2020年1月にフェイスブック ジャパン新代表に就任した味澤将宏氏は、前職はTwitter Japanの広告事業責任者という稀有なキャリアの持ち主だ。「就任して半年間、ほぼコロナ禍だった」という同氏に単独インタビューを実施。2020年後半に向け、新たな働き方や組織作り、中小企業支援を主軸とした新事業の舵取りなどについて話を聞いた。
——まず、味澤さんはどのようなキャリアを歩まれてきたのか教えてください。
2000年にオグルヴィ・アンド・メイザージャパンという広告エージェンシーに入社しました。同社は、ブランディングが得意で数々の広告賞を受賞している、ロジカルで先進的なグローバル・エージェンシーです。僕は国内外のクライアントを担当させていただき、かなり早い段階からデジタル広告に携わってきました。
そして2008年に日本マイクロソフトに移りました。当時、マイクロソフトはGoogleに対抗して、インターネット広告大手のアクアンティブを買収したのですが、日本でも広告事業を立ち上げるということで、その責任者を務めました。最終的には、デジタル広告ビジネスを統括する立場を経て、前職であるTwitter Japanに入社しました。
——Twitter Japanでは、どのような役割を担っていたのでしょう。
Twitter Japanには、インターナショナルで初めて日本にオフィスを設けた立ち上げ期となる2012年に、広告事業の責任者として入社しました。8年間在籍し、ユーザーグロースも含めて東アジア地域の事業開発を統括するようになり、最後は広告事業全体をマネジメントするようになりました。
——TwitterとFacebookという2つの大手SNS企業を渡り歩いているわけですが、それぞれのサービスについてどのような違いを感じていますか。
FacebookとTwitterは、どちらも“Freedom of speech”という、情報や発言の民主化を目指していますが、ミッションはかなり違うと思っています。まさにそこが、今回チャレンジしようと決めた大きな要因です。
Facebookは、コミュニティを応援して、人と人がより身近になる世界を実現することをグローバルのミッションとして掲げていますが、Twitterは、いま何が起きているのかというリアルタイムな情報を瞬時に出していくことを目指していて、非常にニュース的ですよね。
Facebookに面白さを感じるのは、Facebook、Instagramだけではなく、Messenger、WhatsApp、B2B向けのWorkplace、VRのOculusなど、幅広い製品ポートフォリオを持っている点です。
これらをグロースのドライバーとして活用し、日本におけるミッション実現を目指すのは、非常に面白い。また、いろいろなポートフォリオを使って日本のマーケットを成長させていくことは、マネジメント的にも非常に興味を覚えるところで、そこはTwitterとは大きく異なる点だと思っています。
——これまでのTwitterなどで培った経験は、今後Facebookではどのように生かせると考えていますか。
日本のマーケットには特殊性があります。いまInstagramが伸びている中で、広告の手法も増えていますが、マーケットの特性やポテンシャルに合わせた適正なソリューション提供やチャネル戦略において、(自身の経験は)かなり貢献できるのではないかと考えています。
たとえば、TwitterとInstagramという2つのサービスには共通点があります。それは日本のユーザーは、タグ検索やアカウント検索を世界でトップレベルに使いこなしているということです。「興味のあることを探求して発見する」という行動は、TwitterでもInstagramでも日本が特徴的なんですね。
ただ、違いもあって、Twitterは購買までファネルを深化させるより話題化することが得意。Instagramは物やブランドと人をつなげる役割が強いので、発見から購買までマーケティング活用できる可能性をすごく感じています。
また、グロースも含めパートナーシップ戦略の経験も生かせると思います。すでに、Instagramでは中小ビジネス支援として、ギフトカード機能の導入や、「料理を注文」機能の国内パートナー拡充を行いました。このようなローカルでのパートナーシップにも貢献したいと考えています。
——ちなみに、味澤さんご自身はFacebookをどのように利用されていますか?
実はFacebookとの関わりは長くて、2008年に日本語化される前の広告エージェンシー時代から、まさにコミュニティ的に使っていたんです。今は、LinkedIn的な要素や、昔からの友達付き合い、コミュニティ参加などをミックスして、僕自身もいわゆる日本的な使い方をしていますね。
僕は福島県出身で、2011年の東日本大震災ではFacebookで地元の方々と本当に必要な物資は何かといった会話をして、3月のうちに現地に持って行ったりしました。これは「Facebookでコミュニティ的に人とつながって、そのつながりから何かが生まれる」という原体験ですね。今も、海洋のマイクロプラスチック問題に関心が高く国内外のNGOを支援していますが、そういったコミュニティはFacebook上で見つけることが多いです。
——フェイスブック ジャパンの前任の代表である長谷川晋さんとは共通項などはあったのでしょうか。
長谷川さんとはもちろん話していますし、共通項も意外と多いと思っています。実はお互い学生時代にラグビーをやっていて、最初にお会いした時も、ラグビーなどカジュアルな話題で、すぐに忌憚なく意見交換できたことは印象的でした。
ラグビーって、全く違う体型、全く違う役割の人をまとめて意思疎通を図り、1つの戦略のもとで働くというスポーツなんです。いま思えば、非常に多くの学びがあり、いまに生きています。僕は「ワンチーム」というラグビー的な考え方を、組織作りにおけるスピリットとしても大切にしているのですが、長谷川さんとは同じスポーツをやっていたこともあり、話が早かったところはあると思います。
また、今回の転職では、長谷川さんとかなり時間をかけてお話させていただく中で、「プラットフォームが持つ課題は、業界全体で解決していかなければならないことが多い」といったテーマについても、同じ業界に携わる者同士という目線で意見交換でき、とても良かったと思っています。
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