初代「iPad」が発表されたのは2010年4月だが、iPadの登場はテクノロジー業界では過去最大の「公然の秘密」だった。iPadが実際に発売される前から多くのハイテク企業が独自のタブレットを発表し、発売後はさらに多くの企業が追随した。
Appleが2022年に拡張現実(AR)グラスか、AR/仮想現実(VR)ヘッドセットを発売するという情報がサプライチェーン関係者からリークされたため、2022年のARグラス市場は初代iPad登場時を思わせる状況を呈するかもしれない。もっとも、競合企業はAppleが新製品を投下するのを、指をくわえて待っているわけではない。CES 2022では、AR、VR、メタバース関連の発表が相次いだ。
例えばTCLは、未来のARスマートグラスのビジョンを打ち出すと同時に、140インチのテレビを観るのほぼ同じ感覚が得られるARグラス「NXTWEAR AIR」を発表した。ソニーは「PlayStation VR 2」を披露し、Mojo Visionはスマートコンタクトレンズ活用に向けたスポーツ用品ブランドとの提携を発表した。QualcommとMicrosoftは、ARグラス用チップの開発で提携すると世界に向けて発表。パナソニックは、「SteamVR」に対応したスチームパンク風のVRゴーグルをデモした。そして@NimaZeighamiのTwitterスレッドが鮮やかに伝えているように、CES 2022の最大のバズワードとして、うんざりするほど氾濫していた言葉が「メタバース」だ。
2022年はARグラスをめぐる報道が過熱するだろう。年内に発売される製品は、不完全なプロトタイプの域を出ないだろうが、少なくとも20年後に孫たちを楽しませるネタにはなりそうだ。
今回のCESは、自動車の分野でも壮大な未来的ファンタジーに事欠かなかった(例えば現代自動車)。しかし、最も人々の胸を高鳴らせたのは、むしろ形のあるものだった。GMの「Chevrolet Silverado EV」は、その良い例だ。GMの最高経営責任者(CEO)Mary Barra氏は、このフルサイズ電動ピックアップをCESの会場で初公開し、さまざまな特徴と印象的な数値を見せつけた。フル充電での航続距離400マイル(約640km)。ローンチエディションの希望小売価格10万5000ドル(約1200万円)。どちらの数字も実に印象的だ。将来的には、もっと控えめな価格帯のモデルも登場するだろう。同時に発表された電動コンパクトSUV「Equinox」は、手の届きやすい3万ドル(約340万円)程度からとみられている。
CES 2022の会場には多くの電動自動車(EV)が展示されていたが、各社が熱心に売り込んでいたのは今回も自動運転システムだった。この分野でも、GMは傘下のCruiseが手がける自律走行型配車サービスの最新情報を宣伝し、会場を盛り上げた。しかし、さらに興味深かったのはGMの運転支援システム「Super Cruise」の進化版「Ultra Cruise」の話題だ。このシステムを利用することにより、一般道でもハンズフリー運転が可能になる。この機能は、まず2023年発売予定の「Cadillac Celestiq」に搭載される。つまり、来年だ。早くも来年には登場するのだ。
「今回のCESは、はからずも過去数年間で最高の自動車ショーになった」と、米CNET「Roadshow」セクションのエグゼクティブエディターであるChris Paukertは言う。
規格外の現実の中で開かれた、この規格外のショーは、役に立つもの、面白いもの、未来的なものなど、オタク心を刺激するモノであふれていた。「ターミネーター」さえ嫉妬するようなロボット。PCの壁紙を変えるように色を変えられるBMWの車。2021年に話題になったRazerのハイテク電動フェイスマスクは、マイクとスピーカーを備えて登場した。
ラスベガスの主会場は不気味なほど閑散としていた。現地を訪れた参加者たちは、自分が許容できる身体接触レベルを示すステッカーを選ぶよう促された。いつも通りとはいかなかったが、それでもCESは開催され、ショーは続いた。2022年に世界中で話題になるであろう、たくさんの新しいテクノロジーを詰め込んで。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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