能性もある。製造において中心的な役割を果たす企業でさえ、全容を把握するのに苦労しているのなら、消費者がそれらすべてを本当に理解するのは、この上なく困難だ」
スマートフォンメーカーの中で、Appleは自社のデバイスについて、「最も環境に優しい」ものの1つだと主張している。「iPhone 13 Pro」の製品環境報告書によると、同機種は製造からリサイクルまでのライフサイクル全体で、69kgの二酸化炭素を排出するという。平均的なスマートフォンの初年度の排出量は85kgなので、iPhone 13 Proは顕著に優れている。
Appleはその規模と価値から、サプライヤーに対してより大きな影響力を持っている。それを考慮すると、同社が比較的「環境に優しい」スマートフォンを誇示できるのは、意外なことではない。とはいえ、「iPhone」の「最も環境に優しい」側面は、率直に言えば、寿命の長さなのかもしれない。iPhoneのOSの最新バージョンである「iOS 16」は、2017年後半にリリースされた「iPhone 8」以降のモデルをサポートしている。つまり、iPhone 8のユーザーは、Appleの最新のセキュリティアップデートにより保護されるため、6年近く前に購入したデバイスでも使い続けられるというわけだ。
サムスンは2022年、一部の「Galaxy」デバイスを対象に、最大5年間のセキュリティアップデートの提供を開始した。ほかのメーカーは2年間のセキュリティアップデートしか提供していない。
スマートフォンの一般的な寿命が2~5年であることを考慮すると、平均的なスマートフォンの実際の使用期間における平均排出量はわずか8kgにすぎない、とDeloitteは試算している。
排出量に関して言えば、「スマートフォンの実際の使用が及ぼす影響は、本当に微々たるものだ」とLee氏は指摘している。
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