新型コロナウイルス関連

新型コロナで戦略転換を迫られる携帯大手キャリア--ドコモは社長続投、楽天は5Gを延期へ - (page 2)

ソフトバンクは新規事業の黒字化が鍵に

 5月11日に発表されたソフトバンクの2020年3月期決算は、売上高が前年度比4.4%増の4兆8612億円、営業利益が前年度比11.4%増の9117億円と、増収増益の決算を達成。ヤフーを傘下に持つZホールディングスを連結化したことも大きく寄与したが、同社の代表取締役社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏によると、連結を考慮しない状況でも増収増益を実現しているという。

オンラインでの決算説明会に登壇するソフトバンクの宮内氏
オンラインでの決算説明会に登壇するソフトバンクの宮内氏

 中でも主力の通信事業は、法改正の影響で物販の売上が減少しているものの、通信サービスは前年度比で4%伸びており、それを補って成長を達成。特にモバイル通信に関しては、「ソフトバンク」「ワイモバイル」「LINEモバイル」の3ブランド展開が多様化する顧客ニーズにマッチし、スマートフォンの累計利用者数も前年度比で205万件の純増を達成。解約率も0.7%と、法改正以降の市場停滞も影響し、過去最低の水準に達しているという。

法改正の影響による市場の停滞が影響し、ソフトバンクのスマートフォン解約率は0.7%と過去最低の水準に達したという
法改正の影響による市場の停滞が影響し、ソフトバンクのスマートフォン解約率は0.7%と過去最低の水準に達したという

 5Gに向けて同社が力を入れる法人事業に関しても、売上高は3%の増加。特にソリューション関連の売上が伸びており、新型コロナウイルスの感染拡大以降利用者が急増している「Zoom」は、新規のID申込数が2月から3月の間に10倍に達しているとのことだ。

 ほかにもEコマースが好調なヤフー事業、決済代行などが好調な流通事業も増益となり、一時益なども含め全ての事業で増益を達成。これが好調な業績に大きく寄与しているようだ。

 好調な業績を踏まえ、2020年度の業績予想は売上高が今年度比で1%増の4.9兆円、営業利益も1%増の9200億円と、新型コロナウイルスの影響がありながらも増収増益を達成したいとしている。それは、ほぼモバイル専業のドコモと異なり、同社が固定通信など幅広い事業を手掛けていることから、主力の通信事業で新型コロナウイルスの影響が比較的小さいと見ているためだろう。

2020年度業績予想は、新型コロナウイルスの影響があっても売上高・営業利益ともに1%増の増収増益を達成すると予想している
2020年度業績予想は、新型コロナウイルスの影響があっても売上高・営業利益ともに1%増の増収増益を達成すると予想している

 また5Gの基地局整備に関しても、同社は既存の基地局を活用して4Gの周波数帯を5Gと共用する「ダイナミックスペクトラムシェアリング」を積極的に用いる方針を示している。そのため機器調達や工事などの面においても、5G用の周波数帯を使った新たな基地局整備を進めているドコモと比べて、新型コロナウイルスの影響は受けにくいと見ているようだ。

 一方で課題となるのは通信事業以外の部分である。ヤフー事業に関しては10月を予定しているZホールディングスとLINEとの経営統合に加え、新型コロナウイルスの影響により旅行・飲食を中心として広告出稿が減少していることから、その回復度合いが業績を左右する可能性が高い。

ソフトバンクの通信事業は新型コロナウイルスの影響が小さいと見る一方、ヤフーはEコマースが伸びる一方で、広告事業が大きな影響を受け状況が不透明だとしている
ソフトバンクの通信事業は新型コロナウイルスの影響が小さいと見る一方、ヤフーはEコマースが伸びる一方で、広告事業が大きな影響を受け状況が不透明だとしている

 またスマートフォン決済の「PayPay」をはじめとした新規事業に関しても、2020年度は黒字化を推し進めていく考えを示しており、その成果が業績に大きく影響してくる可能性も高い。ホテル事業「OYO Hotels」のように、成果を急ぐあまりトラブルが増えるようでは信頼も失われてしまうだけに、黒字化にあたっては慎重さも問われるところだ。

2800万人のユーザーを獲得したPayPayは、ローンなど金融事業の本格展開で収益化を進め、2020年度には黒字転換を図っていく考えのようだ
2800万人のユーザーを獲得したPayPayは、ローンなど金融事業の本格展開で収益化を進め、2020年度には黒字転換を図っていく考えのようだ

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