KDDIは1月31日、2020年3月期の第3四半期決算を発表した。売上高は前年同期比3.5%増の3兆9026億円、営業利益は前年同期比2.6%増の8439億円の増収増益となり、前四半期までの減益から回復を見せている。
同日に実施された決算説明会で、KDDI代表取締役社長の高橋誠氏は、好業績の要因として同社が成長領域と位置付けているライフデザイン領域とビジネスセグメントの好調を挙げている。実際、ライフデザイン領域の営業利益は前年同期比25.9%増の1360億円、ビジネスセグメントの営業利益は前年同期比23.4%増の1186億円と、共に2桁の利益成長を遂げているという。
一方で、3G回線の4G移行促進にともない端末販売コストは引き続き増加しているが、2019年10月の電気通信事業法改正の影響で端末値引負担が大きく減少し、その幅は大幅に縮小。また法改正の影響によりauの解約率も0.61%と、前四半期から0.11%減少しており、UQコミュニケーションズの「UQ mobile」が1月27日に累計契約数200万を突破するなど好調に伸びていることから、傘下MVNOを含めたモバイルID数も2709万に達しているという。
好業績をさらに拡大していくため、高橋氏はかねてより掲げている、顧客とのエンゲージメントの向上に向けた取り組みについて説明した。その1つとなるのが2019年12月に発表したローソンと、「Ponta」を運営するロイヤリティマーケティングとの提携だ。「au WALLETポイント」をPontaに統合することで顧客・サービス基盤を強化し、エンゲージメントとARPAの向上につなげていくほか、ローソンとは最新技術を活用した次世代のコンビニエンスストアの開発を進めていくとしている。
しかし、この前日の1月30日には、NTTドコモがPonta陣営の主要企業であるリクルートと提携し、リクルートのサービスで「dポイント」が使える仕組みを導入することを打ち出している。高橋氏はこの点について「我々も何となく理解はしていたので、驚きはなかった」と話す。一方でスマートフォン決済は「ポイント発行の仕組みが連携していないと生き残れないと思っている」と話し、ポイントを決済、サービスなどと連携させた循環を作り出すことに力を入れていくとしている。
そのスマートフォン決済を巡ってはここ最近、競争激化で再編に向けた動きが加速しており、KDDIも「au WALLET」を「au PAY」にブランド変更し、大規模キャンペーンを実施するなど攻勢を強めている状況だ。高橋氏は「加盟店開拓にコストがかかりすぎる。合従連合が進むのは間違いない」と話し、今後スマートフォン決済は楽天を含めた携帯電話会社が軸となって競争が進むとの見解を示した。そうしたことから今後、au PAYの競争力強化のため、一層キャンペーンコストをかけていくとしている。
一方で、メルペイがOrigamiを買収したことに関しては、両社ともに「店舗開拓のコストがかかっているだろうから、(買収で)改善されるのかという思いがあった」と回答。買収のメリットが薄いことからやや意外だったとしている。
KDDIは5Gの商用サービス開始時期を2020年3月としているが、高橋氏は今回の決算説明会の場で、改めて3月に開始することを明確にした。だが「最初の段階ではエリアは広くない」とのことで、端末についても「当初はフラッグシップが中心になるので、本格的には夏から秋にかけて端末が揃うのでは」と話す。5Gが普及するフェーズに入るのは2020年後半と見ているようだ。
また、5Gの料金プランに関しては、2月1日に値下げをする通信量無制限の「auデータMaxプランPro」の延長線上にあると言及。「4Gよりは若干ARPUが上がるように結び付く料金設定にしたい」と話す。
5Gと同様に注目されているのが、ローミングで提携関係にある楽天モバイルとの関係だ。楽天モバイルは拡大を進めているとはいえ、現在はまだ無料サポータープログラム会員に向けた限定的な内容にとどまっており、本格サービスの開始は2020年4月を予定している。
そのため高橋氏は、「ある程度ローミング収入を当てにしていたが、2019年10月の段階で(会員数が)5000人と分かっていたので『ちょっとひどいじゃないですか?』と(楽天モバイル側に)話した」といい、期待していたほどのローミング収入を得ることができず、計画修正を余儀なくされたことを明らかにした。
一方で、本格サービス開始後の楽天モバイルの料金プランについては「アンリミテッドな料金にするとローミングでデータ通信量に応じた料金を支払うことになってしまうので、あまりそこには来ないのかなと内心は思っている」と回答。小容量・低価格のプランに注力すると予測するが、「三木谷さん(楽天の代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏)がどうするか分からない」と、予想外のプランを提供してくることへの警戒感も示した。
また高橋氏は、楽天モバイルは当初加入者が少ないことから「トラフィックという意味でいうと品質的には良い」と、通信品質面でも警戒しているという。そのため、楽天モバイル対抗のためにも通信品質向上の取り組みにも力を入れていくとしている。
なお、KDDIは1月27日、電気通信事業を営む21社や趣旨に賛同する29社と共同で、NTTグループによる共同調達に係る意見書を総務大臣に提出している。高橋氏はこの件について「非常に強大なNTTグループが設備の共同調達をすると不正な接続条件が発生したり、競合事業者がコスト競争力で劣ることとなり、大きな懸念がある」と説明。そうした課題について十分議論がなされないまま答申が出されたことを問題視しており、公正競争担保のため公開での議論が必要との見解を示した。
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