世界最大規模のテクノロジー見本市「CES」は長年、テクノロジーの未来を映し出す「窓」の役割を果たしてきた。しかし2022年のCESは、この混沌とした予測不可能な世界の縮図の様相を呈していた。
開幕の数週間前になって、多数の企業が新型コロナウイルスの懸念を理由にラスベガスでの出展を取りやめ、オンラインのみの参加に切り替えた。
ではCESが失敗に終わったかというと、そうではない。サムスン初のQD-OLEDテレビから、ソニーの「PlayStation VR 2」システムの最新情報まで、いくつもの大型発表がショーを盛り上げた。最近のCESでは、自動車業界が着実に存在感を強めているが、今回も期待を裏切らない発表があった。そして生きているかのようなロボットたちもハイライトの1つだ。
CES 2022で明らかになったことは以下の通り。
この2年間、新型コロナウイルスの感染者数は増減を繰り返してきたため、新たな感染の波がCESの会期にぶつかることは十分にあり得た。不透明な状況のなか、CESを主催する全米民生技術協会(CTA)は早々にハイブリッド形式での開催を決定し、参加者が実際の会場に足を運ぶか、オンラインで参加するかを選べるようにした。
ハイブリッドは、これからの世界の常識となるだろう。多くの企業は、コロナが収束したあとはハイブリッドが新しい日常になると考えている。この傾向は他のカンファレンスにも波及し、イベントに足を運ぶことの価値が見直されることになるだろう。
CES 2022では、DellやHPの新型ノートPCからサムスンのテレビまで、多くの興味をそそられる新製品が登場し、実際に見て体験することの価値を改めて人々に印象づけた。レノボのように、ニューヨークで個別の展示会を開き、新製品を体験できるようにしている企業もあるが、関係者が一堂に会するCESのような大型イベントは今もその価値を失っていない。
人型ロボットの「Ameca」は、ビデオ会議の画面を介しても十分に魅力的だったが、直接自分の目で見ればとてつもないインパクトを受けるはずだ。
関係者の努力の甲斐あって、今回はCESの風物詩となっていた問題も部分的に解消された。
CES会場に足を運んだTechsponentialのアナリスト、Avi Greengart氏は「ある意味、前よりも楽だし快適だ」と言う。「何といっても、タクシーがつかまる」
長年、メーカーはテレビやノートPCの発売サイクルをCESの開催日程に合わせてきた。ほぼすべての大手ベンダーが1月の第1週に主要製品を発表する。
今回のCESは、テレビやコンピューターのメーカーの多くが参加を見送るか、オミクロン変異株の影響で直前になって出展を辞退した。しかし、各社は今回も年明け早々に新製品を発表した。
CES 2022のハイライトをカテゴリーごとに振り返る価値はあるだろう。サムスンからは、ついにLGの最高クラスの画質に対抗できるOLEDテレビが登場した。TCLは、同社史上最大の98インチの「Roku」搭載テレビを発表。LGも負けじと、過去最大サイズとなる97インチの巨大OLEDテレビを発表した。あらゆる表面をスマートテレビに変えるサムスンの新型プロジェクター「The Freestyle」は、最大100インチの投影サイズ、内蔵された360度スピーカー、900ドル(約10万4000円)という価格設定で楽しい驚きをもたらした。
コンピューター関係では、Dellの「XPS 13 Plus」が最大の注目株となった。高い安定性と信頼性を誇るXPS 13に大胆なデザインを採用。両端ぎりぎりまで隙間なく広がるキーボードに、カスタマイズ可能な新型タッチバー。タッチパッドはないように見えるが、キーボードの下部全体に同等の機能が埋め込まれている。HPはスマートな新デザインの超軽量ノートPC「Elite Dragonfly」を発表し、ASUSは17.3インチの折り畳める有機EL画面を搭載したノートPC「Zenbook 17 Fold OLED」を披露した。レノボはノートPCの常識を覆すデュアルディスプレイの「ThinkBook Plus Gen 3」を発表。メインディスプレイはアスペクト比21:10の超ワイドな17.3インチ液晶で、120Hzの表示に対応。さらにキーボードの右側には8インチのサブディスプレイを搭載し、タッチペンを使ってメモを取るなど、自由な使い方ができる。
スマートフォンと無線通信は、過去のCESではあまり目立たず、むしろ約1カ月後に開催されるモバイル機器見本市「MWC」を主戦場としていた。しかし今回のCESでは、各社から華々しく発表される新製品ニュースの裏で、スマートフォンと無線通信がひっそりと副次的なストーリーを展開していた。
その筆頭が、無線通信事業者と米連邦航空局(FAA)、Pete Buttigieg運輸長官の間で起きた争いだ。VerizonとAT&Tは、新たな5Gネットワークの展開を予定していたが、FAAが航空機の機器との干渉を懸念し、サービス開始を延期するよう両社に要請していた。この要請は大晦日に行われたが、両社はただちにこれを拒否し、法的な衝突に備えた。
しかし、週明け月曜日の終わりには関係者間で合意が形成され、Verizonは(2週間の延期期間があけた後に)新たな5Gサービスを開始することを華々しく発表した。AT&TはCES 2020への出展を辞退しており、目立った発表は行っていない。
スマートフォンに関しては、(CESの報道陣向けメディアデーのど真ん中で)OnePlusが中国から「OnePlus 10 Pro」を発表し、注目を集めた。サムスンは他社に先駆け、1月3日の夜に「Galaxy S21 FE 5G」を発表した。
TCLは「TCL 30 V 5G」と「TCL XE 5G」を発表。早ければ2月に発売するという。Nokiaブランドのスマートフォンを製造しているフィンランドの新興企業HMD Globalは、今後数カ月間に米国で発売される5つの新機種を展示。5G対応の「Nokia G400」から、レトロな折り畳み式の「Nokia 2760」まで、多彩なラインアップとなっている。
年始の新製品発表ラッシュは、激動の2022年の幕開けを告げるものにすぎない。来るべきワイヤレス体験の激変に備えよう。
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