中国では、誰ひとり顔認識技術から逃れられず、それに伴って公然と辱められることも避けようがない。
横断歩道にカメラを設置し、交通ルールを無視する人を判別して撮影することも当たり前に行われている。報道サイトAbacusは2019年5月、中国で交通ルールを無視した子供の写真がデジタル広告板で公表されたと報じた。同サイトによると、地元の交通警察は「子供も大人と同じように扱うべきだ」と語ったという。
中国のある公園でも、顔認識技術が導入されている。トイレットペーパーの使いすぎや盗難を防ぐために、利用者の顔をスキャンしてから、一定量のペーパーを供給しているのだ。
「事の大小にかかわらず『何でもあり』のシステムだ」「この手の技術にかかれば、どんな濫用も成り立ってしまう」。Constitution ProjectのLaperruque氏はそう話している。
米国では、人種的偏見や人権の問題をめぐって顔認識技術の使用停止まで求められたりしているが、中国では、監視技術のプロバイダーが民族の異なる人を特定する機能を誇っているのが現状だ。
2019年11月には、中国の監視技術企業である海康威視数字技術(ハイクビジョン)がイスラム教徒のウイグル人を自動的に識別できるという売り文句でカメラを販売していると、映像監視に関する情報サイトIPVMが報じている。
研究者らによると、米国では研究者が顔認識技術に伴う人種的偏見について懸念を表明できるため、同技術への反発があるが、中国では同技術がそうした厳しい意見にさらされることがないという。
中国では、顔認識技術の精度が疑問視されることもない。バスの広告に描かれた人を信号無視した人とみなす誤判定があった時でもだ。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのWang氏はこう説明する。「米国では、人種的不平等について堂々と語ることができる。中国では、監視システムが議論されたり反対されたりすることはない。国内で見られる人種的偏見や少数民族の迫害について議論が許される場所など、オンラインにも現実にも存在しないからだ」
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