ロボットと初めて会うときは、落ち着かない気分になるものだ。
世界最大規模のテクノロジー見本市「CES 2022」で、話題の人型ロボット「Ameca」を取材する機会を得た。開発チームがデモをしてくれるという。私はこの人型ロボットが本当に人間そっくりなのか、自分の目で確かめたかった。その表情は、インターネットで見たあの動画と同じように、(トラウマになりかねないほど)人間的なのだろうか。しかし何よりも知りたかったのは、このロボットが私の質問にどう答えるかだ。フォークト=カンプフ検査(映画「ブレードランナー」に登場する人間とレプリカントを見分ける検査)を用意しておくべきだろうか。
結論から言うと、私の心配は杞憂だった。Amecaから返ってくる答えは、Alexaが見せる、あの微妙な反応とあまり変わらない。しかし生みの親に頬をつつかれそうになったときにAmecaが見せた表情を、私は当分忘れられないだろう。
インターネットを利用している人なら、どこかでAmecaを見たことがあるはずだ。2021年末、この灰色の顔をした人型ロボットを映した1本の動画がSNSに投稿され、世界中に拡散された。実業家のElon Musk氏は一言、「ゲッ」とコメントし、モデルでテレビパーソナリティのChrissy Teigen氏は、「最悪。無理」とつぶやいて1300万人のフォロワーにリツイートした。
Meet Ameca, a robot that has an array of human-like facial expressions. pic.twitter.com/ARJ5q45d85
— CNET (@CNET) December 9, 2021
Amecaの動画は確かに一部の人々を震撼させたが、開発元の英国企業Engineered Artsは今回の反響を喜んでいるようだ。
「心底、驚いた」と同社のオペレーションディレクター、Morgan Roe氏は言う。「Twitterに投稿した1本の動画で、Amecaは一夜にして有名人になった。あの投稿は2400万回も閲覧された」
Roe氏は、Amecaがこれほどの反響を巻き起こした理由を、ロボットとも人間ともつかない外見のせいだと考えている。金属とプラスチックでできた身体、あえて中性的に作られた顔、人間とはかけ離れた灰色の肌。頭部には個別に動作する17個のモーターが内蔵され、動きや表情を制御する。Amecaの表情は生き生きとして、驚くほど豊かだ。人工的な要素と人間的な要素の絶妙な組み合わせが、人々の抱く未来の人型ロボットのイメージと重なった。
「私たちは多くの映画で人型ロボットを見てきた。例えば『アイ,ロボット』、そして『A.I.』」とRoe氏は言う。「それが突然、現実の世界に現れた」
今回のインタビューは、CESの会場にいるRoe氏と「Zoom」を介して行われた。CES 2022では、ラテックスで肉付けされたAmecaが初めて一般公開されている。私はRoe氏とAmecaをZoom越しに見ているにすぎないが、それでもAmecaのリアルさは疑いようもない。自分でも、心がざわつくのを感じる。Amecaの隣に立っている、この気さくな英国紳士にインタビューをしながら、目はAmecaを追ってしまう。私たちの会話にAmecaがどう反応しているか、気になって仕方がないのだ。眉のあたりの隆起、ひきつったような笑顔。Amecaは人間ではない。しかし――。
Engineered Artsが、トラウマになりそうなほどリアルな人型ロボットを発表するのは、これが初めてではない。この4年間、同社は「Mesmer」と名付けられた人間そっくりのロボットをいくつも製作し、各地の展示会で披露してきた。
同社のウェブサイトによれば、「すべてのMesmerロボットは実在の人物の3Dスキャン画像をもとに設計・製造されているため、人間の骨格、肌の質感、表情を違和感なく再現できる」という。「Mesmerはモジュール構造を採用しているため、工具を使わずにワンクリックで頭部を取り外し、別の頭部と交換できる」
映画「オズ」に出てくる生首コレクター、モンビ王女も真っ青だ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」