沖縄電力グループが再生可能エネルギーの主力化に本腰を入れている。1月に発表した「かりーるーふ」は、太陽光発電設備と蓄電池を戸建住宅向けに無償で設置する新サービス。インフラ面から再生可能エネルギーの拡大を後押しする。
沖縄電力は、沖縄県全域のライフラインを担う総合エネルギー会社。再生可能エネルギーにも早くから取り組み、2018年度には、波照間島に可倒式風車にモーター発電機(MG)を組み合わせたシステムを導入し、約10日間継続して、電力の100%を再生可能エネルギーで供給することを達成している。再生可能エネルギーの導入を拡大する一方、LNG(液化天然ガス)燃料の採用などにより、2010年には、エネルギー起源CO2のピークアウトに成功。2050年にはCO2排出ネットゼロを掲げる。
かりーるーふは、再生可能エネルギーの主力化により、CO2排出ネットゼロを目指す沖縄電力の施策の1つ。太陽光発電に蓄電池を組み合わせることで、災害に強く、地産地消ができる「再エネマイクログリッド」を構築する。
沖縄電力 研究開発部の金城尚吾氏は「沖縄県は小さな島が複数存在し、ほかの電力会社に比べると再生可能エネルギーの使用は条件的に不利。しかし、総合エネルギー事業者として、地球温暖化対策を優先し、積極的にすすめてきた。その中で、さらに使いこなすためには、再生可能エネルギーを安定的に供給するべきだと考えた。検討の結果、かりーるーふを展開することに至った」と背景を話す。
かりーるーふは、初期費用0円で太陽光発電設備と蓄電池を自宅に設置し、発電した電気をユーザーに販売するサービス。太陽光で発電した電気は、値引きなど「おトクな料金プラン」で提供するほか、災害時など系統電力の供給が止まった際は、太陽光と蓄電池からの電気を使用できる。天候により太陽光発電の電力供給が少ないときは、足りない分の電気を沖縄電力から購入する。
設備面を提供するパナソニック ライフソリューションズ社コミュニケーション部総合プランニング課兼スマートエネルギー営業部主任技師の西川弘記氏は「メンテナンスを外で完結させるため、太陽光発電パネルは屋根、蓄電池は屋外とすべての設備を外に置くようにした。沖縄電力と設営などを手掛ける沖縄シンエネ開発の方とは、外に置くことにこだわって議論を重ねた」と独自の手法を明かす。
設置は3~4日程度で完了し、エアコンの室外機が置けるスペースがあれば、問題なく置けるとのこと。台風の影響を受けやすい沖縄県では、蓄電池に対するニーズは高く、室内に非常用コンセントを太陽光パネルや蓄電池と併せて設けることで、非常時の電源を確保できる。
沖縄電力のグループ会社で、風力などの新エネルギー開発を担う沖縄シンエネ開発 事業開発・設備運用グループ主査の金城隆太氏は「太陽光発電は、お客様自身が設備を用意し、自家消費とFITによる投資回収が主流だったが、ようやく太陽光による電気の単価を下げられ、コストも見合うようになってきた。土地柄台風による停電を気にされる方も多く、蓄電池をつけることでニーズがあることを実感している」と地域にあった提案をする。
かりーるーふは契約期間を15年としており、15年以降の契約更新も可能。希望すれば沖縄シンエネ開発が撤去までを請け負う。「太陽パネルの設置事業は、そのままご家庭に設備を譲渡するのが主流だったが、沖縄電力グループとして、古い設備をそのまま譲渡すると逆にお客様に迷惑がかかってしまうケースがある。お客様の手を煩わせないためにも、撤去まで含めたサービスを展開する」(沖縄シンエネ開発の金城氏)と、将来を見据えたサービスを組み込む。
「お客様にヒアリングすると、太陽光発電については欲しいというニーズは高いが、メジャーな電力会社がやっていないため足踏みしているという声が多かった。今回は沖縄電力が手掛けるということで、信頼感は高い。また太陽光と蓄電池の組み合わせを望む声も多く、地域にマッチングしたサービスになっていると思う。沖縄は傾斜のない平らな『平屋根』が多く、太陽光パネルが設置しやすい環境でもある」(パナソニック 西川氏)とメリットを話す。
かりーるーふの名称は、沖縄の方言で「縁起がいい、福を招く」といった意味を持つ「かりー」と屋根を「かりる」をかけ、英語の屋根を意味する「ルーフ」を組み合わせたもの。
1月の発表以降、限定50名を募集しているが、問い合わせが殺到し、一時受付を停止しているほどの人気ぶりだという。「日差しが強い沖縄は太陽光発電に向いていると思われがちだが、実は日照時間自体はそれほど長くない」と沖縄シンエネ開発の金城氏は話すが、ユーザーのニーズを汲み取ることで、蓄電池とのセット設置を考案。再エネ主力化に向け工夫を凝らす。
「太陽光と蓄電池の無償設置を、各社に先駆けて展開することで、CO2削減に寄与していきたい」と沖縄電力の金城氏は今後を描く。
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