Lopez Researchのアナリスト、Maribel Lopez氏は「今こそ、その時だ」と語る。Nadella氏は長年開発者に対し、Microsoftのプラットフォームはよりオープンで開発が容易であり、毎年何億台ものPCが販売されている、今でもチャンスのあるプラットフォームだと言い続けてきた。スマートフォン向けOSの欠如というMicrosoftの最大の障害さえ、モバイルプロセッサーがより多くのPCに採用され始めて境界線がぼやけるにつれ、消えつつある。
Microsoftにとって楽な道があると言っているわけではない。同社はWindowsという単一のOSを開発者にとってアクセスしやすいものにしようとしているが、AppleはiOSと「macOS」という2つの人気プラットフォームを誇っている。
Lopez氏は、「Appleを軽視することはできない」と語り、テクノロジーの未来を賭けた「戦争」が起きていると指摘した。
人々が最初のPCを購入し、初めてインターネットに接続していた1990年代、Microsoftの企業ミッションは「PCを各家庭のすべてのデスクの上に」だった。2015年までにはこのミッションはほぼ達成され、この基礎固めのお陰で誰もがポケットにコンピューターを入れるようになった(Microsoftの努力のかいもなく、それらのデバイスにWindowsのロゴは付いていないが)。
では、次はどうするのか? Nadella氏はMicrosoftに「地球上のすべての人々、すべての組織がより多くを達成できるようにする」ことを望むことにした。この考えが、MicrosoftのWindowsへの執着を終わらせ、自社製品で他社製品の実行を支援する企業という立ち位置を固めた。
とはいえ、Microsoftの古い体質が完全になくなったわけではない。アナリストは、Windows 11発表イベントのスピーチにおけるNadella氏のAppleに対する痛烈な批判は、Microsoftのライバルであり、友でもあるAppleを攻撃するだけのものではなかったと確信する。同氏の口調は陽気でもなく、2007年にAppleのSteve Jobs氏が初代iPhoneを披露したときの前CEO、Steve Ballmer氏のように軽い感じでもなかった。Nadella氏は真剣だった。
Moor Insights & Strategyのアナリスト、Patrick Moorhead氏は「Nadella氏は真実を暴こうとしている」と、Appleのテクノロジー業界における革新的でクールな企業というポジションを指して語った。「真実を暴けるチャンスは幾つあると思う?」
Microsoftは、「Office」やTeamsなどの自社アプリを、iPhone、「iPad」、「Mac」で正常に稼働させるために多大な努力を払っているとMoorhead氏は指摘する。だが、AppleはWindows版「iTunes」を何年もほとんどアップデートしておらず、FaceTimeなどのアプリについてはWindows版をリリースしてすらいない。
Nadella氏のスピーチの背後にある意図について同氏にインタビューしたいとMicrosoftに申し込んだが、受け入れられなかった。同氏の意図が何にせよ、Nadella氏の動きは、「クールになるのではなく、他社をクールにするために存在する」という態度の下に、かつて独占を可能にした非情なビジネスセンスをMicrosoftがまだ持っていることを示した。
Endpoint Technologies Associatesのアナリスト、Roger Kay氏は「MicrosoftがAppleを羨むのは分かる。誰もがAppleを宗教的に崇める」と語った。
だが、Appleを攻撃しても、人々のAppleに関する認識を変えるのは難しそうだ。StatCounterによると、2001年には地球上の10台中9台以上のPCはWindows搭載だった。現在は10台に7台だ。
Nadella氏はWindows 11をアンチAppleと位置づけたいのかもしれないが、最近のMicrosoftの影響力は主に、既にWindowsを使っている人々に広がっている。そして、これらの人々はWindows 11が今秋にリリースされれば、無料でダウンロードするか、あるいは会社のIT担当チームが許可するまでダウンロードを待つだろう。
「Microsoftは自分と戦っているだけだ。誰も気にしていない」(Kay氏)
しかもMicrosoftは、Appleが自社デバイスにFaceTimeを統合したのと同様に、TeamsをWindowsに統合している。だが、MicrosoftがWindowsをオープンにすることで、独自のアイデンティティーを確立したがっていることは明白だ。
Nadella氏はWindows 11発表のスピーチで「われわれは今後の10年とその先に向けて開発している。Windows 11は、Windowsの新時代の最初のバージョンだ」と語った。
そして、Nadella氏にとって最も重要なのはおそらく、MicrosoftがAppleにならないことだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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