培養肉の支持者からも、培養肉に懐疑的な人からも引き合いに出されるアリゾナ州立大学の論文によると、培養肉では、「必要な農業投入物の量や土地が家畜よりも少なくて済む可能性がある」が、必要なエネルギーの量は多くなる可能性があるという。その理由は、培養肉では、体温調節や排泄などの機能を果たす身体を持つ動物を使用しないため、そうした機能を補完するために工業製品で代替する必要があるからだ。しかし、培養肉のイノベーターと投資家を結び付ける主要な非営利団体のThe Good Food Instituteによると、「培養肉施設をクリーンエネルギーで運用すれば、培養肉製造の全工程の二酸化炭素排出量は40%~80%減少する」見通しだという。
クリーンミートの生産にかなり多くのエネルギーが必要な場合でも、環境への大きな見返りがあるかもしれない。ヘルシンキ大学のHanna Tuomisto氏は2018年の論文で、牛や羊を食肉用に育てる場合と比較して、培養肉の製造は、温室効果ガスを大幅に削減できる可能性があると見積もっている。
これまで通りの畜肉を支持する人々は、一般的にその生産で使われるのは、耕作に不向きな土地と、人間の食用には適さないと考えられている飼料だと反論する。だが、The Good Food Instituteによると、動物が食べる作物のほとんどは最終的に膨大な量の肥やしになり、大量のメタンを排出するという。環境防衛基金(EDF)は、メタンが地球温暖化に及ぼす影響は二酸化炭素の84倍だとしている。
この問題の一部は、今後5年のうちに、カリフォルニア大学デービス校で解決されるかもしれない。同校は、米国有数の畜産研究機関の1つで、培養肉研究のために、9月に米国立科学財団から最大355万ドル(約3億7000万円)もの助成金を受けた。培養肉の栄養や味、食感、より低コストで生産規模を拡大する方法、ライフサイクル分析の評価に取り組む予定だ。
肥育場や養鶏場から離れて海に目を向けると、FAOが調査した600種の水産資源のうち、52%はこれ以上漁獲高を増やすと将来漁獲高を維持できなくなり、24%は将来漁獲高が減少する水準で乱獲されているか、既に従来の漁獲高を維持できなくなっているという。
シンガポールではエビの人気が高く、現地の企業Shiok Meatsは、培養エビ肉の生産に注力している。一方、サンディエゴのスタートアップBlueNaluは、約1万4000平方メートルの生産施設の建設を計画しており、1000万人が暮らす都市圏の需要を満たす量の培養シーフードを生産するつもりだ。サンフランシスコ・ベイエリアのスタートアップFinless Foodsは、代替シーフードとして至高の目標である培養クロマグロ肉の開発に取り組んでいる。
培養肉技術で作られるのが肉でもシーフードでも、工程の中心となるのは共通する5つの要素だ。このことは、現行の畜肉業者とシーフード業者との間にないレベルの相乗効果を生み出している。
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