培養鶏肉ナゲット、間もなくシンガポールで登場へ--「扉が開かれた」とCEO

Brian Cooley (CNET News) 翻訳校正: 編集部2020年12月05日 07時30分

 植物由来の代替食品を手掛けるスタートアップEat Justの最高経営責任者(CEO)、Josh Tetrick氏は、自社製品の肉について「鶏肉みたいな味」(訳注:通常は、なじみのない味の食べ物について無難な感想を述べるためのフレーズ)と言われても傷ついたりしない。そう言ってもらえれば大成功だ。Eat Justの培養鶏肉はシンガポールでの販売認可を取得した。動物を殺すことなく、動物の細胞を組織培養して生成する培養肉の商品化実現の瞬間だ。「これで扉が開かれた」とTetrick氏。

 植物由来肉は食料品店でも人々の間でも話題になっているが、培養肉は、まだ代替タンパク質に納得していない人々の抵抗感を減らす大きな一歩とみなされている。

Eat Justの培養鶏肉「Good Meat」
Eat Justの培養鶏肉「Good Meat」は、まず小さなチキンナゲットとして発売され、次にグリル向けの切り身状態の鶏肉も登場する。
提供:Eat Just

 「Just Egg」のような植物由来の畜産品と差別化するために、Eat Justはシンガポール市場進出に際し、新ブランド「Good Meat」を立ち上げた。「シンガポールは世界で最も先進的な国の1つだ。この国の先進的な規制当局は、安全に関する多数の項目を検討し」、培養肉の審査と承認のプロセスを「初めてまとめた」とTetrick氏は語る。

 培養鶏肉は最近、イスラエルの都市テルアビブのレストラン「The Chicken」で出されるようになったが、これは培養肉企業SuperMeatによる招待制のテストキッチンでしかない。Eat JustのGood Meatの培養鶏肉は、まだ正式には発表されていないが、あるレストランでの小売販売向けに生産される予定だ。まずは小さなナゲットとして、その後グリル用切り身として提供する。

 「認可取得を目指して2年間取り組んできたのは、これで満足するためではない。シンガポールの次は、米国と西欧進出だ」とTetrick氏は語る。だが、米国での認可取得はそう簡単ではなさそうだ。米農務省(USDA)と食品医薬品局(FDA)は培養肉規制プロセス構築で協力することで合意はしたが、実現には至っていない。Tetrick氏は、例え最初の量は少ないにしても、認可プロセスができれば申請する準備はできていると語る。

CNETのLexy Savvides記者は、2019年にGood Meatの培養肉の初期サンプルを味見した
米CNETのLexy Savvides記者は、2019年にGood Meatの培養肉の初期サンプルを味見し、「本物の肉とほとんど同じで驚いた」と記事に書いた。
提供:CNET

 新型コロナウイルスの影響で、私はEat Justのテストキッチンで培養鶏肉のサンプルを味見することはできなかったが、米CNETのLexy Savvides記者は2019年に初期のサンプルを味見し、「サクッとした衣と揚げ油の匂いはおいしいチキンナゲットへの期待通りだった。だが、うれしい驚きだったのは、培養鶏肉自体が本当の肉のような味だったことだ」と語った。

 培養肉をめぐる議論は、規模の問題に行き着く。規模は、入手しやすさと価格を左右する。本物の動物の肉が安くて豊富にある市場では、この2つが高いハードルになる。「コスト面でやるべきことはたくさんある」とTetrick氏は認める。

 正式な販売価格は後日レストランでの提供を開始する際に発表する予定だが、Tetrick氏は、高級チキン料理とほぼ同価格でメニューに載せる計画だと語った。鶏肉よりも安くするにはあと5年以上かかるという。「だが、目標に到達する方法について迷いはない。何をすべきかは正確に分かっている」(Tetrick氏)

Impossible Foodsをはじめとする代替タンパク質ブランドは、消費者の環境保護意識に強く依存している
Impossible Foodsをはじめとする代替タンパク質ブランドは、消費者の環境保護意識に強く依存している。
提供:Brian Cooley/CNET

 代替タンパク質を手掛ける企業は、市場における3つの立場に依存する。最も強いのは環境保護で、それに消費者の健康と動物愛護が続く。だが、Eat Justの場合は3つのバランスをより均等にしようとしている。Tetrick氏は、「私は気候変動の緩和と生物多様性の保全に深い関心がある」「しかし、われわれには親切で思いやりのある行動をとるという価値観があり、食物の体系もそれを反映すべきだと考える」と語る。同氏は、Citigroupと法律事務所のMcGuireWoodsで持続可能性の仕事に従事した経験を持つ。

Good Meatはチキンナゲットの次に、本物の鶏むね肉に見える鶏肉の切り身を提供する計画だ
Good Meatはチキンナゲットの次に、本物の鶏むね肉に見える鶏肉の切り身を提供する計画だ。
提供:Eat Just

 培養肉と電気自動車の間には興味深い類似点がある。どちらも初期段階で消費者からの抵抗と、既存生産者からの経験に基づいた警鐘を招くような技術を導入しており、インフラの大幅な変更を伴い、成功するには、規制当局からのある程度の援護が必要だ。動物性食品の代替製品を推進する非営利団体Good Food Instituteのエグゼクティブディレクターを務めるBruce Friedrich氏は、Good Meatの発表を受け、「食の未来のための新たな宇宙開発競争が始まっている。国家が食肉の生産を畜産から切り離そうと競争する中、この明るい食料の未来への投資で後れを取る国は、将来的に取り残される危険がある」と述べた。

 一般的なものにすることは大規模な変革への戦いの半分であり、Tetrick氏は培養肉の一般化が達成された時には分かると語る。「最終的には、何万ものレストランのメニューに載せたい。そしていつかシェフに『なぜメニューに従来の鶏肉も載っているのか』と尋ねたい」

(この記事は、教育および情報提供のみを目的としており、健康や医療のアドバイスを目的としたものではありません。病状や健康上の目的について質問がある場合は、必ず医師または資格を持つ医療提供者に相談してください)

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]