では、4月8日に楽天モバイルの携帯電話事業を本格開始したばかりの楽天の業績はどうなっているのだろうか。5月13日に発表された楽天の2020年度第1四半期決算は、営業収益が前年同期比18.2%増の3314億円、営業損益が241億円の赤字決算となっているが、その主因はやはりモバイル事業を主体とした先行投資である。
実際、モバイル事業の売上収益は前年同期比54.7%増の392億円と増えているものの、利益は前年同期比251円減の318億円の赤字となっている。楽天モバイルの携帯電話事業は立ち上がったばかりで、現在は獲得重視で300万人への1年間無料サービスを提供している状況なだけに、当面は先行投資が続くこととなりそうだ。
その楽天モバイルを巡っては、本格サービス開始直前に料金プラン「Rakuten UN-LIMIT」において、KDDIとのローミングでまかなっている自社エリア外の「パートナーエリア」での通信量上限を、2GBから5GBに増やしたことが話題となった。このことはKDDIには事前に知らされていなかったようで、KDDIの高橋氏は「寝耳に水だった」と話していることから、その決定はかなり直前だった可能性が高いようだ。
だが同社の代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏は、直前での内容変更の認知は高まっていないと話す。現在の加入者獲得については、新型コロナウイルスの影響で休業している実店舗での獲得減少を、オンラインでの申し込みで補うことで「ほぼ予定通り」(三木谷氏)としているが、一層の拡大については内容変更の認知拡大が必要との認識を示しているようだ。
そして契約者の拡大に向け、何より重要なのはエリアの拡大である。これまで基地局の設置が思うように進まなかった楽天モバイルだが、ようやく軌道に乗ってきたようで、3月末時点では当初計画の3432局を上回る4738局ですでに電波を射出。さらに4555局の契約締結も進めていることから、1万局の整備が視野に入ったという。
建物内や地下など引き続き課題が大きいとはいえ、屋外であれば都市部でのロケーション確保がある程度進んできたことから、2021年3月には人口カバー率70%を達成するという全国へのエリア拡大に向けた具体的な数値目標も打ち出している。
ただ、楽天モバイルはエリアに関する問題だけでなく、本格サービス開始直後に「無料サポータープログラム」から契約を切り替えた一部ユーザーの通信ができなくなるトラブルを発生させるなど、現在もなおサービス面でのトラブルが相次いでいる印象だ。楽天モバイルには大胆なアピールで顧客獲得を急ぐことよりも、やはりネットワークやサービスを全国で安定して使えるようにする取り組みに力を注ぐことが求められるだろう。
ちなみに楽天モバイルは決算発表後の5月15日に、サプライチェーンの一部が新型コロナウイルスの影響を受け、6月を予定していた5Gの商用サービス開始を3カ月延期すると発表している。
楽天モバイル広報によると、機器調達や工事に影響は出ておらず、海外でのロックダウンによりネットワーク関連ソフトウェアの検証が難しくなっていることが主な要因とのことだが、こうした点はある意味「完全仮想化」をうたう同社のネットワークの弱みともいえるかもしれない。
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