シンがChompyにおいて目指すビジョンについて、「(ユーザーの)笑顔を作りたい」と大見氏は語る。
「日本は世界的にも多様な食があるが、その食の選択肢が手に届いていないという課題感からフードデリバリーというソリューションに興味を持った。多様な食体験を多様に届けることで、最終的に毎日の暮らしをおいしくするのはもちろん、その先の笑顔を作りたい。フードデリバリーをロジカルに作るとチェーン店の方が短期的には売上が最大化されるが、それでは資本主義に引っ張られてしまうため、『多様化』をコアとして持っている」(大見氏)
クックパッドが2018年9月にiOSアプリでβ版として提供を開始した生鮮食品ネットスーパー「クックパッドマート」のプロダクトビジョンについて福崎氏は「買い物をもっと自由にすること」と「生産者の価値を定量化すること」の2つを挙げた。
「クックパッドマートは家まで宅配せず、マンションの共用部やコンビニ、駅の専用宅配ボックスなどに配達する特殊な仕組みのサービスだ。僕自身、買い物が好きなのだが、便利な街に住んでいても買い物に不自由を感じていて、それを解放したいと考えていた。また、生産者の価値を定量化したい。B2C向けプラットフォームを作ってきたが、売り手の価値は積み上がらない。プラットフォームで成長するほど、出店する売り手の価値が上がることを大事にしている。その2つを守れれば何をやってもいいと考えている」(福崎氏)
10Xの矢本氏は「ビジョンとしてカチッと設定したものはないが、『10Xを創る』ことがミッション」と語る。
「ユーザーの体験を10倍いいものにしたい。食とか買い物とかにカチッとしたテーマを置いていないが、人の生活を豊かにすることにコミットしたいと考えて設定した」(矢本氏)
10Xは献立決めからネットスーパーへの注文までまとめて行える「タベリー」を2017年にスタートし、20年6月に開発不要でネットスーパーを立ち上げられる「Stailer」をスタートした。タベリーは反響が大きくかつユーザーの継続率が高く、小売業者からの評価も高かったものの、「ユーザーの10Xに至らない点がいくつかあった」(矢本氏)こともあって9月にサービス終了を迎えることになった。それがStailerの立ち上げに結びついたという。
「購入しようとするとネットスーパー側のサーバーアクセスで落ちたり、会員登録しようとしたらフォームが古くて長い、カートに入れようとしたら欠品が多い、明日18時に来てほしいのに、毎日その枠が埋まっているなど、僕らがコントロールできないところに10Xにならない要因があった。『コントロールできない』で止まっていたら世の中が前に進まないので、そちら側の問題を10Xが解決しにいこうと考えてStailerに至った。StailerはB2Cの使いやすいアプリもそうだし、B2Bの業務側の管理画面やシステム、オペレーション用アプリまでフルセットで提供するのが特徴だ」(矢本氏)
プロダクトビジョンを実現するために直近で見据えている足元のマイルストーンについて、10Xの矢本氏は「エンタープライズDX」を掲げた。
「青森県のリンゴを毎日のように沖縄に運ぶといったことが起きないように、食の体験は一定のローカル性が残る。基本的には地産地消に近い商圏が決まっている。一つひとつの商圏の上に立っているエンタープライズの小売り業をしっかりDX(デジタル・トランスフォーメーション)、僕らの言葉で言えば商流をデジタルに上げていくことをお手伝いするのが、すごく重要なマイルストーンだと思って取り組んでいる」(矢本氏)
クックパッドの福崎氏は、クックパッドマートの短期的な目標について「地域で一番おいしいものが一番近くで買えること」と語った。
「クックパッドは74カ国・地域で展開しているが、クックパッドマートは東京と神奈川の一部でしか使えない超ドミナントでサービスを展開している。ただ、毎日の食の流通はとてもマーケットが大きい。“薄く広く”はクックパッドでもやっているが、クックパッドマートは流通もからむため、徹底的に『この地域ではクックパッドがないと生活できない』というくらいに“面を取る”ことを重要視している。当面は首都圏地域など一部の地域に特化して、地域で一番おいしいものが一番近くで買えるということを大事にしている。誰もが毎日こだわって生活しているわけではなく、8割くらいの人の買い物は『便利』か『簡単』か『近い』かで選ばれているので、徹底的に近くにあるというのを実現したい。そのため駅やコンビニ、マンションなど、“導線をハックする”ことを大事にしている」(福崎氏)
Chompyが目下見据えているのは「都心エリアNo.1のフードデリバリーサービス」だ。
「食のマーケットは約70兆円と大きいが、フードデリバリー市場は2000億円程度しかない。(今後はレストランだけでなく)スーパーで作られるお弁当やお総菜も含めて千差万別なものが運ばれるようになる。現在の平均ユーザーは月1〜2回、外食のリプレースに近い形の使い方なので(他社は)マンスリーで(利用状況を)見ているが、われわれは日常利用してもらえることを目指しているので、ウイークリーを見て考えている。ニッチなユーザーだけでなく老若男女に利用してもらえる状態を、都心でいかに早く実現するかを足元のゴールに置いている」(大見氏)
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