Reproが提供するレシピのユニークな点はレシピの食材の分量や銘柄、使用する道具まで明記していることだと紹介したが、多くのレシピに調理科学が取り入れられていることもポイントだ。
たとえば「ふっくら黒豆」の場合は2013年に兵庫県立農林水産技術総合センターが発表した論文を基にしている。黒豆を一晩水に漬けてから炊くと、豆の内部と皮が水を吸収するスピードが異なるため、皮が破けてしまうことが多い。しかし60度で2時間予熱してから炊くと軽減されるため、そこから98度で8時間かけて炊くレシピになっている。
「かぶペクチン硬化」というレシピの場合、「ペクチン硬化」と呼ばれる現象を利用することで煮崩れを防げるという。
「野菜は温度を上げるとだんだん柔らかくなるわけではなく、60~70度の間でいったん硬くなり、それを超えると柔らかくなる。これを『ペクチン硬化』と呼ぶ。レトルトカレーに入っているジャガイモが原形をとどめているのもこれを利用している。かぶのソテーの場合、60度13分間でペクチン硬化させて外側の皮をパリッとさせてから、140度でソテーして中を柔らかく仕上げる」(菊地氏)
こうしたレシピを作り上げるために、「調理科学に関するさまざまな論文を読みあさった」と菊地氏は語る。
「今までレシピを突き詰める行為は限られた料理人しかできなかったが、これなら料理のスキルセットがなくてもできる。また、温度と時間だけでなく食材や調味料、鍋やフライパンなどをそろえることで、誰でも一流シェフの味を再現できることが重要だ」(菊地氏)
条件をしっかり整えると、料理の修業を積んだことがないスタッフでも、味の違いが分かるようになってくるという。
「以前、展示会に出展する際に試食で提供する3.5cm厚のステーキの片面の焼き時間を5分50秒にするか60秒にするかを試して試食したが、スタッフの意見が満場一致した。昆布だしの味も、素材によって違うというのがよく分かってくる。火入れの達人がすごく繊細な味覚を持っているわけではなく、常に同じように火を入れられるスキルセットを持っている。それを機械がやれば、人間はその違いがちゃんと分かる」(菊地氏)
そのこだわりようはかなりのもの。「Reproに任せれば煮方が一人いらなくなる」という高級料亭も現れた。また、温度・時間を徹底的に管理してレシピを突き詰めたいというミシュラン星付きシェフなど、プロの料理人が興味を持つのもうなずける。
仕上げに170度で20秒間、衣だけをカラッと揚げたもの。「ジューシーさにギリギリまでこだわった」(菊地氏)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
日本のインターステラテクノロジズが挑む
「世界初」の衛星通信ビジネス
NTT Comのオープンイノベーション
「ExTorch」5年間の軌跡
先端分野に挑み続けるセックが語る
チャレンジする企業風土と人材のつくり方
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
すべての業務を革新する
NPUを搭載したレノボAIパソコンの実力