野村不動産、「働く」と「暮らす」の融合で交流を生む「TOMORE zero」--ワークスペースの新選択肢に

 野村不動産が新たなコワーキングスペース事業に乗り出した。東京の日本橋にオープンしたコワーキングスペース「TOMORE zero(トモアゼロ)」は「共創ライフ」をテーマに開設。ライフスタイル、ワークスタイルの多様化が進む中、共感性や価値観によるつながりを感じる仕組みを採用する。

「TOMORE zero(トモアゼロ)」。日本橋などビジネス街に近いながらも人が住み、暮らす場でもあるこの場所を選んだという
「TOMORE zero(トモアゼロ)」。日本橋などビジネス街に近いながらも人が住み、暮らす場でもあるこの場所を選んだという

 TOMORE zeroは、都営新宿線の浜町駅から徒歩3分、東京メトロ日比谷線の人形町駅から徒歩6分の場所に位置する。以前はオフィスだったというビルの1階をコワーキングスペースへとリノベーションした。

 約46坪の室内は「ソーシャル・ワークスペース」と「ソーシャル・リビング・ダイニング」の2つに分けられ、ソーシャル・ワークスペースにはミーティングルームやワークデスク、プライベート空間を確保できるブースなどを配置。ソーシャル・リビング・ダイニングには、ダイニングテーブルやソファの置かれたラウンジ、コーヒーカウンターなどを設ける。

入り口近くに位置する「ソーシャル・ワークスペース」。集中できる一人用のワークデスクや打ち合わせができるブースなどを設置している
入り口近くに位置する「ソーシャル・ワークスペース」。集中できる一人用のワークデスクや打ち合わせができるブースなどを設置している
「ソーシャル・リビング・ダイニング」にはカフェスペースやソファのある席などを用意する
「ソーシャル・リビング・ダイニング」にはカフェスペースやソファのある席などを用意する

「ワークスペースとリビング・ダイニングの間には沓脱ぎ石を設け、靴を脱いで上がってもらうようにした。これは、シェアハウスとコワーキングスペースが一体となった施設を作り、そこで暮らし、働く人をつなぐ場になりたいという思いから採用した」と野村不動産ホールディングス DX・イノベーション推進部R&D・事業創発課課長代理の黒田翔太氏は説明する。

レンガ素材で作った沓脱ぎ石。全体的にレンガ、木、石の素材感をいかす形でデザインしているという
レンガ素材で作った沓脱ぎ石。全体的にレンガ、木、石の素材感をいかす形でデザインしているという

 TOMORE zeroは、シェアハウス&コワーキングスペース事業としてスタートした「TOMORE(トモア) プロジェクト」の一環として設置したもの。コワーキングスペース部分を再現したコンセプトスペースの実証の場と位置づける。

 重視したのは「緩やかに交流できる場」であること。「働く人同士がビジネスライクにつながるのではなく、互いに相談したり、仲間を作ったりできるスペースにしていきたい」(黒田氏)と話す通り、スペース内には多くの仕掛けを施す。

 沓脱ぎ石も、靴を脱ぐことで自宅のようなリラックスした時間を過ごしてほしいという思いのもと設けられた仕掛けの1つ。ソーシャル・リビング・ダイニングに置かれたソファは背もたれを低くすることで話しかけやすい環境を作る、コーヒーは手で淹れることで、その時間に雑談を促すなど、交流しやすい場づくりを設計からサポート。加えて、運営事業パートナーにMIRAI-INSTITUTEを迎え、コミュニティの醸成を後押しする。

小上がりとソファスペース。低めの間仕切りを使用しているのは、オープンな空間で人の目線を切りつつも、メンバー同士がお互いに声をかけやすくするためだという
小上がりとソファスペース。低めの間仕切りを使用しているのは、オープンな空間で人の目線を切りつつも、メンバー同士がお互いに声をかけやすくするためだという

