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クックパッド、Chompy、10XのCEOが語る、コロナ禍に挑む“食”のインフラ作り - (page 3)

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新型コロナウイルス禍の影響は

 新型コロナウイルス禍は旅行業界や外食業界などに大きな影響を及ぼしたが、3社にとってはどのような影響があったのか。10Xの矢本氏は「ネットスーパー業界自体は食品領域でも最も影響を受けたと言われている」と語る。

 「ネットスーパー業界は食品領域でも最も影響を受けたと言われるくらい大きな影響があった。米国ではEC化率が2%程度から10%程度にまでアップし、流通金額は数兆円に上る。日本でも10倍くらいのユーザーがWebに訪れるようになったが、各社サーバーが落ちる、配送枠がなくなる、商品が棚から消えるなど、需要に供給を追いつかせられなかったのが大きな反省だったと思う。われわれは『吉野家フレームワーク』と呼んでいるが、食は『早い』『安い』『うまい』がすべてだ。それに向かっていくら需要が増えても死なないサービスを世の中にバンドルしていく。われわれはエンタープライズを変革するところでコミットし、それを実現しようとしている」(矢本氏)

 コロナウイルス禍によって、「経営者のマインドがガラリと変わった」と矢本氏は続ける。

 「ネットスーパーはやらないと決めていて話が進まなかった会社から、『すみません、明日からやれるくらい早く(ネットスーパーを開始)するにはどうしたらいいのか』という問い合わせに変わってきた。Stailerは発表から3カ月経過したが、その期間で100社ほどから問い合わせが来ている。会社の規模やフェーズに差はあるが、ものすごい大きなニーズが生まれたと思う」(矢本氏)

 クックパッドマートも緊急事態宣言下で注文が跳ね上がり、「1週間先まで配送枠が埋まるといった状況が生じた」と福崎氏は語る。

 「うちはマンションの共用部にステーションを置いてくれという要望が多い。だいたい月500棟くらいから問い合わせが来ており、順次話を進めている状況」と説明する。また、今夏はかなり猛暑日に見舞われたが、その影響も大きく、「キャベツ1玉500円などという価格が当たり前になっていた。うちはマーケットプレイス型なので価格が安定しており、1カ所でしか買えないスーパーよりも仕組みとしていいという声もあった」(福崎氏)

 シンの大見氏は「外食産業がすごく厳しい中で、唯一の打開策がデリバリーだった」と語る。

 「Uber Eatsがいいポジションにつけていたので、マーケットの伸びの大半がUber Eatsだったというのはあるものの、全国津々浦々、飲食店からエンドユーザーまでフードデリバリーが日常に近付くという意味ではすごく前向きだったのではないかと思う」(大見氏)とした。

 Chompyは出店者のメインターゲットが個店のため、店に置くサービス管理端末(タブレット)の上限をせいぜい2枚とする事業戦略を立てていたという。

 「しかしコロナの影響でデリバリーを増やそうとすると、タブレットを増やさなければならなくなる。SMB(個店・中小規模の飲食店)でも3~4枚と、決済手段みたいな感じで導入する方向性に移ってきている。マーケットの成熟度やルール自体が変わってきたので、プロダクトのあり方や事業の戦略、方向性もここ数カ月で変わってきたというか、変えるべきポイントが出てくるほど、動きが激しい状況だ」(大見氏)

3社の重要施策と、求める人材像

 大見氏はChompyの現状について「プロダクトでいうと“ゼロイチ”(0から1を生み出す)の状況だ」と語る。

3社が掲げる重要施策
3社が掲げる重要施策

 「それなりのUI/UXに見えるかもしれないが、僕らの中では日常を本当に支えるプロダクトにはできていないという課題感があり、施策にもそれに関するものだ。『おいしい』『安い』『早い』は社内でもキーワードになっている。フードデリバリーは『早い』は当然なので、『おいしさ』と『気軽さ(安さ)』を課題として入れている。『キャズム超え』はユーザーセグメントの話だ。渋谷や都心でフードデリバリーを多く使う層のマーケットシェアの奪い合いをするのではなく、今使っていない世帯やシーンにいかに飛び込むかが重要になる」と説明する。

 また、気軽さ(安さ)を実現するために工夫しているのが、配達の仕組みだ。

 「物流コストを安くしないと、フードデリバリーサービスは高くて日常的に利用されない。そこでハブ&スポークやミルクラン(巡回集荷)など、世界中のフードデリバリー業界を見てもかなりマニアックな取り組みをしている。『おいしさ』というエンタメ要素と、『安さ』の合理という両輪に取り組んでいるところだ」(大見氏)

 ユーザーアプリも同様にエンタメ要素と合理性を考慮した作り替えを進めており、エンジニア採用を強化しているという。

 「企画意識が強く、ビジネスの全体像を見ながら実装していくようなフルスタックエンジニアが必要だ。明確なPM(プロダクトマネージャー)はいないので、この機能はこのエンジニアとこのデザイナーといったようにみんなでPM業をしながらフルスクラッチで作っている。ビジネス全体を見通せるエンジニアが必要だ」(大見氏)

 クックパッドの福崎氏は、食品の流通を広げていくためには「泥臭いことをやり続けなければならない」と語る。

 「クックパッドマートをリリースする前に、社内版として半年ほどやっていたが、当時は僕がカーシェアリングで商品を取りに行って配送していた。流通はベンチャー起業家やサービスを作っている人が考えるようなきれいな世界にはならず、カオスなものをどうやってシンプルにするかという世界線だったと思う。流通を効率化するのではなく、自由化や民主化、シンプル化するのが重要だ。何かに集中して効率化に進まないように、そのために頑張っている」(福崎氏)

 10Xの矢本氏には、ネットスーパーでも店舗のピックアップや在庫管理、配送周りのシステムをカバーしているかという質問がセミナー参加者から寄せられ、矢本氏は「手がけている」と答えた。

 「ネットスーパーのバスケット単位のユニットエコノミクスを見てみると、売上のうち原価で70〜75%、ピッキングコストが10数%で、配送コストが10数%、システム利用費が数%で赤字になってしまうというのがほとんどだ。そこで需要予測や販促の中で原価を落とすとか、ピッキングを効率化させてコスト削減するとか、配送密度の確保で配送コストを半分にするとかの施策でようやく利益をひねり出している。ここにコミットしなければ、事業というよりマーケットに成長がない。ユーザー側のフロントだけでなく、店舗側のビジネスモデルも変革するためには、多くのテクノロジー投資が必要になる。イトーヨーカドーのケースだと、向こうの基幹システムやPOS(店舗管理システム)などを外側から叩くAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を作らなければならない。向こうのシステムを完全に理解しないとできないので、すごく難しい」(矢本氏)

 Stailerは「ソリューションを作って売りに行くという形ではうまく行かないプロダクト」とし、「一部上場企業の取締役といった方々から信頼を得ないと、どうやっても先に進まない。われわれのように社員が20人もいない会社がどういうカードでその信頼を引き出していくかというのもすごく重要」と説明した。

 Chompyはゼロイチのフェーズだという話があったが、「われわれはゼロイチがN回あるプロダクト」という。「どこかの会社に導入が決まったとしても、イトーヨーカドーとはフェーズもビジネスの状態も、かかえているお客様も全然違う。プロダクトとしてのStailerのシステムは共通していても、施策や個別の開発はどうしても必要になる。個別の解像度を上げて対策していくことが重要」と語った。

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