携帯キャリア各社の決算が出揃った。大手3社は2019年10月の電気事業法改正の影響を受けながらも比較的順調な業績を確保したが、2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大が業績に大きな影を落とすこととなる。4月より本格サービスを開始した「楽天モバイル」を抱える楽天も含めた、携帯電話大手各社の今後の動向について確認していこう。
4月28日に発表されたNTTドコモの2020年3月期決算は、営業収益が前年度比3.9%減の4兆6513億円、営業利益が前年度比15.7%減の8547億円と、大手3社では唯一の減収減益となった。ただ、その主因は電気通信事業法改正の影響を受け、通信料金と端末代を分離したいわゆる“分離プラン”を2019年度に導入したため。もともと減収減益の業績予想だったことから、想定通りの決算といえるだろう。
主力の通信事業に関しては、法改正の影響でモバイル通信サービス収入が減少したほか、スマートフォンの販売が落ち込み販売関連収入が大幅に減少。一方、それにともなって販売関連費用も減少したことから、想定通りの水準に落ちついたようだ。法改正の影響を除けば比較的好調なようで、携帯電話の契約数が8000万を超え、ハンドセット解約率は0.44%と非常に低い水準を維持している。
一方スマートライフ領域に関しては、NTTぷららの子会社化などが寄与して増収増益となったものの、営業利益は前年度比1%増の1481億円にとどまり、通期目標の1600億円に届かなかった。その原因について同社の代表取締役社長である吉澤和弘氏は、映像系サービスや「d払い」の販売促進を積極化したためと話しており、キャッシュレス決済競争の激化が大きく影響した様子がうかがえる。
法改正の影響をなんとか乗り越えた印象のある2019年度の決算だが、2020年度はそれ以上に新型コロナウイルスの影響を受けることとなる。そのため吉澤氏は「合理的な業績予想の算定が困難」として、2020年度の業績予想を非開示としている。
決算発表時点で最も大きな影響が出ているのは、海外渡航者の減少による国際ローミング収入の大幅減少だというが、今後を見据えた場合、3Gから4Gへのマイグレーション(移行)の停滞が懸念される。同社では現在、3Gのサービス終了に向け、シニア層を中心とした3Gから4Gへのマイグレーションに力を入れているが、ドコモショップの時間短縮営業に加え、感染防止のためシニア層が来店を控えることにより、その進行が想定より遅くなる可能性が出てきているのだ。
もう1つ、3月にサービスを開始した5Gへの影響も懸念される。新型コロナウイルスの感染拡大が長引くことで、機器調達や工事の遅れに影響する可能性が出てきている。特に基地局数を急速に増やしエリア拡大を推し進める2021年3月以降、その影響が大きく出て計画に遅れが生じる可能性があるとしている。
そして、新型コロナウイルスの影響が深刻と受け止めた影響からか、ドコモは経営陣の交代に関しても従来にはない異例の対応が取られている。同社では4年で経営陣が交代するのが通例となっており、現在の吉澤氏が2016年6月に就任したことを考えると、2020年6月には新社長に交代すると見られていた。
しかし、6月に代表取締役副社長を辻上広志氏からNTT代表取締役副社長の井伊基之氏に交代すると発表したものの、吉澤氏は続投するとしている。NTTグループとしても現在の危機的状況を乗り越えるには経営の安定化が必要と判断したと見られ、引き続き吉澤氏の体制で危機に対応できるかが注目される。
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