 「コワーキングスペース『みどり荘』の運営実績も持つMIRAI-INSTITUTEの方に入っていただくことで、人的ハブとして入居者の方同士をつなげる役割を果たしていただけると思った。野村不動産は建物というハードを作ることには長けているが、コミュニティや人同士の交流といった面では経験が少なく、この部分を得意とする方たちにサポートしてもらおうと考えた」と黒田氏は経緯を話す。

「暮らす」と「働く」を一体化することで生まれる、新たなスペースの選択肢

 TOMORE zeroでは、MIRAI-INSTITUTEのスタッフがコミュニティ・オーガナイザーという立場で常駐し、受付から相談まで入居者に寄り添う。通常時から交流を促す場づくりをすすめる一方で、先行して8月よりオンライン会員制コミュニティ「TOMORE members」を立ち上げ、オンラインイベントを定期的に開催するなど、会員同士のつながりも活性化させる。

 「コロナ下を経て働き方が大きく変わる中、働く場所も見直されている。ビジネスツールやインターネット環境が整うにつれ、自宅でも一人でも仕事ができるようになったが、だからこそ人と人がより深くつながれる場所を提供したいと思った。TOMORE zeroでは、入居者同士が仲間を作る水準までいけることを目指したい。そのためには、相談ができる、一緒に働いている人が困っていたらそれに気づける、そんな双方向のコミュニケーションができる場にしていきたい」(黒田氏)と思いを明かす。

 TOMORE zeroは野村不動産としてもチャレンジの場だという。実は、TOMOREプロジェクトは、野村不動産の事業アイデア提案制度で承認された第1号。チームリーダーである黒田氏を始め、マーケティングとシステム周りを担う小林翔氏、空間の設計、デザイン推進を担当した中北良佑氏の3名が中心となって推進してきた。

 「TOMORE zeroの立ち上げでは、ワークスペースとリビング・ダイニングスペースの割合をどの程度にするか苦労したが、沓脱ぎ石を採用することで、うまく分けられたと思っている。私たちがめざすのは、シェアハウスとコワーキングスペースが融合した空間。今回はワークスペースに軸足を置いているが、暮らすと働く場所を一体化することで生まれる、新たなスペースの選択肢として提供していきたい」(黒田氏)と今後を見据える。

 10月中はトライアル期間として無料で提供し、11月から本格運用を開始するTOMORE zero。利用プランは現在検討中とのこと。オンラインサロンなどを先行していたこともあり、すでに会員数は400名以上にのぼる。黒田氏は「フリーランスや起業家の方はもちろん、副業としてのワークスペース等、個人としてアクティブに活動の幅を広げる多くの方々に使っていただきたい」とまずは間口を広く開く。人と人がつながる場として「ほかのワークプレイスでは真似のできない場所にしていきたい」(黒田氏)とした。

壁に描かれたアートは、アーティスト・やんツーさんの作品。偶発的な出会いを生み出す「TOMORE zero」にぴったりの作品になったという
壁に描かれたアートは、アーティスト・やんツーさんの作品。偶発的な出会いを生み出す「TOMORE zero」にぴったりの作品になったという
左から、野村不動産ホールディングス DX・イノベーション推進部R&D・事業創発課課長代理新規事業開発チームマーケティング・システム開発推進担当の小林翔氏、野村不動産ホールディングス DX・イノベーション推進部R&D・事業創発課課長代理新規事業開発チームリーダーコミュニティ運営事業推進担当の黒田翔太氏、野村不動産ホールディングス DX・イノベーション推進部R&D・事業創発課課長代理新規事業開発チーム施設・空間開発推進担当の中北良佑氏
左から、野村不動産ホールディングス DX・イノベーション推進部R&D・事業創発課課長代理新規事業開発チームマーケティング・システム開発推進担当の小林翔氏、野村不動産ホールディングス DX・イノベーション推進部R&D・事業創発課課長代理新規事業開発チームリーダーコミュニティ運営事業推進担当の黒田翔太氏、野村不動産ホールディングス DX・イノベーション推進部R&D・事業創発課課長代理新規事業開発チーム施設・空間開発推進担当の中北良佑氏

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